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第6話 ばったり出会ったのは

「誠に申し訳ございませんでしたあああ!」


放課後、瞬がミアに土下座をしていた。

既に瞬の顔にはキズがいくつかあるのだが。


「い、いえ。私もボーッとしてましたし、頭上げてください」


「こうしないと、色々やばいので!」


一貫の行動を複数人に睨まれながらも遂行するのにはある意味尊敬の念すら覚える。


対して俺はというと、女子に囲まれていた。


「最上君さっきは凄かったね!」「ミアちゃん守る姿かっこよかったよ!」「私も守って欲しいなぁ」


ここまで大勢に囲まれたのは久しぶりである。ミアが来てからはそちらに分散していたので尚更だ。


「あはは、間一髪だったなー」


なんとかいなして帰ろうとするが、行く手が阻まれて身動きすらままならない。


それを見兼ねてか、ミアが寄ってきた。


「京君!さっきはありがとうございました。えっと......お礼をしたいので少しここを離れましょう」


「お、おう」


ミアは俺の手を引っ張り強引に囲いを抜けていく。さすがの勢いに少し道を開けたりもしてくれたが。


教室から離れ人の少ない廊下まで駆けたところでミアは俺の手を離した。


「......京君、先程は本当にありがとうございました」


「たまたま俺が近くにいただけだ。助けるのは当然だろ?」


「ふふ、優しいですね。......どうしてか私、京君にはみっともない姿ばかり見せてますね」


自虐的に言っているが、その顔は些か辛そうである。


「そんなことはないぞ。俺含めクラス皆ミアの凄さに感服してるよ」


「そ、そういうことではないんですけど......。とりあえずありがとうございました。また、明日」


ミアは消えるように去っていった。

結局何が言いたかったかよく理解出来なかったが、単に守られたことが恥ずかしかったのだろう。


俺も一拍置いて学校から出る。あまり他生徒に会わなかったのが唯一の救いだ。


今日は凛の迎えは瑠璃に任せているので、俺は切らしていた調味料のため、スーパーへ足を運んだ。


商品を手に取ろうとすると、別の客の手と当たってしまった。


謝ろうと振り向くと、その顔は最近よく見かける顔で──。


「「あ」」


「また、会ったな」


「笑ってしまうぐらいの偶然ですね」


あはは、と二人で笑い合う。

そう正体は俺のお隣さんのミアである。


帰り道が一緒ならばったり会うのは特段珍しいかと言われればそうでも無いが、先程の件の手前、やや気まずい。


「また明日どころか、数十分ですよ」


「そうだな、ミアも食材の買い出しか?」


はい、と持っているスーパーのカゴを俺に見せつける。中身はやや冷凍食品の多いような......。


「......はっ! あの、冷凍食品が多いのは一人暮らしだからと言いますか、その、料理がそれ程上手では無いからと言いますか......」


あたふたしているのが目に見えて分かる。

一人暮らしは初耳だが、ある程度の察しも付いていた。まぁ、海外で一人暮らしは少々気になる点もあるが。


「はは、一人暮らしは大変そうだからな。しかし、冷凍食品ばかりだと栄養が偏るだろ......」


「そうですか......やはり料理の勉強をしないとですね」


「うーん、そうだ! 今度、良ければ料理を教えるよ」


我ながら良い考えだと思った。

昨日、俺の料理を喜んでくれていたので、教えられるだろう。


「良いんですか!? また、迷惑をかけてしまってるような」


「俺から提案してるんだ。迷惑な訳が無いだろ?」


「はい......じゃあお願いします」


勢いで押し切ると渋々ミアは提案を呑んでくれた。少し赤くなっているのは料理が不得意と知られたからだろうか。


その後、一緒に帰る中で週末の日曜日に隣室であるミアの家へ訪れることにした。

丁度日曜日は母さんの仕事が休みなので凛の世話に関しては大丈夫だ。




──そして当日。


「じゃあ、ちょっと出てくる」


「どこ行くの、兄貴」


近くにいた瑠璃がぶっきらぼうに質問を投げかける。

確か瑠璃はミアと相性が良くないのかこの前は敵意剥き出しだったので、少しぼやかそう。


「友達の家、頼み事があって」


「そ、遅くならないでよ」


表情ひとつ変えず、自室へと去っていった。

思春期女子の扱いは難しいな。


家を出てから0秒に近い移動時間を経て、インターフォンを鳴らす。準備していたのかすぐに玄関が開いた。


「おっす、ミア」


「京君、いらっしゃい」


ミアの家へ入ると、先日とは違いすっかり片付いていた。


「少しソファに座って待っててください」


同じマンションのため、同じ間取りなのだが、家具の置き方ひとつでかなり別の空間になっていた。


そういえば、流れですんなりミアの家に上がったが、一人暮らしの女子の家と思い出す。

しかし、こちらが意識すると、戸惑うのはミアなのは明白だ。

動揺を見せずにいこう。


「お待たせしました」


髪をポニーテールに縛って、エプロン姿のミアがそこにはいた。こんな場面他の誰かに見られたら大騒ぎになるなと再確認する。


「......どうしました?」


じっとミアを見すぎたせいで問われる。


「いや、その格好も似合ってるなって」


「そ、そうですか。......ありがとうございます」


ミアの白い肌がうっすら赤く染る。分かりやすいな。


「......コホン。では、見ててください!」


首を振ってキリッとした顔に戻したミアはエプロンの紐を再度クッと結んで意気込んだ。

ご読了ありがとうございます


続きが読みたいと思いましたら是非ブックマーク登録、高評価、星、よろしくお願いします


また、本日18時に次話投稿予定ですので、お読みいただけたら幸いです

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