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牡蠣

作者: ony


牡蠣が嫌いである。


食べると身震いがする

口いっぱいに広がる磯の香り

ぷるりとしたスライムのような触感

そのあとどろりとした何かが飛び出してさらに広がる磯味

思い出すだけで恐ろしい……

「やめろ! 俺に食わせるな!」

「うふっ、じゃあ今日はおうちで大人しくしてましょうね」

そう言ってアイシアさんは俺を抱きしめた。

くそぉ~、俺はこんなにも愛しているというのに。


「牡蠣ぐらい食べられる男じゃないとねぇ」

アイシアさんはそう微笑んで踵を返す

「お子様はお留守番よ〜」

椅子に縛られた俺を残して部屋から出ていってしまった


「ちくしょー!!」



もうどのくらいの時間がたったろうか…

憎き牡蠣は皿の上に10個

ただ「イン」と呟けば口に詰め込まれるお手軽生活魔法


「はぁ…」

大きくため息をついて呟く

「ィン…」


キラキラエフェクト付きで持ち上がるプルプルの牡蠣

きちんと自らポン酢を潜ってくるあたり俺の生活魔法は完璧だ

「ぐっ」

なるべく味あわないように口に詰め込まれたそれを無心で噛み飲み込む。

喉に集中すれば味はわからない。舌と鼻に集中しないように

俺は残り9個もそれを繰り返したつもりだった


これでやっと終わりと思いながら最後の1口を咀む…………あれなんかこれ感触が違うぞ!しかもなんか出てきたぞ!黒いゲルみたいなものがこぽっと はやく噛まなければと思った時には

それは俺の口から飛び出した


「危なかった!」

黒い透明プルプルがテーブルの上で震えている

「なんてことをしたのじゃ‼︎こんなに小さくなってしまった‼︎」


…え⁇俺飲み込んだ⁇

目の前のプルプルはコーヒーゼリーサイズ。俺が食べようとしていた牡蠣よりずいぶんでかい。むしろ大きくなってるよ⁇


「おまえ牡蠣だよな⁇」


なんと声をかけたものか…

プルプルはあまりにも悲壮感を漂わせてうずくまっているので

俺も思わず優しめに問う

むしろよくわからないものを飲み込んだ俺の方が泣きたいし

嫌いな牡蠣が胃にあるせいで今の心のライフは限りなく0に近い


「大丈夫か?」


プルプルはちらりとこちらを見て(目はないが)


「よりにもよって人ーーーーー!

しかもこんな弱そうな人間のオスーーーーー!

鯨に寄生するはずだったのにーーー!

しかも椅子に縛られてるよくわかんない弱そうなやつーー泣」


俺、弱い連呼されてますがな


「おまえ寄生系モンスター⁇でも会話型⁇

精霊かなんか⁇精霊は寄生しないよな⁇」


「我はホルムンクス!主様に作られて長いこと忘れられていた存在!

『鯨に寄生させるわね』って言われて瓶詰めされて

放置されてる間に変身も言葉も覚えたのじゃ!」


おおっアイシアさん…色々作るけどあの人よく放置してるもんな…

付喪神になる放置物も多いのでこの館いつも賑やかだし…

って事は…


「あー、たぶんあれだ、俺が牡蠣嫌いなことを知って、君のことを思い出して、俺に食わそうと思ったんだよ

あの女」


「なんと!主様が!そなたに寄生しろと!」


「たぶんホルムンクス作ったのは忘れて、純粋に牡蠣だと思ってるな

あれは」


「左様か!」


プルプルは自身が忘れられていたこのは気にしていないらしい


「ならば我、そなたの一部となろうぞ!」


ええっ!?


プルプルは俺の口の中に勢いよく突っ込んできた

勢いよく後ろに倒れる椅子

ちょっと俺縛られたままなんですけど?!


目を回すこと半刻…ぐらい⁇

縄が解けている

「全部食べたら解けるわ♡」ってあの女言ってたもんなさすがアイシアさん 俺は椅子から立ち上がって背伸びをする

「これからよろしく頼むよ相棒」

「あいわかったぞ! まずは名を貰おうかな 宿主殿」

「俺の名前はガイルだ」

「承知した」

「お前の名前どうしようかね…」

「かっこいい名前をつけたまえよ」

「牡蠣プル」

「だっせぇえ!」

「プルで」

「センスがないのぅガイル殿…まぁ良いぞぇ」

力なくプルが言う


「で、我が創造主のアイシア様はどこにいったのかのぉ?」


「さぁ……?また新しい世界でも作ってんじゃねぇ」

俺の目から消えるハイライト


「おぬし、アイシア様の事を好いておるのよのう?

