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第十七章

  第十七章



 Sは最後に残った膝下の骨を、鍋に入れた。


 茹でこぼしを三回行い、砕けて飛び散らぬよう骨を袋に入れて、金槌を振った。


 しかし、膝下の骨は折れなかった。


 何度、金槌で叩こうが、食べられずに残っていた皮や肉、腱が、金槌の力を跳ね返した。


 骨をノミで割ろうと試みたが、刃こぼれするばかりだった。


 Sは諦め、そのまま茹でる事にした。


 ストーブで茹でる事、三日。


 真っ白な濃厚出汁が出来た。


 冷えるとぷるぷるに固まる、コラーゲンの塊だった。


 味は相変わらず骨くさいというか独特の味がしたが、水で薄めて味付けをすれば、その味は消えた。


 Sはその出汁を取った後、骨を触ってみた。


 腱も、肉もほろほろと取れていった。


 骨を金槌で叩くと、あっさりと砕けた。


 Sはもう一度、その骨で出汁を取った。


 合わせて一か月分くらいはありそうな、豚骨出汁が出来た。


 最後まで食べ尽くす事は、供養でもある。


 Sは自分に課した言葉を、ぐっと噛みしめた。

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