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あーかい部! 2話 カレー

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。

そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!

趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!

面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!

独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)


そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室。






「くっ……、」




ひいろは独り、耐えていた。




「くそっ、なんで……!」




どれくらい時間が経っただろう……。お腹を抑え耐え忍んでいると、きはだがやってきた。




「ひいろちゃん何して……どうしたの!?」




部室でうずくまるひいろを見つけ、慌てたきはだが駆け寄ってきた。




「ダメだきはだっ……、来るな……っ!」


「え




ひいろがきはだを制止したのとほぼ同時に、特大の腹の音が静かな部室に反響した。




「…………は?」


「すまない。はしたないところを見せてしまったな……///」


「……え、なにお腹空いてたの?」




きはだの視線は足元に転がるネズミの死体を忌避するかのような、絶対零度のそれだった。




「……ああ///」


「え?それであんな深刻な顔して『ダメだきはだっ……、来るな……っ!』とか言ってたの?」


「すまない。」


「…………そっか。」




きはだはおもむろに広げたカバンから飴玉を取り出した。




「きはだっ……!」




きはだは、ひいろの期待の眼差しをふんだんに浴びた飴玉を、




「……はむっ。」




眉一つ動かさずに自分の口へ放った。




「きはだぁぁぁああ!!!」


「……ん、何?」




きはだは口の中でコロコロと飴を舐りながらこちらを一瞥した。




「貴様っ、なんて惨いことを……!?」


「心配させられた仕返し。……うま♪」


「ぐああぁぁ……、」




お腹の音が再び部室に反響した。




「…………ほれ。」


「いてっ!?」




見かねたきはだが放ったものは、ワタシの頭に落下し床に転がった。




「いてて……何するんだ


「拾って食べれば?」


「食べ……?」




床に転がったそれは、大きく『鉄』と書かれたゼリー飲料だった。未開封なので中身は無事だ。




「き、きはだ…………!」


「褒めてももう出ないよぉ?」


「いや、充分だ。ありがとう!」




空きっ腹にゼリーが沁みた。




「がっつくねぇ〜。」


「はっ!?///すまない……はしたなかったな。」


「いいよいいよぉ。んで?お昼でも忘れたの?」


「いや、お昼はちゃんと食べたんだが……その、見てしまったんだ……。」


「見た?」


「放課後、ここにくる前に保健室に寄ったんだが……、白ちゃんが


「白ちゃん?」


「そうだ。頬張っていたんだ、とても美味しそうに……。大きなカレーパンだった……。」


「白衣汚れそう。」


「白ちゃんはご飯食べるとき白衣脱ぐぞ?」


「へ〜え。」


「口の周りに食べかすをつけて、保健室中をカレーの匂いで充満させて、ザクザクと美味しそうな咀嚼音を奏でてた……!!」


「そいつぁとんでもねえ飯テロだねぇ。」


「ありがとう……助かったよ。」


「うん、それはちょっぴり同情だねぇ。」






「カレーパンって自分で食べるとそんなでもないのに、なんで他人が食べてるとあんなに美味しそうに見えるんだろうな……。」


「最後の方は満腹で食べるのちょっとキツいのにねぇ。」


「やはり……カレーだから、なのか?」


「パンも美味しいけど、食欲そそられるのはカレーだよねぇ。」


「カレーの匂いが漂ってきて、『今日はカレーか……。』ってなる瞬間は幸せだよな♪」


「鼻もってかれるよねぇ。」


「う、思い出したらまたお腹が……。」


「もうやらんぞ。」


「大丈夫だ、今度は耐えられる……!」


「カレーといえば、お家によって味が違うけど、ひいろちゃん家はどんなカレーなの?」


「ワタシの家か?うちはお婆ちゃんが日によって違うのを作るからなあ、何派とかは難しいな……。」


「じゃあひいろちゃんはどんなカレーが好み?」


「好みかぁ、サッパリとした鶏肉ベースも悪くないし、崩れそうになるまで牛肉を煮込んだカレーも良いな……。豚肉を厚めにカットして歯ごたえを楽しむのも捨てがたい……!あ、待てよ朝に嬉しいグリーンカレーも、いやシーフードメインのスープカレーだって


