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大同盟の交流・・(18)大会2日目 人族VSウェイン

制限有本戦一日目が終了します。

 いよいよ今日の、上限有りの本戦最終戦である第四試合が開始される。

 出場者は<ラーム王国>人族と、我が<アルダ王国>双鬼・・ウェインだ。


 この人族は、既に本戦で勝利を収めているドワーフ族と同じ予選を勝ち抜いた力技タイプだったはずだ。


 もちろん見かけも、力技タイプを証明するかのように鍛え上げられた体をしている。

 予選では斧を持っていたが、彼も他の出場者と同じように力を温存していたらしく、斧は背中に背負ったまま、左右の手に短剣を握っている。

 右手の剣は金色、左手の剣は銀色だ。彼の斧もそうだが、剣からもなんとも言えない感じがするので、かなりの武器なのは間違いないだろう。


 対するウェインは、顔は布で覆われれいるために表情は伺い知る事はできないが、相当警戒しているようで、何と準決勝を待たずに武器を持ちだした。


 ウェインの持つ武器は基本的には暗器と呼ばれる、あまり外からは認識されない武器を好んで使う。ウェイン曰く、【諜報部隊】の嗜みだそうだ。

 ・・なんだそりゃ??


 まあ良い。<神の権能>を使っていない俺でも、暗器を複数使える状態にしているのがわかるので、対戦相手の人族もその辺りは気配で察知しているだろう。


 それ程の相手か、この人族は・・・

 この世界にも、種族にかかわらず強者がいるもんだ。

 制限無しでの試合であれば、ウェインも暗器など出さずに瞬殺できるだろうが、同じ土俵にいる以上、警戒をしているのだろう。


 ここまでの状況になると、否が応でも素晴らしい試合になる事を期待してしまう。あのウェインがここまで警戒を露わにしているんだぞ!!


 神獣達も少し以外だったようで、


 「ウェインかなり本気じゃない?あの人族、かなりできるわね。」

 「そうですね、ソラの言う通りかなりの使い手の様ですね。」

 「やっぱりシロとソラもそう思うんだ。ジンとモモも同じ?」


 「ああ、俺もかなりの使い手に見えてるよ。ウェインが警戒しているのもわかる。良い試合になりそうだ。」


 「ご主人様の仰る通り、ウェインはかなり警戒していますね。」


 そして、試合開始のドラムがなった。


 瞬間、人族は短剣を自分の目の前で交差した。

 周りには攻撃の前準備に移ったのだろう。


 しかし、「ギィーン」とう激しい音がして人族が後ろに軽く飛ばされたのを見て、攻撃を受けたのだと理解したようだ。


 魔道具の大型画面には、今の状況が画面の半分を使用してスローで即再生されている。もちろん残りの半分は試合をそのまま映している状況だ。

 流石のガジム隊長。


 しかしこの人族も凄まじい。

 

 ステータスの制限があるにしても、本気のウェインの攻撃を止めた。

 そして、場外まで飛ばされるのではなく、軽く飛ばされただけだ。

 かなりの地力を持つ使い手だ。正直<B:中級>の制限がある状態でこの動きができるなら、制限がない場合は<A:上級>かそれ以上のステータスを持っていそうだな。


 初撃を防がれたウェインは動揺するでもなく、既に防がれる事を前提に、次の攻撃の流れに入っている。


 一旦距離を取りつつ人族の周りを周回し、全方位から<空間魔法>から取り出している短剣を連続で投げている。

 正に人族を中心としてドーム状に隙間なく短剣があるのだ。


 これを見ても人族は動じていない。

 短剣をすかさず腰のベルトにあるホルダーにしまうと、斧を取り出して一閃した。


 斧は赤く輝き、何やら特殊機能を使っているように見える。

 斧が振られた方向の短剣が一気に焼失し、人族は悠々とその隙間から短剣の雨から脱出した。

 

 あの斧は、炎系の魔道具らしいな。ウェインの短剣を一気に焼失させるとは、なかなかの業物だ。力をもつ武具に使われているわけではなく、武具を十分に使いこなしている。


 だが、脱出した人族の足元の影からまた短剣が人族を襲った。

 

 人族は、この闘技場自体がかなりレベルの高い物であり、地面自体には細工はできず、<土魔法>などは使用できないだろうという推測をしていたようだ。これは実際には正しいのだが・・。


 更に前の戦いで、この闘技場の床面がドワーフ族の大槌による攻撃でも破壊されなかった試合を見ている。


 この二つから、下からの攻撃を考えていなかったのだろう。

 回避が遅れ、足に若干ダメージを負いながらその場を離脱した。


 ただ、このダメージが良くなかった。ウェインが放つ武器がただの武器であるわけがない。武器には何らかの動きを侵食する薬剤が塗布されていたようで、ダメージを負った箇所から徐々にではあるが、人族の動きは悪くなっている。