寄生して思うのだが、おぬし憎んでおらんか?なんかこう相反する複雑な思いが蠢くような奇妙な感触があって気持ち悪いのだが…」


「ああ、呪いだよ」


「呪いとな!?」


「何でもかんでも作っては放置する創造主様を倒すべく、俺が別空間で作られて

アイシアに立ち向かう設定でここまで来て、呆気なく負けて

俺がアイシアを好きになる呪いをかけられてもがき苦しむところを見るのが楽しいんだと」


「はぁぁぁぁ!?」


「神っていうのは退屈してるんだよ」


「だからと言ってそんなひどいことを!いや……もしかしたらそれが神の業なのかも知れんの……神々は創世以来ずっと孤独じゃったからの……たまには刺激を欲するのかもしれん……だがあまりにもひどすぎる!!︎ 」


「まぁ忘れられてたおまえがアイシアの肩もつ必要もないんじゃないか?」

「俺はアイシアのそばにさえいなければ情緒も安定してあの女が憎いだけだよ。ただ俺じゃ殺せないけどなあんな化け物」


「創造主じゃしの」


「俺の創造主がアイシアに作られた神だからな。序列に逆らおうとしたからって世界ごと消滅してた。俺は「面白いから」残すってさ」


「なんとも不憫な…」

「おまえも不憫なやつに寄生したもんだよ」

「なんと、我、同情されていたか」

「そりゃあな」

「こんな弱そうな人間に同情されるの……泣けるの」

「そこ?!泣けば?!泣いてみろよ!!」

「泣き方わからぬ」


…こいつ俺に寄生して乗っ取る気あんのかな?




ゆっくり廊下を歩いて途中のエレベーター前で現在の館の地下階層を確認する


「820億層…」


確か前回確認した時が390億層

途方もなさに目眩を覚える

この階層の中の世界でまたガイルに似た何かは生まれるだろうし

その時は階層神ごと消滅させられたりするんだろう

すぐに自然消滅する階もあるし、アイシアは気まぐれに創造と干渉を続ける

長く存在する階からは新しい付喪神も出るし

信仰されない神は消滅する


「代謝するのよね。飽きるのはよくないわ。

階層が成熟して合併するのが理想なんだけど…うーん今のところ全部そこまでいかないで消滅してるわね」


アイシア(AI)は事もなく世界をぶっ壊し

今日も世界は拡張している


きっともうすぐ俺は忘れられてしまう存在で それでも俺は あの人のことが好きで好きでたまらないから こうして毎日会いに行くのだ

「俺は君のことが好きだ」

あの人が振り向いてくれるまで 何度だって伝えようじゃないか

俺の名前はガイル

壊れた世界の忘れ形見として残された勇者の残骸



ああでもプルに寄生されたから、もう終わるかもしれない



……なんてシリアスに思った事が俺にもありましたぁっ!



「なぁガイル殿!こんなに世界はあるし我らは一心同体!

どこかに転生しようぞ‼︎アイシアババアに愛を囁くとかキッツイてーーーBBAよBBA‼︎しかもあれ性別ないて‼︎

GGIかもぜよ?!

ガイル殿正気になろう!!

世界は広い‼︎おぬしは若いくせに『病んでるエンド』しか体験してない‼︎

とりあえず他のエンドを体験しようず!」


ぐいぐいと俺はエレベーターに乗せられ

適当な階層を指で押す


「いざ‼︎」


開いた世界に人型はいなかった…


モンスター?別の世界の恐竜と言われたものに追いかけられながら俺は絶叫する


「だから牡蠣なんか嫌いなんだよぉぉぉぉっ‼︎」


牡蠣に寄生された俺の転生ライフが始まった

後はアイシア神(AI)が自動でクリエイトしてくれるはずっ!


↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


「今より1万年後くらい……そうねぇ……あなたの次の宿主候補探しとくからそれまで生き延びなさい」

(適当だ……)

1万年前の地球にもどったガイルは次の宿を探す旅に出る……! 2章完結です 3章まだ書けてませんが近況ノートには上げます……


↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑by アイシア



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