大同盟の交流・・(12)大会1日目 予選
予選通過者と幻獣、近衛の対戦相手が決定するまでのお話です。
いよいよ大会1日目の朝を迎えた。
この日は<B:中級>制限有の予選と、制限無のトーナメントの発表だ。
早速<神狼>の町に皆で転移し、闘技場に向かう。
ところが、祭りのメインイベントともあって人・・人・・人・・。
とてもまともに歩ける状態ではない。
【治安維持部隊】が大声で案内や注意喚起をしている。
「皆さん、既に闘技場の入場については全ての予約が埋まっています。このままここにいても試合を見ることはできませんし、予約をされていない方は闘技場に入ることもできません。<アルダ王国>全ての町の大きな施設で、闘技場の中にいるように見える魔道具を準備していますので、そちらでご覧ください。<転移門>を使用していただければ予選開始にも十分間に合います。」
いや、大変だ。こんなに混んでいるならもう少ししてから出直した方が良いな。
「皆、一旦戻ってもう一度出直そう。」
一旦<魔界森>の塔5階層に戻り、ラムが新たに植えた植物から作った飲み物を皆で飲んだ。
でも飲み物を入れてくれたのはラムじゃない。ラムは王族の護衛中だ。
「ラムさんの作ってくれたこの植物の飲み物、とっても爽やかで美味しいです。フフフフ、こんなにおいしい飲み物をジン様と二人っきりで飲めれば更においしいでしょうね?ウフフフフ。」
なんだか少し黒い?笑顔でユフロが色々言っている。
おいおい、また寒くなってきたぞ。今はウェインも【近衛騎士部隊】もいないんだから勘弁してくれ・・
神獣達は、特に幻獣達に何か言うことはない。
実は昨日の夜神獣達に、
「ご主人様は幻獣達にも慕われていて、私達も嬉しいです。」
とかナントカ言ってくれちゃったんで、幻獣達が俺にアピールしてきても全く問題ないらしい。
いや、ね?神獣達や幻獣達も、これだけはっきりと好意を示してくれれば、いくら俺でも気が付くし・・となると、世にも恐ろしいキャットファイトが繰り広げられるか・・って心配になるじゃない?
前世では考えられなかった贅沢な悩みではあるのだが・・
丁度前世の事を考えたから・・と言うわけではないが、幻獣達の見えないバトルをよそに、俺は神獣達と少しだけ前世の話をしてみた。
前世から考えると、微妙な差ではあるが一番長い付き合いはモモになる。
彼女が最初に我が家に来てくれたんだったな。
「モモ、前世の話になるんだが・・モモからすれば100年も前だから覚えていないかもしれないけど、俺の唯一と言っても良い親友・・斎藤 雄二・・覚えてるか?あいつだけはモモ達がいなくなった後も、最後の最後まで俺の心配をしてくれていたやつなんだ。クラスの皆がいじめの主犯である北野を怖がって見て見ぬふりしたり、虐めに加担している中でもあいつだけは俺の味方だった。そんな俺はもう前世にはいない・・・モモ達もあいつと良く遊んでもらっていたからな。あいつの事だけが前世の心残りだ。」
「ご主人様・・良く覚えていますよ。斎藤様がいらっしゃる時のご主人様はとてもいい笑顔をなさっていましたから・・。斎藤様も芯の通った方なので、きっと大丈夫ですよ!」
そうが、そうだよな。なんでか前世の話なんかしちゃったが、今日からのイベントを楽しもう!!
気が付くと、冷たい空気を出していた幻獣達も心配そうに俺を見ている。
「ゴメンゴメン。変な話しちゃったな。よし、時間もたったしもう一度<神狼>の町に行くか。ウェインは問題なく予選通過するだろうが、皆の組み合わせ・・気になるしね。」
ヒュー・・・・
あれ?俺なんかやっちゃった?また寒くなってきた。
神獣達が俺をそっと抱きしめて温めてくれているが・・・寒いぞ!!
