魔術大会に皆で力を合わせて頑張ることにしました
ちゅんちゅん、ちゅんちゅん
雀が鳴き出した。
私は鳥のさえずりで目が覚めた。
いや、違う!
ドンドン! ドンドン!
大きな音で扉を叩く音とともに、
「ちょっと、アミ、いつまで寝ているのよ! 遅刻するわよ」
エーレンの大音声で叩き起こされたのだ。
「やばい、遅刻だ」
私は慌てて制服を着て、前の日に準備していた鞄を持って外に飛び出した。
「いつまで寝ているのよ?」
「誰のせいだと思っているのよ?」
そう叫ぶエーレンを私は睨み付けた。
そう、エーレンの残して行った言葉のせいで私はほとんど寝れなかったのだ。
「ええええ! あなたあんなことで寝れなかったの?」
「あんなことじゃないわよ。そらあいくら私でも気にするわよ。私のお母様が悪役令嬢かもしれないってどういう事なの?」
私はむっとしてエーレンに食ってかかった。
「本当に寝る前に言い逃げしていくんじゃないわよ! というか、国外追放されたのなら、アンハームにいるのもまずいんじゃないの? とか、王家から睨まれているのに娘の私がこんなところにいても良いのかとか、いろんな事が頭の周りを巡って寝れなかったわよ」
「まあまあ、その辺りの愚痴は後で聞いてあげるから」
エーレンは他人ごとだと思っているのか平然としているが、当事者の私はそれどころではなかった。
でも、文句を全て言い終わる前にもう食堂に着いていた。
「おおおお、主役のお出ましだぞ」
私はアーベル等に拍手で迎えられた。
「アミ、魔術大会は頼むぞ!」
「そうだ。絶対にこのC組に深紅の優勝旗をもらってくれよ!」
男達は盛大に盛り上がっていた。
でも、大会まであと1ヶ月もない。果たして2週間で皆が戦えるようになるんだろうか?
私はとても不安だった。
「でも、皆大丈夫なの?」
「アミがいれば百人力だ。全種目アミに出てもらおう」
「おう、それが良いぞ」
男達が盛り上がっているけれど、
「貴方たち何を言っているのよ。魔術大会は出れる競技は一人一つよ」
エーレンが指摘してくれた。
「えっ、そうなのか?」
「そんなの卑怯じゃないか!」
「そうだそうだ!」
「A組は魔力の大きい奴が揃っているけれど、C組はほとんどいないんだぞ!」
ゲルト達が文句を言い出したが、
「ゲルト、あなた魔術大会実行為員じゃない! 文句があるならば委員会の時に言いなさいよ。どのみちよく聞いていなかったんでしょう?」
ビアンカの言葉に
「いや、嫌そう言う訳では無いんだけど、どうしても委員会は眠くなるんだよな」
ゲルトは全く悪いとは思っていない風で笑っていた。
「本当に、もっとちゃんと委員会に出なさいよ」
ビアンカに言われてゲルトは頭をかいていた。
「まあ、それだからアミは一番点数の大きい魔術対決にしか出れないわよ」
「そうか、まあ、それは仕方が無いな。剣術部門は俺がなんとかする。それてなんとかなるんじゃ無いか」
「そうだな。アーベルが出るならなんとかなるか」
みんな、納得していたが、A組は魔力の多い者が揃っている。
そんなに簡単に勝てるのか?
