怪しい奴ら
続きです。
「何だあれは⁉︎」
アキラは起きてすぐに窓を開けると城の上空に数十人の人影が見えた。空を飛べる人間がいるわけもないのにそいつらはアキラの目からははっきりと浮かんでいるように見える。嫌な予感がした。もしかしてと思い
「転移、城!」
転移スキルを使いすぐに城に転移した。アキラが城に転移するとそこにはリンシア女王にヒカル、ギルド長、城で働く数多くの人がいた。アキラはすぐ近くにいたヒカルに話しかけた。
「ヒカル!。何があった⁉︎上空にいる奴らは何だ⁉︎」
アキラが焦ったふうに言うと
「おお!アキラ。来てくれたか。それがついさっき現れたばかりなんだがやばい状況になったかもしれない。正体についてはお前も分かっているんじゃないのか。」
そうアキラも城に来た時点で分かっていた。あれは魔族だ。全員が王都を襲った魔族よりも上位の存在なのは言うまでもないだろう。その中でも真ん中にいる一際目立つ魔族は特にやばい。魔王級の強さだ。
「ああ。もしあいつらが襲ってきたら王都もただでは済まないだろうな。」
アキラが言うとヒカルは
「ああ。だからリンシア女王とギルド長が今から話そうとしているところだ。」
と言いながらも、もしもの時の為に戦う準備を整えている。アキラもいつでも攻撃できるようにしておく。そうこうしているとリンシア女王が魔族たちに話しかけた。
「魔族の貴方達が一体この国に何の用でしょうか。また攻めに来たのでしたら無駄ですよ。返り討ちにしますから。」
と少し攻撃的な態度を取っていた。前回街への被害は少なかったものの住人は全員捕まって大変な目に遭っているので当然の対応だろう。そのうち騎士たちが到着していつでも攻撃出来る態勢になっていた。すると魔族の反応は予想外の物だった。
「ま、待ってくれ。この国を襲ったことを謝らせてほしいんだ。」
何と魔族が謝罪をしたいと言ってきたのだ。そう言ってきた魔族にリンシア女王は困惑していた。
「ど、どういう意味でしょうか。」
そりゃそうだ。意味が分からない。魔族がこんなことを言ってくるとはこの場にいる全員が思ってもいなかったことだ。するとアキラから見て魔王級の強さを誇っている魔族が1人だけ降りてきた。よく見るとその魔族も若い女性だった。
「私は魔族の魔王である。今回のことは仲間の魔族が勝手にしたことを謝罪しに来た。本当に申し訳なかった。」
なんとその正体は魔王だったのだ。アキラとしてはごつごつのおっさんをイメージしていたので魔王が女性だったのは予想外だ。そしてその魔王が謝ってきたので周りの人達が少しざわざわしていた。
「魔族が謝った?」
「なんかの冗談だろう?」
と言っている者がちらほらいた。みんなそんな訳ないだろうと思っているようだ。アキラだって今回のことを呑み込めずにいた。だがリンシア女王だけは平静さを取り戻し
「そうですか。貴方が仰っていることは概ね事実のようですね。」
と言った。すると近くにいたギルド長は
「何をおっしゃっているんですか。リンシア女王。奴らのなんかの罠の可能性もあるんじゃないですか。」
とリンシア女王に提言した。ギルド長が言うことも理解できる。というかアキラにヒカル、他にここにいる全員がギルド長に意見に賛成だろう。だがリンシア女王は
「ギルド長。貴方の言いたいことも理解できますがここは私を信じては下さいませんか。彼女は嘘を言っていないと思うので。」
と言うのでギルド長は
「分かりました。女王を信じましょう。」
と言い引き下がった。後から聞いた事実だがリンシア女王は相手の嘘を見抜くスキルがあるのだという。だから魔王の言葉に嘘はなく本当に謝罪をしているのが分かったのだろう。
「私たちのことを疑って当然なのに信じてくれてありがとう。」
魔王もこんなにあっさり信じてもらえるとは思わなかったのだろう。少し驚いていた。恐らく信じてもらえるまで何回でもくるつもりだったのだろう。
「詳しい話は中で行いましょう。どうぞお入り下さい。」
こうしてリンシア女王が魔王たちを城の中へ招き入れた。
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