変態剣士と対決しました
「では選手の入場です。四年B組グスタフ・フーデマン君」
呼ばれて、がたいのデカイ男が入ってきた。
身長は2メートル近くある。巨体だ。その怖そうな顔にもいくつもの傷がある。
というか顔の傷がその元々恐ろしい顔を更に恐ろしくしていた。
体も鍛えているみたいで、既に4年生にして現役の騎士の体格をしていた。
金色に輝く剣も異様に長いんだけど……目立ちたがりな男みたい……
大人しく控えめな私とは正反対な奴だったねと後でエーレン等に言ったら
「あんたほど目立っている者は他にいないんだけど、何をふざけた事を言っているのよ」
って馬鹿にされたんだけど……
ええええ!
私は決して目立ちたい訳じゃないのに!
「さあ、皆、馬鹿はほっておいて皆でお祝いしましょう」
って言って騒ぎ出したんだけど、ちょっと待ってよ! 今日の主役は私よ!
一方の観客席の皆はグスタフを見て、
「えっ」
「アミ、あんな奴とやるの?」
クラスの皆は呆然としていた。
「キャッ」
「アミちゃんの相手が野蛮人だったなんて」
「あのフーデマンって昔、クリステイーネ様がギタンギタンにやっつけた野蛮人の息子じゃないの」
「まあ、アミちゃん大丈夫?」
おばさま達も悲鳴を上げてくれた。
あれとやるのか私もうんざりしたときだ。私が呼ばれた。
「一年C組アマーリア・フルフォードさん」
「「「ウォーーーー」」」
大歓声が上がった。
「「「アミ!」」」
「「「アミちゃん!」」」
「頑張れよ」
「あんな巨体、やってしまえ!」
「平民希望の星のお前なら出来る!」
「俺たちの仇も取ってくれ!」
最後の切実な声は体中包帯だらけの四年生が叫んでいた。
なんか相当やられたみたいだ。
後で皆に聞いたらグスタフは相当えげつない戦いをしてきたらしい。
弱い相手を徹底的にいたぶって、倒していったそうだ。
四年C組の騎士志望の剣術対戦に出場した先輩もボロボロになるまで戦わされて皆骨の一本や二本折られたらしい。
『今こそ立て、アミちゃん!』
人文字がデカデカと出ているんだけど……
『親子二代でフーデマンをやっつけろ』
人文字が変る。
「おい、お前」
いきなりグスタフは私に話しかけてきた。
でも私は無視してやった。
「おい、お前、聞こえないのか!」
むっとしてグスタフは私を睨んできた。
「私はお前という名前ではないわ」
私の回答にグスタフはニタリと笑った。
「生意気なのは母譲りか?」
低い声でグスタフは唸ってくれた。
「ふんっ、母親は魔術で対戦したから父には勝てたみたいだが、これは剣術だぜ。何をとち狂って剣術勝負に来たのか判らんが……貴様がこの俺様が100戦無敗の剣術で俺様に勝てる事などあり得んぞ」
グスタフは馬鹿にしたように私を見てくれた。
「馬鹿らしい。あなたには同じ言葉を返してあげるわ。本気で私に勝てると思っているの?」
私はグスタフの目を見て言い返してあげたのだ。
「あは、あは、あはははは!」
でも、それを見て、狂ったようにグスタフは笑ってくれた。
「馬鹿な奴だ。静かにしていれば骨の一本くらいで勘弁してやろうと思ったが、そこまで言うんならとことんいたぶってやるぜ」
何か目を異常に爛々と輝かせてグスタフは宣言してくれたんだけど……
こいつは変態だ! 人をいたぶるのを趣味にしているらしい。
私は怖気がした。
出来たらこんな凶人戦士とは戦いたくはなかったが、私もクラスの優勝がかかっているのだ。逃げるわけには行かなかった。
「アミ、そんな変態男、ただ一撃でやっつけてしまえ」
「お前なら一瞬で勝てる!」
ゲルト達は好きに言ってくれるが、この凶人は剣の腕前だけはあるように見えた。
一撃で倒すのは難しいんじゃないの?
私は少し不安になった。
「両者よろしいか」
審判が私達を見比べた。
私は頷いた。
「ようい、始め」
先生の合図と共に私は剣を振りかぶった時だ。
グスタフが怒濤の攻撃をしてきたのだ。
「うら! うら! うら! うら!」
剣で次々に打ち込んできた。
怒濤の目にもとまらない早さだ。
私はただ一撃をする間もなく次々に撃たれまくった。
剣を持った腕や顔や胴を容赦なくグスタフは打ち込んできた。
凄まじい攻撃だった。
他の奴らが何故負けたかもよく判った。
本来ならばグスタフの圧勝だったはずだ。
でも、グスタフは対戦相手が悪かったのだ。
「オラオラどうした。もう終わりか?」
ニタリとグスタフがいやらしい笑みを浮かべてくれた。
「もう少し胸があったら俺の女にしてやるんだがな。胸無し女にはようがないぜ!」
「はい?」
私はその言葉に完全にぷっつん切れた。
「デカイだけのウドの大木に言われたくは無いわ」
「何だと!」
目を怒らせて更にきつく打ち込んできた。
でも、こいつは馬鹿だ。あれだけ打ち込んでも強化魔術で強化している私の体にはびくとも響いていないのだ。それが判っていなかったらしい。
私の胸のことを言い出してくれるなんて、絶対に許さない。
こんな奴は地獄で閻魔様に懺悔すれば良いのよ!
危うく本気を出すところだった。
「喰らえ!」
私のただ一撃が炸裂した。
その剣は受けようとしたグスタフの金色の剣を真っ二つにたたき折ってグスタフの頭上から直撃した。
「ギャーーーー」
次の瞬間グスタフは顔をぐちゃぐちゃにして観客席の方に吹っ飛んで行ったのだ。
「「「ウォーーーー!」」」
大歓声が起こった。
「やったー!」
「アミ凄い!」
「さすがアミ!」
クラスの皆は大喜びだったし
「アミちゃん凄い」
「やったわ、アミちゃん」
「野蛮人に親子並んで二連勝よ」
おばさま達も大喜びしてくれた。
『良いそ、アミちゃん、大勝利』
『もう優勝しかない!』
『次の王子もぶっ倒せ』
人文字が次々に変わっていく。
最後の王子の文字に私は少し固まってしまったけれど……
でも、私は知らなかったのだ。
私が吹っ飛ばしたグスタフが観覧している側妃の所まで飛んでいって慌てた近衞騎士達が止めようとしてそのまま側妃様の上に雪崩込んでいたことを……
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
次は怒りの側妃の期待を一身に背負った第一王子の登場です。
果たしてアミの運命や如何に?








