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大同盟の交流・・(14)大会2日目 龍人族VSドワーフ族

いよいよ本戦開始です。

 いよいよ本戦第一試合が始まる。


 ステージには<フラウス王国>の龍人族と<ゴルデア王国>ドワーフ族が既に上がっており、ある程度距離を取って開始の合図を待っている。


 勝敗は何れかが動けなくなるか、致命傷に近い傷を負う、負けを認めるか、または場外に出た時点で負けとなる。


 龍人族は手に黒っぽい剣を持っている。予選とは違う武器を使うようだ。

 一方ドワーフ族も斧ではなく大槌を手にしている。


 両者共に予選と異なる戦い方を選択した。きっと予選は通過する自信があり、手の内を見せないようにしていたのだろう。とすると、第一試合から見ごたえのある試合になりそうだ。


 【技術開発部隊】の改善されたステージの状態と配信がどのようになっているのかも気になる。


 そして、いよいよ試合開始の合図である。大きなドラムの音がしたのだ。


 両者共に武器を中段に構えて様子見をしている。

 だが、少しづず、本当に少しだが両者の間隔は狭まっているのがわかる。

 

 やがて一般の観客にもわかるほど両者が近接した時に、ドワーフ族は地面をなめるように下から上に大槌を振るった。

 それを龍人族は剣で受けるのではなく大きく避けた。

 

 ドワーフ族は首を傾けて足で石畳を軽く蹴っている。

 きっとあの大槌で地面を少し破壊して目くらましをし、そのまま攻撃する予定だったのだろう。


 だが残念、そのステージはガジム隊長率いる【技術開発部隊】の特製品なので、制限無しの連中が本気で破壊しに行かないと少しの傷もつけることができない。


 なので、<B:中級>の制限では地面を掃き掃除した程度にしかならないのだ。

 同じように感じたであろう龍人族も剣で、地面を軽くこすっていた。

 彼が大きくドワーフ族の攻撃を回避したのは、石礫が飛んでくると思っての事なのだろう。 


 ドワーフ族は技術に優れている種族なので、その辺りは瞬時に理解しているはずだ。そして、高い戦闘能力を持っているであろう龍人族も同じ状態にある。そうでなければ、わざわざ剣で地面をこすって確認する意味がないからな。


 その後、先ずはドワーフ族が闘技場を使用する攻撃は辞めて、力と技を織り交ぜた連続攻撃を始めた。


 対して龍人族は巧みな体術で大槌を避けているが、如何せん相手の獲物が大きい為、いくつか防御する必要が出て来ている。その時に手に持っている黒い剣で受けるのだが、力が違うのか押されている。


 そのままステージ端まで追いやられて決着がつくかと思ったのだが、ドワーフ族が最後の一振りを放った瞬間に<影魔法>でステージ中央に移動し、背後からドワーフ族に攻撃をしようと突進した。


 最後の追撃として力を入れていたドワーフ族は、攻撃対象が突然いなくなり若干バランスを崩している。


 しかし、強引にそのまま大槌を地面にたたきつけ、その反動で跳ね返った大槌を利用して、龍人族の背後からの攻撃を防いでしまった。まるで背後に目がついているかのように・・・


 第一戦から素晴らしい戦いだ。

 制限をかけているにもかかわらず、レベルの高い戦いを披露している。

 

 観客も大盛り上がりだ。

 

 ここまでのダメージは龍人族の方が多いだろう。

 スタミナもドワーフ族の方があるように見えるが・・・

 もちろん俺達は<神の権能>は一切使用しておらず、一般の観客と同じように楽しんでいる。


 でも地力が高いので、普通の人よりは状況が良くわかってしまうのだ。

 これはしょうがないな。


 二人は再度向き合い、今度は間髪入れずに龍人族が黒い剣で連撃を放っている。

 そしてその連撃の合間に刀を持っていない方の手から<炎魔法>を出しているのだ。これは隙のない戦い方だ。

 

