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距離を置きたいのに、幼馴染が本気を出してきました  作者: いか人参


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23.仲間はずれ


三人がテラスで話していると、学期末パーティーはあっという間に終了の時刻となっていた。参加者は皆名残惜しそうにしながら、ぞろぞろと列になって帰路についた。


シュシュアはその途中でようやくミュイを見つけることが出来たが、隣にいた満遍の笑みのレヴィアスを見ると「良かったわね」とだけ笑って言い、特に話すことなく先に帰ってしまった。


その後、レヴィアスが邸まで送っていくと言ったが、シュシュアは、エリクが待っているからと丁重に断り、また明日と別れを告げ自分の馬車に乗り込んだ。



「ようやくですか。おめでとうございます。よく頑張りました。」

「……ありがとう。」


馬車に乗り込むや否や、やけに爽やかな笑顔をしたエリクが手を合わせて褒め称えて来た。なんとなく腑に落ちず、シュシュアはそっぽを向き素直じゃない態度で礼を言った。



「明日は領地へのお出掛けですね。旦那様にはご連絡済みです。馬車で半日掛かりますから本邸での宿泊の手配もお願い致しております。その他、ご入用のことは何かございますでしょうか。」


「ちょっと待って…さすがに対応が速すぎじゃない?というか、どこまで知ってたの?」


「今宵は月明かりが綺麗ですね。」


「いや、話変えるの下手すぎでしょ。」


いきなり窓の外の曇り空を見て宣うエリクに、シュシュアがすかさずツッコミを入れた。



「お手伝いさせて頂くため、事前にほんの少しお話を聞いていただけですよ。」


「レヴィアスから…?」


「ええ」


「うそ…エリクもそっち側だったの?」


お前もか…とシュシュアが項垂れた。レッカも事情を知っていた風だし、ミュイはあからさまに手を貸していそうだった。そして自分の執事もグルだったのかと頭を抱えたくなる。



「見返りは何?何を対価にして私を売ったの?」


「売ったなどと人聞きの悪いことを。僭越ながら、お嬢様の拗れた初恋の後押しをさせて頂いただけですよ。」


「その手伝いの見返りは?」


はぐらかされても、シュシュアの追求の手は弛まない。エリクは中指で眼鏡を押し上げてため息をつくと、観念して口を割った。



「婚姻後もお嬢様にお仕えたいと申し出ました。」

「え?そんなこと?」


てっきりこの男のことだから金銭一択だと思っていたシュシュア。法外な金銭を受け取っていたらレヴィアスに返還しないと、と詰問をしていたのだ。



「そんなこと、ではないですよ。婚姻後、異性の側仕えは辞めさせられるのが普通ですからね。そこに先手を打ちました。私が仕えるのは生涯貴女だけですから。」


「……そ、そう。これからも宜しくね。」


「ええ、こちらこそ。」


思わぬ彼の本音に、シュシュアは恥ずかしくて顔を上げられなかった。一方、真っ直ぐに彼女を見返したエリクは柔らかな表情で嬉しそうに微笑んでいた。




翌朝、公爵家の馬車がシュシュアの邸まで迎えにきた。なぜか馬車二台で。



「おはよう、シュシュ。」

「おはようございます、レヴィアス様。」


玄関先までやって来たレヴィアスは、以前街で見かけた時のような仕事着に近い畏まった装いをしていた。スタイルの良い彼に上下黒のかっちりとした服装がよく似合っている。



「そのワンピース、よく似合う。シンプルだからこそシュシュの可愛さをよく引き出している。やっぱりこれを選んで正解だったな。」


今日は旅行用に動きやすいワンピースを着ているシュシュア。レヴィアスは彼女のことを上から下まで何度も眺めながらどこか自慢げに頷いている。とても満足そうだ。



「やっぱりって……?ねぇ、エリク?」

「先に手荷物をお運びしますね。」

(……逃げた)


今日の服を用意してくれたエリクもグルなのだろうと、シュシュアは逃げる背中にジト目を向けていた。



「レヴィアス様、ありがとうございます。」


「こちらこそ、こんな素敵な装いをしてくれてありがとう。春の日差しのように煌めく君の隣に立てることを何より光栄に思う。」


レヴィアスは眩しいものを見るかのように目を細めてシュシュアのことを見つめていた。



「俺のことは無視か?」


すると、後ろに停まっていた馬車からレッカが不機嫌そうに降りてきた。彼もジャケット姿で正装に近い装いをしている。



「その上、荷物運搬用の馬車に押し込めるとはひどい扱いだな。」


「いやいや、俺たちの馬車に同席させるわけにはいかないだろ。せっかくの二人きりを邪魔する気か?信じられない悪行だな。」


「今はお前より高位の身分なんだが。その俺に不敬を働くのか?」


「へいへい、大変申し訳のう思っております。」


「おい」


目の前でいきなり軽口合戦を始めた二人についていけず、シュシュアは目を白黒させている。



「あの、レヴィアス様?」


「昔と同じようにレヴィーでいいよ。言葉遣いも気安いものして。」


「レヴィアス様、今はそういうことを言ってるわけでは」


「レヴィー」


「あのだから」


「レヴィー」


「………れびぃー」


「くっ。これは想像以上だな…ちょっと駄目だ…どうしたって顔がニヤける…堪らない。ねぇシュシュ、もう一回言って?」


「……………っ!!」


「おい、ふざけてないで行くぞ。約束の時間に遅れる。」


苛立つレッカと生暖かい目で見守っていたエリクに急かされるようにして、二人はようやく馬車に乗り込んだのだった。



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