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第十一章
第十一章
足首とは反対の付け根側にも、少し肉が残っていた。
そこにある薄い肉には脂の層がなく、代わりに、乾燥を防ぐためのマンテカ油というものが塗ってあった。
この油は、足を切り、血抜きをした後で塗られるもので、食用ではない。
剥ぎ取った肉から、このマンテカ油が塗られていた部分を切り捨てると、肉の厚みは三、四ミリ程度しか残らなかった。
しかも肉の乾燥は進んでいる。
硬くなりすぎた生ハムは食べにくい。
これにも「おいしい生ハムの食べ方」冊子の知恵を借りた。
硬くなった生ハムは、スープに入れると水分を含んで食べやすくなる。
Sは細かく刻み、コンソメスープに入れた。
硬かった生ハムは、噛みごたえと言うアクセントになり、その香りも噛むほどに口に広がった。