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第5話 高鳴るココロ

 午後の授業が始まる。

 周りを見るとウトウトしている生徒が何人か居た。この春の陽気に皆、精気を奪われてしまっているのだろう。


 特に5時間目は古文だ。一歩聞き逃せばお経の如く眠りに誘う。


 そして、他の先生は授業中の居眠りに関してよく怒るというのにこと古文教師に限っては一切の覇気を見せないのは何故だろうか。


 優等生の俺であっても身体を伸ばす回数が自然と増えていた。


 幸い6時間目は今朝言われていた通り体育だったため、あちらこちらで喜んでいる奴もいた。


「次の体育はグラウンドだ。遅れないように集まれよー」


 5時間目終わりの休み時間、体育教師がうちのクラスにふらっとやってきた。もう少し早く言うべきだろ、俺以外にも指摘したかったはずである。


 体育の授業は女子が50m走の記録、男子はサッカーだった。次の体育はおそらく逆になるだろうが、運動も得意な俺は苦とは感じない。


 女子は少し計測が嫌な人が多いそうだ。まあ、今のように男子の晒し者になってしまうという理由もあるのだろう。


 現に、一部男子はサッカーしながらもチラチラと、どころかガッツリ女子の方を覗いている。


「五月原、8.0!」


 どうやら楓が走り終えたようだ。

 この歳にもなると女子と男子の平均の差が大きく、速いのかの感覚が狂ってしまうが女子にとっては速い方だろう。


 しかし、タイムなどそっちのけで男子は盛り上がっていた。


「今、揺れたな〜」「五月原デカいし」「あれは震度8くらいあったな」


 酷いセクハラが飛び交っていた。

 楓の胸が大きいかと誰に問うても大きいと即答されるほどには目立っていた。

 確か周りに言われるようになったのは中学に入ってからだった気がするが。


 疲れた様子の楓とチラッと男子側を向くが、すぐに背を向けて他の女子とお喋りに興じていた。


 その後も俺含め男子は少し人数の少ない中でサッカーに勤しんでいると、外野が少しザワっとした。


「ミアちゃんだ」「ミアさんこっち向いて〜!」「胸は大きくないけどいい太ももだ」「あの太ももに挟まれたい〜」


 周りにいた女子がギロッと睨んでいるが、お構い無しにバカたちは夢中のようだ。一部変態は聞かなかったことにする。


「テイラー、7.5!」


「ミアちゃん足速ーい!」「凄い! 男子にも負けないでしょ!」「スポーツも出来るんだ!」


 盛り上がりに聞き耳をたてると、ミアが良い記録を出したそうだ。


「ミアちゃん速いんだな。ま! 俺には負けるけど!」


「俺ら男と比べてどうするんだ」


 瞬が得意げに自分のスピードを自慢するが、一体何と勝負しているのか......。男子と女子では平均が違うというのに。


 グラウンドの脇へ避けて休憩するミアの姿が目の端が捉えた。


「......俺ちょっと水分補給」


 俺は無意識にミアに声をかけたくなり、理由付けに水分補給を咄嗟に言い出してしまった。


 どうして、ミアと話したくなったのだろう。

 自問自答するとミアに近寄る足を止めてしまっていた。


「おっしゃー! 全力シュート行くぜええ!」


 グラウンドではバカな瞬が叫んでいる。

長い助走で足を大きく振りかぶる。


その時、瞬の蹴ったボールは大きく外れ、ある場所目掛けて飛んでいく。グラウンドの端で休んでいる少女の下へ。


「ミアちゃん! 危ない!」


 瞬の叫びにミア含め周囲の生徒が反応するが、スピードもかなり出ているため避けれない。


誰もがぶつかると諦めたその瞬間──


 ──バシッ!


 大きな音が鳴る。ミアは手で顔を覆う。

 その手にはボールの感触なんて一切ない。

 その代わり、そこにはもう一人の手が存在した。


「バカ野郎! 危ないだろ!」


 俺は間一髪の所でボールを止め、ミアを抱くように支えていた。


 周りでホッとした顔を皆がする。

 たまたまではあるが、俺も助けれたことに安堵の表情を浮かべる。


「なんだ、最上! テイラー! 怪我は無いか?」


 体育教師がこちらに心配を向ける。


「俺は大丈夫です! ミアは大丈夫か?」


「......はい、ありがとう......ございます」


 ミアは少し驚きからか力が入っていなかったが、怪我を負った様子はない。


 一息置くと、その格好から皆の視線が俺に集まっていた。


「......離しても立てるか?」


「......は、はい! 大丈夫、です!」


 ミアは体勢を改めて理解したようで恥ずかしさが芽生えてシャンと一人で立てていた。


 俺がその場から離れると、周囲の他の女子生徒が集まってきていた。


「ミアちゃん大丈夫?」「怪我はない?」「ほんと、七海はバカ」「あいつ授業終わったら殴りに行こ」


 瞬が散々な言われようだったのは目に見えて分かった。瞬の顔も真っ青になって他男子に囲まれている。


「それに比べて最上君はカッコイイ!」「私も守られてみたい!」「ちょっと羨ましいなぁ」


 ミアの周りの話題は次第に自分の安否から自分を助けてくれた人に変わっていた。


 しかし、話が頭に入ってこない。心臓のバクバクが止まらない。


 走った後だからか、ボールにぶつかりそうでびっくりしたからか、それとも別か......。


 何故かは分からなかったが、ミアの視線の先にはある一人がずっと居た。

ご読了ありがとうございます


続きが読みたいと思いましたら是非ブックマーク登録、高評価、星、よろしくお願いします


また、本日、12時、18時に次話投稿予定ですので、お読みいただけたら幸いです

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