いいや、こんな事をしていてもしょうがない。
「モモ、シロ、トーカ、ソラ、ありがとう。もう大丈夫だよ。今の俺には皆がいてくれるからね!!気を取り直して<神狼>の町に行こう。」
そして改めて<転移>した。
何だかんだ時間は結構過っていたのと、カードで注意喚起がされたようで人は少なくはなっていた。
それでも混んでいるが・・・
<神狼>の各施設でも、魔道具で闘技場での戦いが生配信されるのでこの町から移動しない人達も結構いるようだ。
俺達は・・・申し訳ないけど王族席があるので闘技場で見させてもらう。
若干後ろめたいが・・ごめんなさい。
この闘技場はとの位置からでもステージが良く見えるようにできているが、中でも王族や来賓が座るエリアは特別良い席になっている。
ここに各国の王族、護衛でレイラ、俺の傍に護衛?でラム・・更には神獣達がいる。
幻獣達は、対戦相手を決定する為に会場の方にいる。
まずは予選が行われる。
その後に制限無しに参加する近衛と幻獣の対戦相手の決定、更には闘技場の性能を観客に理解してもらう事と、このトーナメントに参加する幻獣と近衛がどの程度の力があるのか、各人にパフォーマンスをしてもらう事になっている。
【技術開発部隊】は一人残らずこの会場に来ており、各ポイントで今現在もチェックや追加の補強に余念がない。
そこにはもちろん重鎮A、Bもいる。
そうこうしている内に、予選の内容が拡声魔道具とカードの配信を使用して行われた。
ステージに100人の参加者を集めて、何でも有りの戦いを行うらしい。
最後に残った二人・・残らなかったらその組の予選通過は無し・・と言うちょっと厳しい戦いだ。
参加者は500人程いるようなので、そうすると全組みで二人の予選通過があったと考えたら10人になる。
予選後、今日は幻獣、近衛のパフォーマンスも含めて実施される旨案内があり、早速第一回目の予選が開始された。
調べて貰った所、ウェインは最終組にいるらしい。今は11時なので、順当にいけば昼の休憩もあるので・・3時過ぎにはなりそうだ。
一組目は、龍人族っぽい兄弟が残った。普通の観客は分からないだろうが、彼らは策士だ。
混戦の中でなんと<影魔法>を使って陰に潜り、人数が減った時に倒れている人込みの中からシレっと出てきたのだ。確かにスキルLvが中級に制限されても、これだけ人込みがいるので影が十分にあり、魔法の使い方としては絶妙だと言える。
もちろんその状態で残っている者は相当体力を使っており、彼等にかなう訳はない。
ただ、本戦では1対1なので、この技は使えないだろう。どの様な戦いをするか楽しみだ。
ここで、闘技場の性能確認が行われた。
闘技場から自力で降りた者、降りられずに誰かに降ろしてもらう者、戦いの中で場外に落ちた者・・全員怪我も体力も全て元に戻ったのだ・・・
だが、残念なことに武具やら敗れた服やらは戻っていなかった・・・
仕組みがわからないので、【技術開発部隊】のミスなのか、できない事なのかはわからない。しかしこれは<アルダ王国>で補填する必要があるだろう。
父さんも同じことを思っていたらしく、カードにその旨即配信されていた。
そして二組目。
ここで残ったのは、斧を武器とした力自慢の・・ドワーフ族に見える者と、同じく斧を武器とした人族だ。
この二人は別格に強く、ステータスが制限されているにも関わらず、巧みに斧を使用して対戦相手を場外に吹き飛ばしていた。
三組目。
一人は何やら魔道具の袋を持った獣人族の女性。この袋の中身をうまくまき散らし、近くにいる者を操作していた。恐るべし・・・
もう一人は、偶然彼女から離れた場所で戦っていた人族だ。この人族は正直他の予選通過者と比べても力があるようには見えない。
四組目。
ここは何と試合開始直後から、殆どの参加者が<B:中級>の魔法を打ち始めた。組み分けがどのように行われたのかはわからないが、この組は魔法を主とした者に偏っていたようだ。
ステージは、魔法の光や土埃、風や炎などで殆ど見ることができずに、問題なく見える俺達からしても酷い状態だった。ステージが見えるようになった頃には参加者全員が倒れているのが観客にも見えていた・・・
通過者なし!!
もうちょっと作戦とか考えろよ!!普通の観客が見たら、最初の魔法を行使した所は見えたけど、その後は音とか光とかで、見えるようになったら全員ダウン・・・全く見ごたえのない試合になってるだろ??頼むよホント。
最後はウェインのいる五組目だ。
大番狂わせが起きるわけもなく、ウェインは装備すら使用せずに無手で相手を体術のみで、目にもとまらぬ速さで仕留めていた。これでステータスの制限がかかっているんだから凄まじい訓練をしているのだろう。
そしてもう一人・・・これは残念ながら三組目と同じ状況で、ウェインが順番に仕留めて行った最後に残った一人・・・だったのだ。
何れにしても予選通過者は決定した。
通過者の所属国と種族などが闘技場に設置されている大型の表示魔道具と、カード配信で伝えられた。
一組目通過者
<フラウス王国> 龍人族
<フラウス王国> 龍人族
二組目通過者
<ゴルデア王国> ドワーフ族
<ラーム王国> 人族
三組目通過者
<フラウス王国> 獣人族
<イグイム王国> 人族
四組目通過者
なし
五組目通過者
<アルダ王国> 双鬼(幻獣)
<エフソデア王国> 人族
これからよいよ制限無しの対戦相手の決定だ。
参加者が同じように魔道具とカードに表示される。
所属国は<アルダ王国>しかいないので、そこは省略されていた。
と言うよりも、みんな知ってるしね・・
その代わり、得意な戦術・・魔法や武具についての簡単な紹介が追記されている。
この情報があれば、より観戦を楽しむことができるだろう。
ユフロ 亀鋼(幻獣) 魔法
セリア 幻狐(幻獣) 魔法
マーニカ 幻狐(幻獣) 魔法
エレノア 虎幻(幻獣) 魔法
二コラ エルフ 剣術
オルド 魔族 槍術
ハルド 魔族 双剣術
ミーナ 獣人族(猫) 体術
そうか、幻獣達は魔法が主な攻撃手段だから皆同じになっちゃうんだな。
でも、その中でどのような戦い方をするのか楽しみだ。
お読みいただきありがとうございました。




