公爵家と侯爵家の場外戦が勃発しました
「えっ、何が起こったの?」
私には何が何だか全然理解できなかった。
お母様はエーレンに寄ると、ゲームでは卒業パーティーで王太子殿下に現王妃様を虐めた罪で断罪・婚約破棄されて国外追放になったはずだ。
だから貴族界からつまはじき者になっているはずなのに、何で、その娘の私に対してあんなに応援をしてくれるんだろう?
私には全然判らなかった。
「母上が壊れた!」
「そんな、お母様は散々平民の娘なんて現実を見せておやりっておっしゃっていらっしゃったのに、なんで?」
横の横のクラスでフランツとその婚約者のカサンドラが頭を抱えているんだけど……
一年A組とB組の中でたくさんの生徒達が頭を抱えいているんだけど……抱えている生徒は私を応援してくれている集団の中に両親、特にお母様がいるんだろうか?
私の見間違えではないようだ。
「おい、あの真ん中にいるのはヨーク公爵夫人だぞ」
「その横にはボーデ子爵夫人もいるぞ」
「あの横でにこやかに扇子を振っているのはクッツァー伯爵夫人じゃないのか」
私の応援団の中に母親がいない貴族の連中が騒ぎ出しした。
「おい、どうなっているんだ?」
騎士団長の息子のゲッツがフランツに問いただしていたが、
「知るか? そもそもお前の所の母上もクッツァー伯爵夫人の横で嬉々として看板を振っているだろうが」
「えっ、本当だ!」
ゲッツはフランツから指摘されて固まってしまった。
「ど、どういうことなんだ? 平民女なんかに負けたらただでは済まないわよって今まで散々言われていたんだぞ」
「うちもそうだ。今までは平民女に負けたなんて、由緒あるこの公爵家の嫡男がそれで良いの? とか散々言われていたのに、それがボーデ子爵夫人が訪ねてきてからおかしくなったんだよ。クリスティーネ様、クリスティーネ様って煩くなって」
「クリスティーネってお前の所の叔母上で、今の王妃様を虐めて国外追放されたあばずれ女だろう」
平然とゲッツが言ってくれた。そうだ。普通はそういう反応だと私も聞きながら思った。
「しいいいい!」
でも、慌ててその口をフランツが押さえた。
「な、何なんだ?」
「お前、あっちの母親らの前で間違ってもそんなこと言うなよ。俺なんてポロリと口が滑ったら母上から危うく燃やされそうになったし、『まあ、アリーナ、あなた、クリスティーネ様の弟御に嫁がれたのに、お子様の教育がなっていないのではなくて』ってお前の所の母上に延々と一時間くらい、いかにクリスティーネ様が素晴らしいか聞かされて大変だったんだからな」
フランツがうんざりと話してくれたが、あの母がいかに素晴らしかったって……ご飯も何もかも家事を全て娘にさせたあげくに、娘をほったらかしにして飲み歩いている極悪非道の母親だしとか言いようが無いんだけど。皆、絶対に母を間違えていると思う。そうか人違いで別にそんな偉大なクリスティーネ様がいるんだと思う。
「ど、どうなっているの?」
「さあ? まあ、アミの応援団が増えたのは良いことじゃない?」
ビアンカの問いにエッダは平然と答えていた。
「それはそうだけど、訳が判らないんだけど……アミ、どういう事なの?」
「私に言われても判らないわよ」
私も首を振っていた。
「ただいまより、剣術大会の学園内ファイナル一回戦を始めます。二年A組、クレーメンス・ハウゼン君」
まずクレーメンスが呼ばれた。
「クレーメンス様!」
「頑張れよ!」
「素敵!」
貴族を中心に黄色い声が響き渡る。
さすが、第一王子を産んだ側妃の出身侯爵家の令息だ。
人気は凄まじかった。
これとやるのかと私がうんざりした時だ。
「一年生C組のアマーリア・フルフォードさん」
私が呼ばれた。最悪のタイミングだ。
そう思った時だ。
「「「わああああ」」」
凄まじい大声援が沸き起こったのだ。
クレーメンスの声援なんてかき消えてしまった。
「アミ!」
「アミちゃん!」
「頑張れよアミ!」
クラスの声援は判る。
「俺たちの分まで頑張れよ」
「絶対に侯爵令息をやっつけろよ!」
「平民の星、頑張れよ」
これは他学年のCクラスの声援だ。これもまだ判った。
「アマーリア様!」
「アミちゃん!」
「クリスティーネ様そっくりよ」
「本当に!」
「再びクリスティーネ様そっくりな勇姿を見られるなんて」
「生きてて良かったです!」
なんかか涙目の夫人までいるんだけど……
「へ、平民女、貴様、何をした?」
クレーメンスが驚いて叫んでいたが、
「さあ、判らないわよ」
「ちょっとそこのアグネスの息子、侯爵の息子風情が我がヨーク公爵家のクリスティーネ様のお嬢様に対して何て口を聞くのよ!」
遠くから公爵夫人が怒り出したんだけど……
「何だと、この娘は陛下に断罪されて公爵家から勘当されたクリスティーネの娘なのか? のこのこと学園に親子二代で出てくるとは許せん! クレーメンス、絶対にそのような平民娘に負けるなよ!」
「はい、お祖父様!」
偉そうなおじいさんがクレーメンスに命じていたが、彼がハウゼン侯爵みたいだった。
なるほど、侯爵達からこのような罵詈雑言を浴びるのが判っていたから母は絶対に私に学園に行くなと釘を刺していたんだ。私は初めて理由がわかった。
「まあ、侯爵様。何をとち狂ったことをおっしゃっていらっしゃるやら。クリスティーネ様は我が公爵家から勘当されておりませんわよ」
「な、何だと? いや儂は陛下から王妃様を虐めた罪で断罪されて平民に落とされたと」
「何をおっしゃっているのです。クリスティーネ様からは迷惑をかけるから勘当するように依頼されましたけれど、そもそもクリスティーネ様は平民女など全く眼中にありませんでしたわよ。何故虐める必要があるんですの?」
公爵夫人がが言い出した。
「それは王妃の座をディアナ様に奪われると危惧したからあろう」
「何をおっしゃっていらっしゃるやら。クリスティーネ様は頭脳明晰、魔力は世界規模の大魔術師でしてよ。各国から引く手あまたで未だに我が公爵家には各国の王家から送られてきた釣書の山がございましてよ。お宅のエミール様みたいに、必死に側妃の座にこだわらなければいけないような事は全くございませんでしてよ」
「な、何だと、黙って聞いていればいい気になりおって」
「あのう、お二方、今は学園行事でございまして、貴族間のお話し合いは別のところでして頂けないでしょうか」
学園長が決死の覚悟で横から声をかけた。
「な、何ですって……」
「何を言う……」
二人に睨まれて学園長は蒼白になっていたが、
「周りのお子様が方の前で話される内容では無いのでは……」
決死の覚悟で言い切った。
「えっ、まあ、私としたことが」
「そうだな。すまんことをしたな」
周りの子供達を見て二人は微笑んでくれた。
「では両者よろしいか」
審判の先生がほっとして私達を見比べてくれた。
私達は剣を構えた。
「始め」
戦いが始まったのだ。
戦いまで進みませんでした。
明日は戦います