私はとても疑問だった。
そして、その私の危惧が更に現実になった。
その日のホームルームでは魔術大会に出る種目を決めるはずだった。
「よし、出られる種目は魔術対戦と剣術対戦。クラス対抗魔術障害リレーに借り物競走。それと魔術騎馬戦。玉入れは全員だ」
委員のゲルトが白板に書きだした。
「まあ、アミは魔術対戦に決まりだな」
勝手にゲルトが書いてくれたんだけど、
「ああ、ゲルト君。アマーリアさんは魔術対戦は参加出来なくなりました」
そこに担任のゴットロープ先生が突然言い出した。
「えっ、何でなんですか? あり得ないでしょう」
即座にゲルトが担任に食ってかかったが、
「アマーリアさんが決闘で生徒達を3人も気絶させたでしょう。強力すぎるアマーリアさんを参加させるとけが人が出るかもしれないから控えてほしいと学園長自ら頼まれました」
担任はそう言ってくれるんだけど、
「先生。そんな、アミが出れなかったら圧倒的に私達は不利ではないですか!」
「そうですよ。アミを出さないって言うならば他クラスも上位10人の出場を禁止すべきです」
「いや、アーベル君、さすがにアマーリアさんを出さない代わりに上位10人を出すなとは言えませんよ」
担任は頭を振った。
「でも、先生、アミにはそれだけの価値がありますよ」
「そうです。C組の中でアミは唯一とも言える戦力なんですよ。それを出さないなんてあり得ません」
「アミを出さないなら、せめて代わりに100点最初から我がクラスに加点して下さいよ」
「そうだ、そうだ!」
皆担任を取り囲んで言いだした。
「先生、なんでそんな理不尽な案を飲んできたんですか」
「信じられない」
「まあ、学園長がいきなり命令口調でおっしゃられて」
「そこを耐えしのぐのが担任の先生の役目でしょう」
「そうです。何で断ってくれなかったんですか」
もう先生も皆に言われてタジタジだった。
「ようし、今から文句を言いに行こうぜ」
「そうだ。賛成」
「いや、ちょっと君たち」
「先生、早く」
男子が一団で学園長のところに文句を言いに言ってくれたのだ。
しかし行くときは威勢が良かったが、帰ってきたときは肩を落としていた。
「どうだったの?」
私が聞くと
「全く箸にも棒にもかからなかった」
「学園長は全然俺達の話を聞いてくれなかった」
ゲルトとアーベルが肩を落として報告してくれた。
「どうするのよ。ゲルト?」
「申し訳ない」
ゲルトは頭を下げてくれた。皆はとてもショックを受けているみたいだけど、私一人で勝っても意味はないと思う。皆で協力しないと。
「こうなったら、仕方が無いから皆で頑張ろうよ」
私が思い切って提案した。
「でも、最大の戦力のアミが出れないんだぞ。どうするって言うんだ?」
ゲルトが投げやりに言いだした。
「何言ってるのよ。元々アミは入学した当初はいなかったんだから。お貴族様に目に物見せてくれるって最初に言っていたゲルトはどこに行ったのよ!」
ビアンカがゲルトを冷たい目で見た。
「いやそれはそうだが……」
「私が剣術対戦に出るわ」
私が宣言すると、
「いや、アミ、剣術は使えるのか?」
馬鹿にしたようにアーベルが言ってくれるけれど、
「何言っているのよ。私これでも冒険者よ」
どうしようもないFランだなんてここでは言えない。
「いや、まあ、それは知っているけれど。それがどうしたんだ?」
「剣だけで魔物を倒したこともあるわ。この前なんてサラマンダー倒したんだから」
私は自慢した。サラマンダーは水魔術で倒したのだがそれは秘密だ。それに剣術は強化魔術は使って良いはずだ。まあ、一年生相手になら十分私の強化魔術でなんとかなるはずだ。
私はそう思ったのよ。
「本当かよ」
アーベルは胡散臭そうに私を見ていたが、ここで引き下がる訳にはいかない。
「本当よ」
私はつんと顎を突き出していかにも自信満々に見せたのだ。
後で単なる傲慢な令嬢にしか見えなかったとエーレンに馬鹿にされたけれど……
「まあそうだな。ここでうじうじ言っていても仕方が無いな」
ゲルトが私の案に乗ってくれた。
「よし、まあ、どうなるか判らないけれど、取りあえず、皆で協力してやるか」
「俺達の力を見せてやろうぜ」
「そうね」
「決まったことは仕方ないしね」
皆やる気になってくれた。
「その代わり、アミも魔術を教えてね」
「任しといて」
私は胸を叩いた。
こうして我が一年C組は魔術大会に向けて皆で必死に訓練することになったのだった。








