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大同盟の交流・・(22)大会2日目 ユフロVS二コラ

隔絶した戦いの始まりです

 いよいよ第二試合の開始だ。


 観客も全員闘技場に戻ってきており、中には<イグイム王国>のお酒や<ラーム王国>の果汁を絞ったジュース、そして俺のお気に入り<ミューラ王国>のトウモロコシを購入して戻ってきている人も多数いる。

 完全な娯楽状態になっており、試合の回数が増すごとに興奮も増している。


 もう試合が始まるので、ステージにはユフロと二コラが立っており、両者共に気合十分に見える。

 相変わらずの美人VS美男子だ。


 幻獣であるユフロは何も持っていないが、足元に砂の山が幾つもできている。彼女の攻撃魔法は<土魔法>と<風魔法>なので、魔法に使用する為に準備しているのだろうか。


 もちろんさっきの試合で、この闘技場の床でさえも彼らは破壊できることが証明できているので、この床の上でも普通に<土魔法>を使えるだろう。もし魔法に使うために準備しているとすると、床を利用すると発動が遅くなるとか、デメリットを打ち消すために準備しているはずだが、どうだろうか?


 一方近衛騎士である二コラは、第一試合のオルドと同じようにドロップの武具を既に展開しており、漆黒の刃で、柄は金色の<剣:聖級>を右手に持っている。


 オルドの場合も、俺の想定を超える武具の性能を引き出していたので、当然同じLvの武具を持っている他の近衛騎士も、機能を上乗せしているだろう。

 また、その情報も、幻獣達は既に知っているか・・または最低でもオルドの試合をみて把握しており、何かしらの対策を打ってくるに違いない。


 きっとユフロも、第一試合のマーニカと同じように、魔方陣を展開する魔法を使えるはずなので、常識を逸した戦いになる。

 

 両者共に、次の次元へ辿り着いた力と力のぶつかり合いになるだろう。


 いよいよ試合開始のドラムがなった。


 両者はゆっくりと距離を取り、互いに向き合うと一礼した。

 ユフロの足元に多数ある砂山は、ユフロの移動と共に付き添うように移動している。


 一礼が終わると互いに構えを取った。


 ユフロも体術系のスキルはないはずだが、努力で身に着けたのだろう。

 一応気になって、<神の権能>を使っているかだけは確かめさせて貰ったが、ユフロは一切使っていない。


 構えは、腰を若干落として左手を顔の前に軽く出し、半身を引き右手は腰の横で握りこぶしを作っている。


 対して二コラは剣を両手で持ち、上段に構えており、お互いにらみ合っている状況だ。


 やがてユフロの足元にある砂の山がユフロの周りで巻きあがり始めた。

 お互いの力の奔流による物か、ユフロの魔法による物かは既に<神の権能>を使っていないのでわからない。

 

 若干二コラが反応したが、まだ開始位置からは動いていない。


 砂が完全にユフロの周りを竜巻のように巻きあがっている。こうなると明らかにユフロが何かを仕掛けているように見える。。


 突然二コラが剣をかなりの速さで振っている。

 よく見ると細かい砂が彼を襲っているようだ。

 この程度なら防御する必要もないとは思うが、彼らは<危険察知>を持っているので、何か重大なダメージを負う可能性がある攻撃なのだろう。


 やがて竜巻が収まると、ユフロの周りには若干小さめの魔方陣が無数に浮遊している。

 この魔法陣、足元にあった砂山のように、ユフロの周りを一定の距離を保ちつつ追随している。


 そのままユフロは<身体強化>で強化しているであろう状態で、二コラに突進した。

 二コラは斬撃で応戦するが、魔方陣が斬撃をはじき返した挙句に、近接する魔法陣がユフロに対して砂の槍で攻撃した。


 普通ならこれで決まりなのだろうが、彼らは残念ながら普通ではない。

 二コラは<転移>を使ってユフロの背後に移動する・・・が、背後の魔方陣に同じように攻撃されて一旦距離を取った。


 ただでさえ鉄壁の防御を誇るユフロに、魔法による防御が加わっているのだ。彼女に攻撃を届かせるのは厳しいか?


 そう思っていると、二コラはまた斬撃をいくつもユフロに向かって飛ばしている。<精霊術>で何かを付与しているのか?はたまた<剣:聖級>の機能の一部か?光の斬撃がユフロを襲う。

 しかし魔方陣に防御されて意味がないのでは??と思っていたが、光の斬撃はたやすく魔方陣を破壊した。

 

 よく見ると、二コラの剣の色が変わっているように見える。

 刃は漆黒だったはずだが、先端が銀色に変色している。きっとさっきの光の斬撃は<剣:聖級>の機能だったのだろう。


 だが、この攻撃もユフロには通じなかった。破壊された魔方陣は5つ程あるが、他の魔方陣がカバーに入った上に、魔方陣が追加されている。


 この防御はどうすれば敗れるのだろうか?


 しかし二コラの光の斬撃もまだ空中を漂ったまま待機している物がある。

 斬撃って待機(まて)できるんだ。おりこうさんだね!初めて知ったよ。


 二コラは追加の斬撃を放つのかと思っていたら、先端の銀色がまた漆黒に戻った。

 この力を使いこなせていないか、クールタイムがあるか、はたまた別の攻撃の為に解除したか?