「めっっっちゃ語るねぇ。」


「ぐぁぁぁあ思い出したらお腹がぁ……!?」


「自爆してやがらぁ。」


「きはだが誘導するからだろう!?」


「ゼリーの恩を忘れたか。」


「ありがとうございますっっ!!」




「「……ん?」」




カレー談義をしていた2人は、微かにだがどこからともなくカレーの匂いが漂ってきていることに気づいた。




「流石に惨いぞきはだ……!」


「わたしじゃないよぉ?さっきのゼリーが最後の食べ物だったし。」


「ならこの匂いはどこから……?」


「う〜ん、外でカレー売ってるとか?」


「まさかそんなわけ




「やっほー、2人とも元気?」




部室の外、ドアに目を向けると、ちょうど白ちゃんが部室にやってきた。




「あ、白ちゃん。

「白ちゃん黒〜い。」




いつも(仕事中?)は白衣を着ている養護教諭こと白ちゃんだが、今は白衣を着ておらず上下暗色の服に身を包んでいた。




「流石に食事中は脱ぐわよ。」


「食事中?」


「……、あ!カレー臭!」


「おい言い方。」




先ほどから漂っていたカレーの匂いは白ちゃん……いや、正確には白ちゃんが持っている大きなレジ袋が発生源のようだ。




「食事中って、まだカレーパン食べてたのか……。」


「ああこれ?購買で売れ残ってたのを買い占めたのよ。宣伝してくれれば割引してくれるってね?いやぁ〜お得お得♪……あ、食べる?」


「「いいの!?」」


「あげないけど。」


「なっ!?」

「マジかこの人……。」


「食べたかったら、明日の購買で買ってね☆」




軽快なウインクをかました白ちゃんはそのまま部室から去っていき、部室にはひいろ、きはだの2人と豊潤なカレー臭が残された。




「……。」


「……。」




・・・・・・。




「「飯テロだけしていきやがった!?」」




翌日、購買は大繁盛した……。








あーかい部!(4)




ひいろ:投稿完了だ!


あさぎ:カレーパン?


ひいろ:何故知っているんだ?


白ちゃん:そりゃあ私の完璧過ぎるマーケティングの賜物よ♪


きはだ:出たなカレー臭

あさぎ:あ、カレー衆

ひいろ:カレー集の人だ


白ちゃん:酷い!?


きはだ:あさぎちゃんもやられてたんだねぇ


あさぎ:教頭先生にカレーパンあげてる所に出くわした


ひいろ:ズルいぞ!?

きはだ:ああズルい!?


あさぎ:私は貰ってないよ?


白ちゃん:教頭先生にはお世話になってるからね


あさぎ:『ショバ代なら払いますんで……』って言ってたよ


きはだ:うわぁ……


ひいろ:黒いな……


白ちゃん:くっ、あさぎちゃんの口も塞いでおくべきだったか……!


ひいろ:校内で営業しなければいいんだぞ?


白ちゃん:金銭の報酬は無いからnot営業


きはだ:白ちゃん、カレーパンのレシート出そっか


あさぎ:きはだ、うちの購買にレシートは無いんだ……!


きはだ:なんですと


白ちゃん:へっへーん♪完全犯罪で〜す!


ひいろ:家宅捜索すればカレーパン出てくるんじゃないか?


白ちゃん:うちに来ても作り置きのカレーくらいしか出てこないわよ?


あさぎ:すでに加工済みか……


白ちゃん:なーーっはっはっは!私の完全勝利ぃ♪♪


きはだ:くっ、こんなののせいでうちの晩ご飯の献立がカレーにされたなんて……!


あさぎ:『された』?


きはだ:カレー作るためにそんなにお得でもない卵を買う羽目になった


ひいろ:卵なんて使うか?


きはだ:え?使わないの?


あさぎ:お店だと切ったゆで卵ついてくる所あるよね、うちは使わないけど


きはだ:うちは各自のお好みでゆでたり生でいただいてるよぉ


あさぎ:楽しそうな食卓だなぁ


ひいろ:くっ、なんだその幸せ空間は……!


白ちゃん:え、なにその美味しそうなの


きはだ:白ちゃんは一生カレーパンの煮こごりを啜ってれば?


白ちゃん:ちょっとタマゴ買ってくる


あさぎ:独り身のフットワーク軽いなぁ

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