友人から私の母が元悪役令嬢ではないかと言われました
「ねえねえ、アミ」
「どうだったの、リック様は?」
寮に遅くに帰ってきたらビアンカとエーレンに捕まってしまった。
そのまま私の部屋に入ってきて根掘り葉掘り聞かれたのだ。
「あなた、1日リック様と一緒だったのにリック様の正体聞かなかったの?」
「だってリックが知りたければお母様に聞けって言うんだもの」
馬鹿にしてくれたビアンカの言葉に私が頬を膨らませた。
「じゃあ、あなたのお母様に聞けば?」
当然のようにビアンカが聞いてくれたけれど、
「聞ける訳ないでしょ! 通信では答えてくれる訳ないし、家に帰ったら二度とこの学園に帰してくれないかもしれないし……」
「通信ってあなた本当に規格外よね。普通辺境まで届かないわよ」
「アンハームを辺境って言うな」
私が怒ると
「はいはい、花の都よね」
「そこまでは言わないけれど……」
私がまともに答えたら
「誰も思っていないわよ」
エーレンに馬鹿にされた。
「うーん、あの辺では都会なのに!」
私の言葉は二人には無視された。
「アミ、まだお母様に許してもらえていないんだ」
ビアンカが確認してくれた。
「許してくれる訳は無いじゃない。お母様は本当に貴族嫌いなんだから」
「でも、変よね。そんなあなたのお母様がお貴族様のリック様を預かるなんて」
「それはそう思うわよ。だからリックは平民じゃないかと思うんだけど……」
「あの立ち居振る舞いといい、ロイヤルクイーンにかおぱすだったことといい、リック様が平民なんてあり得ないわ」
エーレンが即座に否定してくれた。
「というか、3年生にそもそもリックという生徒はいないんだけど」
わざわざ調べてくれたらしいエーレンが言いだした。
「嘘、そんな訳ないわよ」
私はむっとしてエーレンを睨み付けた。
「まあ、3年C組にリックという親が騎士爵の生徒はいるんだけど」
「ほら、いるじゃない! 絶対にリックはそれよ」
「でも、ほとんど学園に出て来ていないそうよ」
「でも、いるからそうじゃない」
私が言い張った。
「うーん、どうかな」
訝しげにエーレンは私を見てくれるんだけど……
絶対にそうに違いないと私は思ったのだ。
「ねえ、それでリック様と良い感じになったの?」
エーレンの話をそっちのけでビアンカが聞いてきた。
「そんな訳ないでしょ。私達はダンジョンに潜りに行っただけよ。どこにデートでダンジョンに行く者がいるのよ」
私は馬鹿にしたように二人を見た。普通はそんな非常識な奴はいないのよ。
「ここにいるわ」
でも、二人して私を指さしてくれるんだけど……
「そんな訳ないでしょ」
「普通はね。でも、アミのことだから無意識にリック様に食べさせたんじゃないの?」
「そうよ、リック様に食べさせて、その残りを自分で食べるとか、アミなら平気でやりそうじゃない」
ビアンカに図星で指摘されて私は赤くなった。
「ええええ! やっぱりやったんだ」
「さすがアミ!」
二人して騒いでくれるんだけど……
「そんなの冒険者なら普通じゃない!」
私は必死にいちゃいちゃを否定しようとした。
「ええええ、やっぱりやったんだ」
「普通は恋人でない限り、そんなことしないわよ」
二人して生暖かい視線で見てくれるんだけど……
「いや、私とリックは小さい時からの付き合いだから」
「そんなの関係無いわよ」
「あなたはいざ知らず、リック様の年で好きでない女の子に普通は食べさせなんてさせられないわよ」
「リック様はアミにそうされて、注意しなかったんでしょ? 嫌なら断るわよ」
「注意できる訳無いじゃない。最初に私に食べさせてきたのはリックだし」
私が言い訳したら、
「ほら、やっぱり、リック様はアミが好きなんだって」
「いやいや、昔から付き合いでリックにとっては私は姉みたいなもので」
「何言っているのよ。あなたの方が年下じゃない!」
「ほんとうに熱々よね。判らないのはアミだけで他の冒険者達は引いていたんじゃない。いちゃいちゃするなら他でやってくれって」
「いや、だから、そんなんじゃないから」
「はああああ、何言っているのよ」
「どっから見てもそうじゃない」
二人に延々からかわれたのだった。
「そろそろ寝るわ」
ビアンカが帰って行ったので、眠くなった私もそのまま寝ようとした。
「ねえ、アミ、あなたのお母様の正式なお名前は判る」
いきなりエーレンが聞いてきた。帰りしなに何を聞いてくるんだ?
「たしかクリスよ」
「愛称じゃなくて正式名称よ」
「ええええ、お母様はお母様だから」
私が思い出せないでいると、
「まさか、クリスティーネではないの?」
「ああ、それ。そんな名前だった」
私は思いだしていた。でも、それがどうしたんだろう?
私がエーレンを見ると、
「先生等に聞いたら昔ここにいた公爵家の悪役令嬢の名前はクリスティーネだったのよ」
エーレンが爆弾発言をしてくれたんだけど……
「えっ、今の王妃様を凄惨な虐めをしたっていう?」
「そうよ」
私は最初エーレンが何を言っているか判らなかった。
元々王太子の婚約者で平民の女の子を虐めまくって殺そうとした罪で国外追放された悪役令嬢の名前が、母と同じだって言うの?
いや、いくら何でもあり得ないだろう。
「でも、うちの苗字はフルフォードよ。それにそんな名前の公爵家はないわ」
「結婚して名前が変わったんでしょ」
確かにエーレンの言うことはあり得た。
「でも、うちの母が元公爵令嬢だなんて絶対にないわ」
がさつで喧嘩早い母が公爵令嬢なんて信じられなかった。
「そうじゃないかって私が思っただけよ。じゃあお休み」
そう言ってエーレンは部屋を出て行ったんだけど、私はそれから一睡も出来なかった。