 

 二コラの光の斬撃は、剣の周りを覆うように集まってきている。

 膨大な力を集めているのか、地震のように闘技場が揺れ始めた。

 試合を重ねるごとに、危険度が増しているのではないだろうか。俺はガジム隊長を信じているので問題ないのだけど・・・

 

 この強大な力を受けるはめになるユフロは、二コラから距離を取り、ステージの端に移動して追加の魔方陣を展開すると共に、自らの体の周りに<風魔法>の防御をかけているようだ。


 更に魔力を体の表面に漂わせ、防御特化種族としての特性も最大限活かそうとしている。


 そして二コラの攻撃を受ける準備が整ったのかと思ったのだが、二コラが突然左右に動いて何かを避け始めた。


 ユフロは独自の防御を完成させると共に、魔方陣を分離させて二コラの近くにも配置して<風魔法>による攻撃を行っているのだ。


 二コラが避けた風魔法は、方向によっては地面を抉り、激しい砂ぼこりを上げている。

 大画面の魔道具のおかげで観客は状況を把握てきているが、相変わらず手加減を一切していない激しい戦いだ。


 二コラが持つ剣はまだ光を纏っているが、多方向からの攻撃で避けきれない物については剣で迎撃している為、纏っている光は徐々に小さくなっている。


 二コラは<転移>で回避することもできるが、このステージのどこに<転移>してもユフロの魔方陣から逃れることはできないと、<危険察知>のスキルで解ってしまっているのだろう。


 やがて二コラの持つ剣を覆っていた光は完全に消えてしまったが、何やら呪文のような物を口にしている。きっと<精霊術>だ。


 二コラが何かを唱え終わると、さっきまでとは違う色の光が剣だけではなく、二コラ自身も含めて覆い始めた。


 更に剣の先端が再び銀色に光り輝くと、軽く剣を振って、再び無数の光の斬撃を自身の周りに待機させている。


 つまり、<精霊術>による光と、<剣:聖級>の機能による2種類の光を出しているのだ。


 ユフロは継続的に魔方陣を制御して、二コラに対して<風魔法>を使用し続けている。

 だが、体に纏っている光・・<精霊術>の光によってダメージを受けていない。そして二コラは空中に漂っている光をさっきと同じように剣先に集め、更に<炎魔法>を使い剣に炎も纏わせている。


 おそらくあらゆる攻撃手段を一気に出さないと、ユフロの防御は破れないと判断しての対応だ。


 そして炎と先端に強烈な光を纏った剣をユフロに向かって投擲した。

 この剣はドロップの武具であり、たとえ所持者の手元を離れても腕輪の状態に戻して装備することにより、手元に戻すことができる。


 この緊迫した場面で、まさか剣を投げるとは思っていなかったユフロは一般には分からない程度に反応が遅れる。


 そして二人の直線状にある、防御に使うつもりであったであろう魔方陣10個はあっという間に破壊されてしまった。

 二コラの攻撃力の高まりに対応するため、防御用の魔方陣を更に展開していたユフロだったが、一瞬の反応の遅れにより二コラとの間に配置するのが遅れてしまったのだ。


 そして、防御用の魔方陣を破壊した剣はユフロの右腕にダメージを与えた。

 種族的に防御特化型であるユフロ・・スキル無しでも他の幻獣と比べてダメージを与えるのが非常に難しい彼女に対してダメージを与えた・・・この目で見ても、すぐには信じられない。


 その剣は闘技場の床に刺さり、床を激しく破壊している最中に二コラの腕輪として復元され、すぐさま二コラの手に剣として表れている。


 こうなると、これからは暫く二コラのターンか?

 

 だが、ユフロは何とその傷を一切気にするそぶりもなく、魔方陣を追加している。

 実は、彼女は攻撃を受けている最中も魔方陣を追加していた。これは、既に二コラの攻撃を防ぐのは手遅れだと瞬時に判断し、反撃を大きくするために考えた動きなのだろう。


 そして二コラが剣を手元に再度顕現させたときには、既に二コラは魔方陣に完全に包囲されている。


 <転移>対策なのだろうか、包囲している以外の魔方陣も無数にある。


 そして最早二コラの姿が見えない程の魔方陣から攻撃がなされたようで、爆音だけが響いている。


 やがて二コラを囲っていた魔方陣が消失し、二コラはユフロとは比較にならない程のダメージを負っていた。

 だが、あのような密閉状態の全方位からの苛烈な攻撃を受けて、あの程度とは・・・

 二コラの体や剣の周りには既に光はなく、この状態でユフロと戦闘を継続するのは厳しいのではないだろうか・・・と思ったが、彼の目にはまだ闘志が宿っている。

 

 また<精霊術>の呪文を唱えているのだろう、さっきよりはかなり小さいが、光を纏った二コラ。徐々にダメージが回復しているように見える。

 だが、ユフロがこの隙を見逃すほど甘くはない。

 

 瞬時に肉薄し、正拳突の格好で拳を放った。彼女の拳は若干鱗?のような形をしており、彼女の種族である亀鋼の力を使って硬化しているのだろう。


 二コラはダメージが回復していない状態であり、ステージの端まで飛ばされた。


 その時点で何故かユフロの勝利宣言がカードと画面の魔道具からなされた。

 

 全員???となっている。ユフロ以外だが・・・


 対戦相手である二コラも良くわかっていない状態だ。

 

 そう思っていると、突然二コラが経っているステージの端が崩れてただの砂に変わった。


 そういう事か!!ユフロはステージの外側に、疑似的なステージを<土魔法>で作っていたのだ。

 当然その疑似的なステージは場外扱いになる為、今のような極限の状態では二コラにこの罠を見破ることはできないだろう。


 観客的には少し納得のいかない結果かもしれないが、当然二コラに奥の手がなければ、ユフロのこれ以上の攻撃を耐えることはできなかっただろうから俺としては、この落としどころで良いとは思う・・


 実際二コラは場外扱いの場所にいる為か、傷があっという間に治ってはいるのだが、悔やんでいる顔は一切していないからね。

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