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2 パーティ


『つまり体温上昇と体温低下のデメリットが相殺されたってコト!?』

『そんなことある?』

『これ半分奇跡だろ』

『なんかシナジー湧いてて草』


 携帯端末の画面に表示されているコメント欄は今までにないほど加速している。

 画面から視線を持ち上げると、撮影ドローンと向かい合う彼女の姿が映る。

 彼女はどこか儚いのに涼しげな印象だった。

 まるでグラスの中でからんと音を立てて溶けた氷。

 艶のある黒髪、すこし幼さの残る顔立ち、正しい姿勢。

 現在、彼女は自分のリスナーと話し合いの真っ只中。

 女配信者が突然、男配信者とパーティーを組むとなれば荒れるのがファンだ。

 幸いなことにこちらのリスナーの男女比は九対一で圧倒的なガチガチの男社会。

 配信者の底辺ということもあってガチ恋勢など存在しない世界に生きている。

 議論の余地などありはしなかった。


『お?』

『お?』

『来た!』


 話し合いに決着がついたようで彼女がやってくる。


「えっと、話がつきました。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

「マジ!? やった! こちらこそよろしく! あー、えっと」

「トウカだよ」

「カガリ。これからよろしく!」


 手を取り合い握手を交わす。

 同じことの繰り返しだったこれまでの日々が変わる。

 握り締めた手のすこし低い体温が、そう予感させてくれた。


『おめでとう』

『結婚しろ』

『知り合いの牧師に連絡するわ』


「茶化すな、お前ら! これでパーティー解消になったら一生恨むからな!」


 トウカは困り眉を作りながら、すこし赤面していた。


「まぁ、コメントはほっといて。折角だ、第一階層を突破してみないか? 恥ずかしい話だけど、実は一度も第二階層に辿り着いたことがないんだ」

「カガリくんも? 実は私もなんだ。いつも途中で引き返しちゃって」

「わかる。ギリギリまで進みたいけど、帰りのことを考えると中々な」

「そうそう。いつもいつも同じことの繰り返しで第一階層にとっても詳しくなっちゃった」

「本当にな」


 たぶん第一階層を練り歩いた経験だけなら俺たちに敵う冒険者はいない。


「いいね、トウカとなら上手くやって行けそうな気がする」

「私もそう思う。じゃ、行こっか」

「よーし、今日こそ第二階層を拝むぞ!」


 氷漬けで半身だけのスピーナに別れを告げ、二台の撮影ドローンを連れて奥の通路へ。

 この辺りは勝手知ったる庭のようなもので、どこに何があるか大体わかる。

 例えば。

 通路をしばらく進んだ先、大きな曲線を描く部分に一本の枯れ木が生えている。


「あ、そこ」

「あ、そこ」


 声が揃い、顔を見合わせる。


うろに果物」

「虚に果物」


 お互いに笑みがこぼれ、笑い合う。


『いちゃいちゃするな!』


「してねぇよ!」


 コメントにそう返して枯れ木の裏手へ。

 そこに空いている虚に手を入れると、いつも果物が隠されている。


「魔物のへそくりだ」

「ちょっと魔物には申し訳ないけど」

「罪悪感なんか吹っ飛ぶくらい美味いんだな、これが」


 絶妙に熟れた果実をナイフで半分に切り分け、お互いに囓る。

 水を口に含んだように溢れ出す果汁と、溶けてなくなる果肉。

 天然のジュースだ。


「はぁ、疲れた体に染みる」

「冒険者の特権だね」

「でさ、焼くとまた甘みが増して美味いんだよ」

「そうなんだ、私は半分凍らせてシャーベットにするのがお気に入り」

「なにそれ美味そう!」

「私も焼くの興味あるな」


 と言うわけでお互いのスキルで果実を焼き、凍らせる。


「なにこれ、うまっ! これを知らないなんて人生の損失だろ」

「焼いただけでこんなに甘くなるんだ! 私これ好きかも」


『飯テロやめろ』

『美味そう』

『ちょっとダンジョン行ってくる』

『馬鹿、止めろ。考え直せ』


 新感覚の味覚に舌鼓をうち、ダンジョン攻略を再開。

 二人だと色んなことが新鮮に感じられていいな。

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