 大槌で防御をしていたドワーフ族も、この変則的な攻撃では全てを防御するのは無理だと判断したらしく、龍人族の刀を大きく弾いた。


 当然大きく弾くために、若干大槌が大降りになってしまっている。

 その隙に龍人族はがら空きになった脇腹に蹴りを入れ、ドワーフ族を大きく吹き飛ばした。


 ドワーフ族は吹き飛ばされながらも場外には落ちずに、大槌を握りなおして龍人族に向きあっている。

 種族的に打たれ強いのだろうか、かなりいい感じに入ったように見えたのだが。若しくは何か防御系の魔道具を使用しているのか・・



 龍人族も、ダメージを受けた様子を見せないドワーフ族に若干戸惑っていたが、すぐに気持ちを切り替えて剣を両手で握りなおした。


 そして、手を左右に広げると・・・黒い剣は二本に分かれ、左右の手に一本ずつ握られていた。

 このままではドワーフ族にダメージを与えられないと判断し、次の一手を出してきたのだろう。


 この本戦においても、次の戦いの為に自らの手の内は隠しながら戦っているのだ。しかし、相手によっては次の手を出さなくてはいけない状況になる。


 対してドワーフ族は、今までと変わらずに大槌を構えたまま龍人族に向かっている。この自信は、不思議な防御力に裏打されているのだろうか。またはこれ以上の奥の手はないのか・・・


 今度はお互い互角に攻撃し、避け、いなし、を繰り返している。

 そして、龍人族が一瞬後ろに下がり自らの剣を交差した瞬間に剣が発光し、目くらましをした。

 そして発光と同時にドワーフ族に切りつけたのだが・・・なんどドワーフ族の目の前で龍人族が倒れた。


 ・・・と普通の観客には見えただろう。


 実はドワーフ族は相手が剣を発光させたと同時に自らの大槌から雷魔法を放ったのだ。


 そしてそれを受けた龍人族はドワーフ族に向かっている最中に、雷魔法を被弾して倒れてしまった・・と言うわけだ。


 勝敗は決したが、観客は驚きを隠せていなかった。

 観客はなぜ龍人族が倒れているのか理解できていないからだ。


 だが俺は、違う事で驚きを隠せなかった。

 なんとさっきの出来事が、画像を映し出す大型の魔道具でゆっくりと再生されたのだ。


 もちろん倒れた龍人族はステージ外に運び出された瞬間に、完全回復しており、ドワーフ族と健闘を称えあっていた。


 この回復技術もすごい。


 観客は自分の理解の範疇を超えているのか、このあたりには驚いていないようだ。ただただ素晴らしい戦いに惜しみない拍手を送っていた。


 「モモ、シロ、トーカ、ソラ、今の試合どうだった?」


 「はい、とても見ごたえのある試合でした。両者共に最後に互いを称えあったのも素晴らしかったと思います。」はモモの談。


 「そうだね、私は<神龍>にいたからと言うわけではないけど、龍人族を応援していたんだ。でも負けちゃってちょっと残念かな。」はトーカの談。


 「でも、ガジム隊長の技術が凄すぎます・・と思ったのは私だけでしょうか?」はシロの談。


 「私としては、龍人族がまだ奥の手を持っているように見えたけど・・・」とはソラの談。


 各自それぞれ感想を教えてくれた。


 特にソラ・・実は俺も同じことを考えていた。あれだけ魔法を使用し、おそらく何かしらの力が付与されている剣を使用している。

 にもかかわらず、剣自体の効果については発光しただけでその他は分からないままだ。龍人族はあの目くらましで勝負が決まると思ってしまって次の手を出さなかったのが敗因だな。


 逆にドワーフ族は、龍人族の剣の発光と同時に雷魔法を発動することで雷の視認を防ぎ、タイミングよく被弾させることができた。


 どれだけ自分の持つ力を温存して次の試合に臨むか、どれだけ手の内を晒さずに勝利するか・・・このあたりがこの本戦の勝敗の大きな鍵になっているな。

 

 逆にここを見誤ると、龍人族のように全ての力を出さない状態で敗北することになってしまう。


 この本戦に進んでいる力のある者達は、今の戦いの結果を見て、この位の事は当然気が付いているだろう。

 次の試合からは更にいい試合が見られるに違いない。


 だが、残念なことに次の試合は・・大変申し訳ないが消化試合になる可能性がある。


 と言うのも次の試合は、


  <エフソデア王国>人族  VS  <フラウス王国>獣人族


 になるのだが、<エフソデア王国>人族については、予選時にはウェインの攻撃の順番が一番最後であったために通過できた人なのだ・・・


 ウェインの動きに気を取られていて良く見ていなかったが、確か彼は最後の方、ステージの端の方でボーッと立っていたような気がする。


 だが、ひょっとすると何か力を隠し持っている人なのかもしれない。

 そこに期待して第二試合を見る事にしよう。


 但し、少し休憩時間がある。


 これは観客が興奮しすぎてヒートアップしないようにする為と、【技術開発部隊】によるステージ等のチェックを行う為の時間になっている。


 俺も少し興奮したので、落ち着くために飲み物でも飲んで落ち着くか・・・

 そうして皆と軽い話をしながら第二試合の開始を待った。

お読みいただきありがとうございました。

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