前戦争の英雄マクシムス
リーナ:アルバトロス3、4、5も出撃準備整いました。敵機をレーダーで確認。発進許可が下りました。アルバトロス各機出撃してください。
アストラ:では、出かけて来る。
リーナ:行ってらっしゃい。必ず帰ってきて。
アストラ:それは神のみぞ知るところだ。ま、死なないように立ち回るさ。
マッキナ:よーっしゃ、行くぜ!!
アストラ:気合の入れ過ぎだ。最後まで気力が持たんぞ。
マッキナ:大丈夫ですって。まだ若いですから。あ、でも隊長のように改造してないから、そこんところは気を付けるようにしますよ。
リーナ:敵機はハルパーストライク機が多数。10分後に敵部隊とぶつかります。総員戦闘態勢を取って下さい。
ダイバーノアから出撃し、敵部隊に向けて、進軍するアルバトロス隊。
リーナ:更に敵機の詳細が判明しました。ハルパー・ストライクの中に別機体が混じっているのを確認されています。相手はフェア・マレットです。
アストラ:マクシムスか……まさか再びアイツと戦場で出会うとはな。
リーナ:相手はマクシムス・シュナイダー。前戦争の英雄です。各機、注意してください。困難な戦いとなりますが、退避は認められません。なんとか時間を稼いで下さい。
アストラ:俺らが逃げて助かっても3人だ。20万人の命には代えられない……やってみるさ。
リーナ:しかしアストラ……数に関係なく、アナタの命も大切です。それは心に留めて置いて下さい。
マッキナ:ここで名前を呼ばれないところが、俺の可哀想な所だね。
アストラ:俺達を無視してダイバー・ノアを攻撃する可能性がある。撃ちもらさないように、このままダイバー・ノアから離れた場所で迎え撃つ。
リーナ:健闘を祈ります。
敵機をレーダーで捉えたところ、敵からの通信が入って来る。
マクシムス:……久しいなアストラ。こうして戦うのは20年振りか……寂しい時代だったな。戦いのない時代は、お互いに……
アストラ:そうでもない。それなりに良い人生を送ってきたさ。
マクシムス:腑抜けたな、貴様。それでも力を求める為に、体を機械に置き換え、脳までいじった人間の言うセリフかね。いや、とっくに人間は辞めていたな、貴様は。
アストラ:そんなセリフを言う人間だよ、俺は。お前のように強さだけで満たされることはできなかったからな。
マクシムス:それは貴様が弱いからだ。更なる力を求めることを諦めたからだよ。あのまま力を追い求め続け、全てを機械に置き換えられたら、お前は人としての一つの到達点にたどり着けた。私を超えたかもしれん。なのになぜ、それを捨てた!!
アストラ:もっと大切なものが見つかったからだ。心だけはどうしても手放しにはできなかったんでな。幼い時のリーナが、それを教えてくれた。それがなきゃ、俺はきっと寂しい人生を送っていたよ。
マクシムス:ざれごとだな。捨てれば良かったのさ。強者には情など必要ない。そんなものを必要とするのは、人として弱いからだよ。弱い者同士で寄り添い合って生きねばならんからだ。貴様には力があった。だから私と同じように、リーナを見捨てれば良かったのだ。
アストラ:リーナを捨てて、本当にお前は強くなったのか?
マクシムス:あぁ、なったよ。だからこそ、私は誰よりも強い!!今の俺なら、カルカリーナを死なせるヘマなどしない。
アストラ:いつまで死んだ人間に囚われているつもりだ。カルカリーナは死んだんだ。俺達があいつの為にできることなんて、何一つないさ。
マクシムス:いや、ある。俺が誰よりも強いことを証明することだ。アイツは誰よりも強い男を望んでいた。
アストラ:存外殊勝な男だったんだな、マクシムス。アイツのラストネームを機体に名づけるくらいだから、それも当然か……アイツは変わったんだよ。リーナを産んでからな。お前は、まだそれに気がついていないのか。アイツが最後に望んでいたのは、生物として強いことじゃない。人間としての強さだよ。弱く脆いものだが人としての優しさを、心を求めていた。
マクシムス:だから、アイツは死んだのだ。非情になり強くなりきれなかったからな。だから俺が証明してみせる。人としての強さの到達点を。
アストラ:……生身でありながら誰よりも強かった。俺だって、そんなお前に憧れを抱いていたよ。一時はな……だが、どこかに疑問が残っていた。それはリーナと触れ合う内に形になったよ。それは……人の心は捨ててはいけないモノだと気がつかされた。
マクシムス:俺が否定してみせよう。そんなモノに価値などないことを。