誇りと称号
リーナ:はぁ……マッキナ機の無事を確認。機体は各部浸水の為、これ以上の戦闘は承認できません。直ちに帰還してください。
マッキナ:かと言って、隊長を置いてく訳にもなー。
アストラ:俺のことは気にするな。先に戻れ……お前はよくやったよ、マッキナ。
マッキナ:素直に褒めてくれるなんて、気持ち悪いですね……隊長。
アストラ:リーナ……今まで本当に感謝している。
リーナ:急にどうしました、アストラ?
アストラ:避難民の収容はどうだ?
リーナ:時間は稼げました。アストラ達のおかげです。
アストラ:安心したよ。なら、もうすぐ晴れて海の底だ。そうしたら容易にタイタニスも手をだすことはできない。
リーナ:はい……我々は安全な場所に退避することができます。
アストラ:だが、俺は帰還するわけにはいかない。このままではマクシムスも引き連れていくことになる。
リーナ:アナタは……ここに残るのですね……
アストラ:あぁ、マクシムスを足止めしなきゃならん。
マッキナ:俺も残りますよ。二人なら勝てる可能性も上がります。
アストラ:却下だ。そんな水に浸かった機体じゃ足手まといにしかならん。それに俺に付き合ってたら二人とも間に合わない可能性がある。だが今なら出航に間に会うはずだ。
アストラ:お前はリーナとデートをする約束をしたんだ。約束は守れ。
マッキナ:隊長……こんな時に、その心配ですか。本当にばかですね。
アストラ:心を機械に置き換えなかったせいだな。が、それも悪くないさ。リーナ、あまり良い父親で居られなかったことを後悔に思う。
リーナ:いいえ……良い父親でした。世界で一番良い父親だったわ。父さんと過ごせたことを幸せに思います。
アストラ:そうか、そこまで言ってもらえるなんてな。もう思い残すことは何もない。娘に立派な父親と認めて貰えた。それ以外に何を誇れることがあるだろうか……
マクシムス:そんなものに価値などない。人類最強の称号こそが最も名誉のあるものなのだよ!!
アストラ:賞賛してくれる人が居なきゃただの飾りだよ。この世界では、もう無用の長物だ。世界最強の称号を胸に抱いて、永遠に眠れ。
マクシムス:私は、認めない!!最強であるがことが一番の名誉だ。出なければ私の全てが否定される!!
アストラ:否定されてるんだよ。実の娘に父親とすら呼んでもらえないのだからな。
リーナ:マッキナ少尉、帰還してください。出航に間に合わなくなります。
マッキナ:……隊長を置いてけって言うのかよ!
リーナ:父が決意をしたのです。私達も覚悟を決めなければなりません!それに……私は嘘をつく人は嫌いだと言ったはずです。
アストラ:俺のことは気にするな。過去と決別する時が来ただけだ。お前らが過去に縛られるにはまだ早すぎる。これからを大事にしろ。別れがあったとしても、生きると言うのは案外、悪くないものだ。
マッキナ:隊長のその不器用さも、俺は好きじゃないですよ……ご武運を、隊長。
アストラ:あぁ、お前とリーナにも祝福を。