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第1話

 時刻は、夜の十一時四十分。

 薄暗い個室の入り口の扉が、そうっと開く。


 まるでスパイ映画に出てくる銀行の金庫か、非合法な研究施設の兵器保管庫を思わせるような、分厚い金属でできた重々しい扉。しかし、その割にはずいぶんとスムーズに、音もたてずに開いていく。

 きっと、そうなるように計算してつくられているのだろう。

 深夜の屋敷内に、開く音が響かないように。そして何より、その部屋の人物に侵入者の存在が気付かれないように。


 扉の隙間から、小動物を思わせるような小柄な体躯(たいく)の……やはり、小動物のように弱々しく震えた少女が入ってくる。彼女の名前は、新崎(にいさき)瑠衣(るい)

 この部屋は瑠衣の部屋ではなく、扉にも当然鍵がかかっていた――より正確に言えば、夜の十時に自動的に鍵がかかるようになっていた。

 だが、それは瑠衣にとっては問題にはならない。なぜなら、彼女はその屋敷のすべての個室を開錠することができるマスターキーを持っていたから。


「はあ……はあ……はあ……」

 静かだが、速く荒い呼吸。

 ど、どうして……こんなことに……。


 瑠衣の手には、先がとがった出刃包丁が握られている。その凶器(・・)は、屋敷のキッチンから持ってきたものだ。空調などの配管が露出した独房のように簡素なこの個室で眠っている女性を……殺害するために。

 それが、この『悪霊ゲーム』での瑠衣の役割。『悪霊』に選ばれてしまった瑠衣が、しなければいけないことだったのだから。



…………………………



 なんの変哲もない普通の女子大生の瑠衣が、どうしてこんなことに巻き込まれてしまったのか……それは、分からない。目を覚ましたときには彼女は、他の八人の男女とともに、この屋敷の中にいた。


 当然、はじめは訳が分からなくて混乱するしかなかった瑠衣たちだったが……ちょうど九人目が目を覚ましたのと同時くらいに、屋敷のリビングに置かれたテレビが自動的に起動して、不気味な仮面の男が説明を始めた。

「ようこそ、皆さん。私が用意したゲームの舞台へ」

 その声は明らかに、コンピューターで作られた合成音声だった。

「ルールは簡単です。これから皆さんには、この屋敷で共同生活を行い、その間に、自分たちの中に紛れ込んでいる世にも恐ろしい『悪霊』を探していただきます。その、『悪霊』とは……」

 その声も、仮面も、告げる内容も……その何もかもがあまりにも「出来すぎて」いた。あまりにも「それらしい体裁」だった。だから、瑠衣たちはすぐに気づくことが出来た。


「…………それでは、御託はこのくらいにして……さあ、人間の本性をあぶりだす残酷なゲーム……『悪霊ゲーム』の、スタートです!」


 これは、デスゲームだ。

 自分たちは、ときどき噂に聞いていたデスゲームというものに巻き込まれてしまったのだ、と。


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