思いを託して
リーナ:……アルバトロス1の反応消失しました。
マッキナ:そうか……馬鹿だな……本当に馬鹿だぜ……
リーナ:……アルバトロス2の帰還確認しました……出発の準備整いました。艦長、発進の許可を。
リーナ:了解です、艦長。ダイバーノア、発進します……
役割を終えたリーナは、管制機器に肘をつきながら目を閉じ、祈るように両手を額に当てる。
しばらくして、リーナは立ち上がり機体の格納庫へと向かっていく。
途中でマッキナと出会うリーナ。
マッキナ:よう、ただいま……
リーナ:お帰りなさい。マッキナ少尉……
マッキナ:すまない、隊長を連れて帰れなかった。
リーナ:それは約束に含まれていませんよ……
マッキナ:あぁ、そうっだったな……
リーナ:……私も約束を守らないと行けませんね。デートの約束がありましたから。
マッキナ:今は、そんな気分じゃない。
リーナ:嘘つきは嫌いだと言ったはずです……
マッキナ:あぁ、約束くらい破るさ。こんな時くらいはな……
マッキナ:なぁ、俺は受け止める度量も覚悟もあるつもりだぜ。泣きたきゃ泣けばいい。
リーナ:私は冷たい人間なので……
マッキナ:本当に冷たい人間なら、隊長はあんな温かな人間になっちゃいないぜ……
リーナ:私は……父さんを見捨てました。
マッキナ:違うな。見捨てたんじゃない。隊長が託したんだ。これからの未来をな。
リーナ:……みんなヒドイです。勝手に託して、勝手に居なくなっていくんですから。
マッキナ:ホントだよ。みんなヒドイ連中ばかりだ。でもな、そんな中で、居なくならない人間もいるんだぜ。それは……俺だ。
リーナに向けて笑顔を見せるマッキナ。
リーナ:少しだけ、私に付き合って頂けますか……
マッキナ:付き合うよ。何時間でも、いや、もっと長い時間だって構わない。
リーナ:ありがとうございます、マッキナ少尉。いえ、マッキナ……
リーナ:(M)アストラ……私の父は言葉通り、多くの民を守り切った。
リーナ:(M)己の命をかけ、多くの人達を救ってくれたことには、本当に感謝しかない……
リーナ:(M)私を育ててくれ、共に生きてくれた日々も……
リーナ:(M)そして私の存在が生きがいとなってくれたことを誇りに思う。
リーナ:(M)血は繋がってなくても、彼こそが私の唯一の父親だ。
リーナ:(M)全ての避難民を乗せダイバー・ノアは海を深く潜り、誰にも容易に手出しのできない、海の底へと沈んでいく。
リーナ:(M)長いこと海の底で暮らすことになるだろう。
リーナ:(M)私達はここで死ぬかもしれないが、次世代の者達が、また元気に地上で生活を送れることを祈りたい。
リーナ:(M)父が命をかけて守り抜いてくれたのだから。