 そもそもウェインの攻撃が絶え間なく行われているので、人族は反撃のタイミングがなく、防戦一方になっているのだ。


 ウェインも、一撃必殺の攻撃は万が一の隙を生む可能性がある為、手数で攻める選択をしている。

 この戦法も人族にとっては不利になっており、逆転の一手が打てないのだ。


 流石はウェイン。油断なく、状況に応じた最適な行動を行っている。

 こうなってくると、人族は隠している力を全て出し切って反撃するほか手はないだろう。ただ、その奥の手が発動に時間がかかる物であれば、このままの状態を抜け出すことはできない。


 人族は徐々に場外の位置に追い詰められている。

 両手には相変わらず金と銀の短剣を握り、必死に防戦を行っているのだ。


 徐々にダメージが深くなっても、致命的な一撃を受けない辺りは素晴らしい身体能力であると言える。


 ウェインの攻撃が更に苛烈になってきたとき、人族に動きがあった。

 なんと一瞬の隙をついて、金と銀の短剣で自分の足を刺したのだ・・


 おいおい、何やってるんだ?と思ったが、あっという間に人族は何故かウェインの近くに現れた。

 人族の足を確認すると、ウェインの攻撃による傷はあるが、さっき短剣を刺したはずの位置には傷はなく、短剣の模様が足に描かれているように見える。


 これは・・・短剣による何かの付与・・・そうだな、刺した箇所の爆発的強化か何かだろうか?今回は足なので、脚力を大幅に上げることによりウェインの近くに移動したか??


 方法はさておき、ウェインの近くに人族が瞬時に移動して、短剣が無くなったことにより空いた両手で、赤く光っている斧を握り、既に振りかぶっている。

 

 これが人族の奥の手か?

 確かに普通であれば、これで余裕で逆転することができるだろう。

 但し、相手がウェインでなければだが。

 

 ウェインはまもなく確実に勝てるその瞬間でも、決して油断はしない。

 そこから考えられる反撃を想定して、対処できるようにしながら攻撃しているのだ。

 

 実は、俺も上限有りの試合の話を聞いてから、こっそりウェインのトレーニングの一環として同じ制限有の状態で模擬戦を実施したことがある。


 結果は・・・コテンパンにやられた。ウェインは明らかに手加減をしているにもかかわらずだ。


 そんなウェインが負ける所など想定できるわけがない。

 きっと俺の<神の権能>を使用した状態と、ウェインの制限有の状態でも何気に良い戦いになってしまうのではないだろうか・・・


 思った通り、ウェインに焦った様子は見られない。

 何やら両掌を合わせた後に左右に広げた。人族の斧は、ウェインを頭上から胴体に向かって切り裂くように振り下ろされているが、ウェインに当たることなく途中で止まってしまった。


 止まった時に何やら火花?のようなものが見えたが、そこは丁度ウェインが手を広げた場所だ。

 どうなったんだ、ガジム隊長!!


 と思ったら、俺の期待に応えたのか大型魔道具にスロー表示がされた。

 ウェインの手から小さい無数の糸のようなものが出ていて、手を広げることによりその色の両端は空中にとどまっている。きっと糸の両端は<空間魔法>て固定しているのだろう。


 人族はその見えない糸に攻撃を阻まれてしまったのだ。

 ガジム隊長の技術で魔道具上は可視化されているが、今、なんのスキルもなしに闘技場を見ても何も見えない。


 人族は今の攻撃が最後の力を振り絞った攻撃だったのか、その場で座り込んでしまい、武器を放して両手を上げている。


 ウェインの勝利だ。


 会場から凄まじい歓声が聞こえる。

 俺もかなり興奮した・・・本当にお互いを高めあう素晴らしい戦いだ。


 「モモ、予想通りウェインが勝ったけど、あの人族ありえないほどの練度だ。この大会が終わったら少し話をしてみたいな。」


 「そうですね。私も同じステータス制限をかけられていたら、勝利できるかわからない程の強さでした。ですが、流石は我らが【諜報部隊】の隊長ですね。その強さをも上回る力をこの試合で見せつけてくれました。」


 その通りだ。他の神獣も頷いている。今日の夜はウェインの祝勝会?

 いや、彼は生真面目だから、相変わらず新人隊員の面倒を見に行くだろうな。


 よし、これからは【技術開発部隊】が全力を出す時がやってきた。


 そう、制限無しの無法地帯。荒れ狂う力の奔流をどのように観客に届かせないようにするか、大きな破壊を伴うステージをどのように瞬時に修復するか、そして勝敗が決まる時には、きっとありえないダメージを受けている出場者を即回復する手腕が問われる。


 がんばれガジム隊長!! 出場者はほどほどにな・・


お読みいただきありがとうございました。

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