決勝の最初の相手は神速でした……
ついに午後から決勝戦が始まった。
基本的に魔術競技と剣術競技の決勝はグランドに作られた特設ステージで行われる。
グランドの周りに設営された観客席にクラスごとに座って観戦するのだ。
私はやる気満々だった。
私の相手はカスパル、第一王子殿下の側近の一人でその母の側妃の出ているハウゼン侯爵家の一族だった。クラスは一年B組だ。まあ、あの偉そうな第一王子の側近だ。碌な奴じゃないだろう。
「はっはっはっは、貴様は平民の分際で今は落ち目のヨーク公爵家の人間に勝っていい気になっているそうだが、それもここまでだ。俺は第一王子殿下の護衛騎士見習いだ。剣で平民の素人に負けるわけにはいかない。貴様のような生意気な平民女は一瞬で地面に沈めてやるわ」
カスパルは私に向かって偉そうに宣言してくれた。上から目線は第一王子のまま、侯爵家でも傍流の出なのに威張った様は王子並みだ。ハウゼン侯爵家って威張った一族なんだろうか?
後でエーレンに聞いたら
「あんた何言っているのよ。お貴族様って皆そんな物よ。平民を見下して威張り散らしているものなのよ。あなた前世の歴史で何を習っていたのよ」
とエーレンは馬鹿にしてくれたけれど、前世殆ど授業受けられなかった私はそんなの知らないわよ。というか貴族が威張りまくっていたなんて授業で習うんだ! でも、教科書とかも読んだけどあまりそんなことは書かれていなかったような気がするけれど……
「そこは行間から読むのよ」
とか訳の判らない事を言ってくれたし、
「まあ、あなたが行間を読めるわけはないわよね、脳筋なんだから」
ぼろくそに言われてしまった……そこまで私に言う?
まあ、私としてもお貴族様が少しは威張っていたのには当然だと思っているけれど、それでも普通はもう少し隠すでしょう。せめてリックくらい隠しなさいよ!
さっきも私とすれ違ったときにさりげなく「頑張れよ」って言ってくれたし。
この男と違って全然威張ったところもない。まあ、お母様の知り合いだからそんなに地位は高くないと思うけれど、目の前の男も侯爵家の係累といっても親の地位はそんなに高くないはずだ。
まあ、こんな奴のために私もだらだら続けるつもりは毛頭ない。
一撃必殺なのだ。
「まあ、御託をうじうじと述べてくれても仕方がないわ。そういう事は私に勝ってから言ってよね。全ては私より早く動けるかどうかよ」
私がいい加減に嫌になって言ってあげると、
「ふん、生意気な平民女だな。ここが学園でなければ剣の試し切りに斬り捨ててやるのだが」
こいつは言ってくれた。
こんなどうしようもない奴が貴族でいる領地は碌な所ではない。懸命に働く民から血税をむしり取って自分らが贅沢だけをしているのだ。
平民の怖さを教えてやらねばなるまい。私は俄然やる気になってきた。
地べたに絶対に這いつくばらせてやる!
「ふんっ、生意気な平民女よ。俺よりも早いかどうかだと。愚かな奴だ。俺は神速のカスパルとして有名なんだぞ」
男は不気味な笑みを浮かべてくれた。
まあ、手加減する必要も無いだろう。
「よし、始め」
審判の先生が開始の合図をしてくれた。
ただ一撃、それあるのみだ。
「よし、いくぞ」
「喰らえ!」
カスパルは前に剣を構えた瞬間こちらに向かって飛んできた。
一方の私は上段に構えるや前に行こうとしてそこにカスパルが飛び込んできたのだ。
早さを自慢するだけあって圧倒的に早かった。
しかし、全身を魔力で強化してただ一撃のみを訓練してきた私も負けはしない。
私は構えた剣を無心で振り下ろした。
その私の剣をカスパルは剣で振り払おうとした。さすが早さを自慢するだけはあるみたいだ。でも、ただ一撃だけを訓練してきた私の剣は重いのだ。
「えっ?」
カスパルが振り払おうとしてくれたが、私の剣はびくともしなかった。そのまま、ただ一撃でカスパルの振り払おうとした剣もろともカスパルを地面に叩きつけていた。
バシン、
「ギャッ」
ドカーン!
カスパルはそのまま地面に叩きつけられていた。
私のただ一撃をもろに食らったのだ。
そのまま地面に激突、大音響と共に地面に大きなクレーターをあけていた。
「「「おおおお!」」」
「やったな、アミ」
「ベスト4だぞ」
クラスのみんなは大喜びしてくれた。
「あの平民女、まさか、神速のカスパルの攻撃にびくともしなかったぞ」
「カスパル様……」
「そんな、B組のエースが……」
一方のB組の連中は唖然としていた。
先生達が飛んできて、カスパルは直ちに医務室に連れて行かれた。
私のただ一撃の前に飛び込んできたのだ。私は本来、放出系の私が持つ強大な魔力を使って全身強化しているのだ。その力を使ってただ一撃した前に飛び込んできたのだ。
いわば前世で言う所の全速力で走っているトラックを素手で止めようと前に飛び出したようなものだ。ただで済むわけはなかった。
「大丈夫かな」
私が心配そうに見ていると
「まあ、ただ一撃しているアミの前に飛び込んできたんだものね」
「自殺志願したようなものじゃない」
「本当にB組の連中って脳筋よね」
ビアンカ達が馬鹿にしてくれた。
「おい待て、学年最低のC組の連中に脳筋とは言われたくないぞ」
バッヘムがむっとしてこちらを睨んでくれた。
「だって、アミが一撃してきたら普通の人間は逃げるわよ」
「それを飛び込んでくるなんて死にに来たようなものじゃない」
「本当にB組の連中って馬鹿よね」
「ちょっとあなたたち、なんかそれ私に酷くない? なんかそれだと私がラスボスみたいじゃない」
B組の面々が文句を言う前に私が文句を言い出したんだけど……
「ラスボスって何かわからないけれど」
「ダンジョンの最深部にいる蟻地獄みたいなものよ」
エッダにビアンカが説明してくれた。
「オーガみたいなものなの?」
「違うわよ。ゾンビよゾンビ」
「ちょっとあなたたち、勝手に私を化け物にしないでよ」
私が文句を言うと
「ええええ! だってアミがラスボスっていうから」
「私に言わすようにしたのはあなたたちでしょ」
「お前らな、アミはそんな弱っちい魔物じゃないぞ」
「そうだ、せめてゴブリンキングだ」
「いや、フェンリルだろう」
「そんなのサラマンダーに決まっているだろう」
「ちょっとあなたたち、私を化け物にするのは止めてって言っているでしょ。せめて深窓の剣士とか、王女様に例えてよ」
私が言うとと
「ええええ!」
「深窓の女剣士なんて聞いたことないわよ」
「というかアミが深窓ってガラかよ」
「それにアミが王女様なんてガラじゃ無いじゃぞ」
「そうそう」
もうぼろくそに言われているんだけど……そこまで言うかと私も少しむっとした。まあ、これがクラスメート達とのふれあいかもしれないけれど……なんかでも少し酷すぎるような気がするのは気のせいなの?
私達はこの時までは余裕でふざけていた。
そんな私を憎々しげにA組とB組の面々とその保護者達や貴族の上級生達が見ていたのだ。
そして、魔術で残ったA組の面々が虎視眈々と待ち構えていたのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございます
ここまでは楽勝のC組
でも、この先は大丈夫なのか?
続きをお楽しみに








