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第十三章
第十三章
取れる肉は、全て切り取った。
それでも原木の攻略は、終わらなかった。
皮だ。
Sは今まで切り取った皮と脂は、別にして冷凍していた。
原木を買ってから、ほぼ三ヶ月。
誕生会で切り取った皮に、冷凍のニオイが付き始めてもおかしくない。
この期間で原木から肉がなくなったのは、丁度良かったとも言えた。
Sは、冷凍庫から皮を四、五枚出すと、たっぷりの水を入れ、ゆで始めた。
弱火でじっくりと時間をかける。
湧き出てくる脂分は、すくって捨てる。
これらのことも「おいしい生ハムの食べ方」冊子に書いてあった。
途中火を止めたりして、計三、四時間ほど煮た。
少し生ハムのニオイのする、出汁が取れた。
そこにコンソメと胡椒、スパイスを入れて味を整え、最後に薬味のネギを入れると、味わいの濃い美味しいスープが出来た。
ゆでた皮は捨ててしまったが、一枚だけ小さいものをSは口にしてみた。
クニクニっとしたやわらかい弾力食感だった。
世間には、豚皮揚げと言うものもある。
次は出汁を取った後、その皮を炒めてみようとSは思った。