魔王と配下
続きです。
リンシア女王は魔王たちを会議室みたいなところに通した。魔王とリンシア女王は机を挟んで椅子に座った。魔王の後ろには手下であろう者らが立っていた。女王の後ろにはギルド長、ヒカルそれからアキラが立っていた。アキラは頼み込んで中に入れさせてもらった。何かあってからでは遅いので不測の事態に備えておいた方がいいと判断した為だ。
「それでどういうことなのか説明して下さいませんか。」
リンシア女王が話しを促した。すると魔王が話し始めた。
「まず今回の非道な行為、申し訳なかった。私の名前はベイルと言う。先程申し上げた通り魔王をしている者だ。実は最近魔王になったばかりなんだ。先代の魔王は人間を滅ぼそうとしていたし魔族間の仲も悪化していて魔族同士で殺し合いなんかをしている者らもいて最悪だった。今の魔王では私が目指している世界にはならないと思い魔王を打ち倒して私が魔王になったんだ。」
魔族の間でそんなことになっているとは知らなかった。もしかしたら前国王もこのことを知らなかったのではないだろうか。そんなことになっているのならアンベッカム王国に魔族が攻め込んでは来ないと思い勇者召喚も行わなかっただろうから。リンシア女王がギルド長に
「このことを知っていましたか?ギルド長。」
と聞くとギルド長は
「いえ、全く。少しのいざこざはあったとは聞いておりましたがここまで大きくなっているとはご存知ありませんでした。」
と答えた。それにベイルは
「魔族のことは人間の世界には伝わりにくいからな。知らなくても無理はないだろう。それに本当につい最近のことだからな。」
それからベイルは続けて
「私は魔族と人間が共存できる世界、笑い合いながら一緒に過ごせる世界を目指しているんだ。」
と自身の考えを述べた。
アキラは驚いていた。魔王がこんな考えを持っているなんて思ってもみなかった。魔王というのはもっと残虐で人殺しなども平気で行う奴なのだろうと思っていた。だがそれは前の魔王の話で今の魔王はこんなにも魔族と人間の関係を良くしたいと考えているようだ。だとしたら疑問が残る。
「貴方がそんな考えを持っているのならどうしてこの国を襲ってきたのですか。」
リンシア女王がベイルに聞いた。女王の言う通りだ。先程の話が本当ならばとても国を襲うように指示を出すようにはみえないのだ。女王がそう言うとベイルが答える。
「先程も申し上げた通り私はつい最近魔王になったばかりでまだ私のことを魔王と認めていない魔族もいる。これらは前魔王を支持していて現在の魔王である私とは対立しているのだ。恐らくはその反対勢力の仕業なのだと思われる。」
まだ魔族の方でもいざこざはあるようだ。
「基本的にそういう勢力の魔族は監視しているのだがどういう訳かその監視をすり抜けて出て行ってしまっている魔族が多数いる。そうして人間の国に行き襲っているのだろう。」
こんなにも力を持っている魔王ならば力で言うことを聞かせることができるしその監視から逃れるなんて容易ではないと思うのだが。リンシア女王もアキラと同様におかしいと思ったのか魔王に聞いた。
「私は戦闘能力がないので実際のところは分からないのですがそれでも相手の強さぐらいなら把握できます。貴方はかなり強いと思われるのですがそれでも抑えることができないのでしょうか。厳しいことを言わせてもらいますけど下の者の管理ができていないのでは?」
リンシア女王にそう言われたベイルは
「そのことは本当に申し訳ない。私は魔王としてはまだまだ未熟だ。だからこそこれから魔族の皆と成長していけたらと思っている。それに何故かは分からないが反対勢力の魔族が日に日に力を増していて段々と抑えることが出来なくなっているのも事実だ。誰かが反対勢力の魔族に手を貸しているのかもしれない。魔族を狙っているのかもしれないがそれはまだ調査中だ。」
と魔族の他にも驚異となる種族がいるかもしれないと言った。はたして魔族の他にも人間を脅かすものがいるのだろうか。
読んでいただきありがとうございました。