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第一章
第一章
Sはインターネットで生ハムの原木を調べ、初めて原木とはどんな物なのかを知った。
原木とは塩漬けされた豚の足で、生ハムとして薄く切り出す前の物だった。
熟成により水分が抜け、木のように見えるから原木と呼ばれると言う。
一般家庭において原木一本を消費するのは、普通一ヶ月から三ヶ月。
生ハムは元来、保存食で、正しく常温保存すれば、食べながらでも一年以上保つ。
Sは、家の者に自分が調べたホームページを資料として見せ、交渉した。
原木を買うのは、家の者の了解なしには厳禁だ。
家の者は、一ヶ月以上ずっと原木、即ち生肉が家に置かれっ放しになることを理由に、難を示した。
これこそが原木を買う、最初の難関なのだ。
しかし、家の者は、何を言ってもSが買うことを分かっていたようで、最後に渋々了解した。
Sは次の行動に移った。