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距離を置きたいのに、幼馴染が本気を出してきました  作者: いか人参


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21.学期末パーティー


学期末パーティー当日、レヴィアスに貰ったドレスを身に纏い髪飾りを付けたシュシュアは、緊張した面持ちで馬車に揺られていた。


(これってもしかして、もしかしなくとも、レヴィアスの色一色なんじゃない?)


今更気付いてしまった事実に、シュシュアが恐怖に慄く。



「とても良くお似合いですよ。」


会場に入るまでのエスコート役として付き添っている盛装姿のエリクが、彼女の不安げな表情を見て褒めてきた。



「ありが…」

「ふふ、見事にレヴィアス様一色ですね。」

「///////////////」


意地悪く言ってきた軽口に被弾したシュシュアは、耳まで赤くして悶えていた。人から言われる方が数倍恥ずかしかったらしい。



「そろそろ着きますので、お顔を整えてくださいね。」

「もうっ」


白々しく言ってくる執事に、シュシュアは頬を膨らました。


今日は来訪者が多く混雑するため、いつもの停車場を利用することは出来ない。少し離れた所に馬車を停め、シュシュアはエリクの手を借りて会場となるホールまで歩いて移動した。


会場入りして受付を済ませると、エリクはまた迎えにきますと言って戻って行った。


一人になったシュシュアは、豪華絢爛な会場を見渡した。

金を使った内装や艶のある床板そして煌びやかなシャンデリアが光を受けて輝く。華やかに着飾った人々で溢れ、非現実を感じさせる夢のような空間だった。



今宵のパーティーにプログラムはなく、学園長による開始の挨拶後は自由となる。


シュシュアは給仕からグラスを受け取ると、ミュイを探すために会場内を歩き始めた。



「まぁ!第二王子とご婚約ですの!さすがエリザベス様ですわ。きっと歴史に残る国母になりますわね。」

「ちょっと気が早いですわよ。王位継承順位はお義兄様が上ですわ。」

「わたくしたちはエリザベス様に付きますわ。」

「ええ、もちろんわたくしもです!」

「まぁあなた達ったら」


人だかりが出来ていると思ったら、エリザベスとその取り巻き達であった。

ミュイの言う通り王子との婚約が決まっていたらしい。レヴィアスのことなどひとつも話題にしていなかった。


(なんだ誰でも良かったんだ…彼女にレヴィアスを取られなくて良かった)


あれ…今私、取られなくて良かったって思った?そんな立場にいられるわけないのに、なんて傲慢なことを…あぁ恥ずかしい…


顔が熱くなったシュシュアは扇子を取り出し、下品にならない程度に顔を仰いだ。



「パートナーもいない方がなぜ人様の色を着ているのかしら。不思議ですわ。」


(うわ、見つかっちゃった…)


少し離れていたが、エリザベスの目はシュシュアのことを捉えていた。ゆっくりと距離を詰めてくる。今ならまだ気付かなかったで済ませられる距離だと思ったシュシュアは、扇子を畳んでその場から移動した。


幸いホールには人が多くいて密集しているため、簡単に巻くことが出来た。


(……早くミュイと合流しよう)


その途中、また嫌な人物を見つけてしまい、シュシュアはさっと人の影に身を隠した。


「君今日は一人なの?良かったら僕のことを男避けに使っていいよ。一人でいた時に言い寄られたら面倒でしょ?」

「お心遣い痛み入りますわ。是非お願いしたいです。」

「うん、一緒に行こうか。」

「はい」


うっそりとした表情で目の前の男性のことを見つめた女性は、促されるまま人気のない方へと行ってしまった。


(メルケンって、跡取りのいない家なら本当に誰でも良かったんだ……)


彼が偶然を装って話しかけた相手は、シュシュアもよく知っている同じ伯爵位の一つ下の女子生徒だった。

あんな薄っぺらい男に騙されていたのかと、シュシュアは自分の至らなさに恥ずかしさを覚えた。


しばらくすると、楽器隊による演奏と共にダンスの時間が始まった。仲睦まじそうに手を取り合ったカップル達が次々とホール中央へ移動し、音楽に合わせてステップを踏み始めた。


シャンデリアの光を受けて優雅に華やかに踊る姿はとても魅力的で、物語の中の出来事のようだった。

それは視界に入れるには眩し過ぎる光景で、1人でいたシュシュアは目を逸らしたくなった。


(………少し休憩しようかな)


空いたグラスを給仕に返すと、シュシュアは人のいないテラスに出た。辺りはもう暗くなって来ており、さすがに肩が露出したドレス姿では寒かった。


(さむ……やっぱり戻ろう)


シュシュアが踵を返そうとしたその時、ふわりと肩が温かなものに包まれた。



「シュシュ、見つけた。」

「……レヴィアス様」


黒の盛装姿の彼は銀色の前髪を掻き上げ、菫色の瞳を細めてどこかホッとしたような顔で微笑んでいた。




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