グラスター
続きです。
翌日になりグラスターに行く時間になった。出発しようとすると皆が出迎えに来てくれた。1人ずつ頑張ってこいと言ってくれた。アキラも1人ずつ返した。最後にリリアーナが
「アキラ。この街は私が守るから頑張ってきてくれ。修行をして強くなったら一緒に戦えるように準備しておく。」
「あぁ。頑張ってくれ。俺も頑張るから。」
と言って皆に別れを告げて次の街に出発した。歩いていたら時間がかかってしまうのでスキル疾走を使い走って行くことにする。今のアキラのステータスで更に疾走を使えば凄いスピードになりすぐに着いてしまう。途中魔物にも遭遇したがアキラのスピードが速すぎてぶつかっただけで死んでしまっている。普通に行ったら3週間ぐらいは掛かるのだがアキラはそれを2日程度で着いてしまった。グラスターに着いて街の中を見て回っていると武器屋が非常に多いように見えた。ギルド長が鍛冶場の街だと言っていたが確かにそのようだ。王都にもアンドグラムにもここまでの武器屋はなかった。後で店の中を見て観ようと思うアキラ。その前にやることがある。この2日ずっと走りっぱなしだったので碌にご飯を食べていなかった。さっきからアキラのお腹が鳴りっぱなしだ。何をするにしてもまずはご飯を食べなければ始まらない。しかしどの店がいいのかは初めてきたアキラには分からない。仕方ないので人に訊ねることにする。ちょうど前から若い男が歩いてきていたので話しかけた。
「あの少し聞きたいことがあるのだが良いだろうか。」
武器を携えていてガタイも良い。見たところ冒険者だろうか。話しかけられた男は笑顔で答えた。
「俺か?何でも聞いてくれ。でもこの辺じゃ見ない顔だな。冒険者か?」
アキラはそれに答える。
「あぁ、そうだ。ついさっき着いたばっかりなんだが腹が減っていてな。おすすめのお店かなんかがあれば是非教えてもらいたい。」
アキラの質問に男はにっと笑って
「それならいい出店があるんだ。他所から来た奴らは大抵その店の食べ物を食べるんだ。案内するよ。ついてきてくれ。」
と言って店を教えてくれて案内まで買って出てくれた。優しい奴である。少し歩いた先にその店はあった。
「おばちゃん。いつもの串を2つ頼むよ。」
注文して出てきたのは肉を串で刺して焼いた食べ物だ。日本の串焼きによく似ている。というかそのまんまだった。食べてみると、
「うまいな。」
やはり味も串焼きそのままだ。ここ異世界でも食べれると思うと感慨深い。
「何の肉なんだ?」
男に聞いてみると
「うまいだろう。俺もこれが大好きでな。魔物の肉らしいんだが何の魔物かはちょっと分からないな。」
魔物というのはこんなにおいしいのかと思った。味は牛に似ているようだが少し違うようにも感じる。
食べ終わり腹も膨れてきたところでギルドを探していこうとする。すると男が
「ギルドならこっちだぜ。」
と言って指を差し歩いていく。なぜこの男は分かるんだろうかと思っていたら
「異世界から来た奴ってのはお前だろ。それで潜入している魔族を倒す為に世界中を回ってるって聞いたぜ。」
そのことを知っているということはこいつ只の冒険者ではないな。
「一応俺はお前が来たらギルドに連れてくるように言われていたんだ。だが2日前ぐらいにアンドグラムを出たと聞いていたからまだ着くわけはないんだが。」
と言ってアキラの顔を見てくる。その目は一体どうやって来たのかを聞いてくるような目だった。
「まぁ、歩いたら時間が掛かるから走って来たんだ。それだけだ。」
と誤魔化すように言った。嘘はついていない。男はアキラの顔をじっと見た後
「走ったぐらいでこんなに早く着くわけはないんだが。まぁいいか。後でじっくり聞くことにしよう。」
取り敢えず追及からは逃れたようだ。先延ばしにしただけにも思えるが。そんなことをしていたら冒険者ギルドに着いた。
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