<シータ王国>との戦闘(4)・・ドルロイの足掻き
<シータ王国>最後の奥の手が少しわかります
ドルロイに場所を教えてもらい、全員で地下迷宮前に移動した。
結果的にはどの地下迷宮も管理者および管理補助者は死亡扱いで不在となっていたのだ。
どうやら今回の遠征で管理者自体も駆り出されたらしい。
これならば話は早い。俺と神獣であっという間に攻略して新たな管理者となり、地下迷宮の機能を停止させて、<神の権能>を使用し、完全に地下迷宮を破壊した。
これを4回繰り返したのだが、あまりの速さにドルロイは宝物庫に続き目を大きく見開いていた。
そして、<シータ王国>での作業は終了し、俺達はドルロイを放置して皆でとりあえず<アルダ王国>に帰還した。
俺はこの時あのクズ・・ドルロイが頭の回転が良かった事に注意を払うのを忘れていた。
急な襲撃だが統率の取れた部隊、そしてとんでもないアイテムを利用して圧倒的な力の差を埋めてきたあいつの頭脳を・・・
初めての戦いが無事終わり、気が緩んでいたのもあるだろうが・・・
俺は、<アルダ王国>王城にて宝物庫の中身を全て出した。
それを見てリンデム王は、
「ダン王、今回我々は何もせず、何も被害にあっておりません。よって、これらの戦利品は貴国が全て納めて下さい。」
「いや、わざわざご足労頂いたのもそうだが、貴国の情報により敵の使用しているアイテムの性能を特定できて勝利への突破口になったと聞いているので、全て我々と言うわけにはいきませんな。」
「でしたら、ノレンドとランドルの<アルダ王国>での勉強期間を伸ばしていただけませんか?」
え”~・・・俺はやだな。それだったら宝物庫の中身を全部、一切合切、差し上げた方が良い!!
「わかりました。お引き受けします。」
と、父さ~ん・・・俺の願いは虚しくも却下された・・・
「では、この宝物庫の財産を利用して大同盟の活性化、交流を深めるための催し等を行いましょう。そうすれば恩恵を同盟国で少しは共有できるでしょう。」
「ご配慮感謝します。では、終戦の連絡は私の方から各国へ入れておきますので、その後の話は落ち着きましたらダン王が招集お願いします。」
そう言って、リンデム王は<フラウス王国>に帰還して行った。
終戦の翌日、<アルダ-フラウス>大同盟の詳細と、今回の<シータ王国>の騒動については、<アルダ王国><フラウス王国>連名にて俺達が国家と認識している40カ国に布告された。
何れはこの40カ国以外の国とも交流を持ってみたいものだが、距離もあるし、文化もどのような物か全くわからない。
そもそもどこにあるかもわからない国もある上、その国が地上にあるかすらも知らない。
前世の記憶から考えると全て地上で生活しているのだが、その常識はこの世界では当てはまらないのだ。
そう考えると、いつかは世界中を家族と観て回りたいな。
おっと、そうだ。万能薬の作りかけ・・・これどうするのかな?
「父さん、この薬の作りかけ・・どうするの?」
「ガジムに調べさせて、手の打ちようがなければ放置だな。」
勘ではあるが、きっと今のガジムのLvでもこの薬の詳細は分からないだろう。
何せ異世界召喚者が作った物・・いや作り途中だが・・次元が違うような気がする。
今の俺でも鑑定できないため、少し諦めの気持ちがあるのだが、あのガジムと、きっとおまけで重鎮Aと重鎮Bがいるので、訳のわからない熱意によって解決してくれるかもしれない。
まぁ様子見だな。
「じゃあ、今日は少し疲れたから先に休ませてもらうね!<魔界森>にいるから。」
「ああ。ジン、そして皆、今日は本当に助かった。ありがとう。リンデム王に言った大同盟間での交流については、後日相談しよう。」
そうして俺は神獣と一緒に<魔界森>の塔5階層にやってきた。
最近は休む時は王城の部屋よりこっちにいることの方が多い。ここからは階段が4つあり、それぞれの階段が4階層のソラ、トーカ、シロ、モモの部屋につながっているんだ。
寝る時は皆5階層の俺の大きなベットに潜り込んでくるのだが、今までもそうだったので、それを見越してかなり大きなベットにした。
なので、寝心地は悪くない。
本来睡眠をしなくとも問題ない俺だが、今日は少々疲れたのでベットに入ると即眠りについてしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
正直、確実に息の根を止められるかと思った。
まさか、王族に伝わる秘薬を使用したアイテムを以てしても大敗するなどとは、思ってもみなかったからだ。
この<シータ王国>国王である我がここまで死を覚悟したのは初めてだ。
やつらの戦力は、軽く<S:帝級>を超えてくるだろうと言う所までは問題なかった。我らはアイテムを使用し<アルダ王国>の戦力を無効にした後、こちらの<S:帝級>で蹂躙する計画だったからだ。
そもそも作戦開始時にやつらの外壁にある門も何かしらの効果が高Lvで付与されているのであろうと踏んでいたので、アイテムを使用して無効化してから投石で破壊できた。
そしてアイテム持ちが侵入してやつらの高Lvの者を無効化した。ここまでは順調だった。
その後、こちらの<S:帝級>が侵入して蹂躙が開始される予定だった。いや、実際に大ダメージを与え始めていたのだが、程なくして空が発光したかと思うと、Lvの高い・・種族は分からないが・・人族ではなさそうな強者の雰囲気がある者が表れた。
そして、あっという間に我らの<S:帝級>部隊が倒されたのだ。
こちらのアイテム部隊は<アルダ王国>と混戦になっており、あの高Lvの者を無効化できる状態ではない。
非常にまずい。ただ、混戦部隊の持っているアイテムの効果もまだ残っているので、何人かが混戦から抜け出せば対処は可能だ。
そう考えていた時、また空が発光した・・と言うよりもあまりの光の強さに一瞬目を覆ってしまった。
そしてその後荒れ狂う風が吹き、上空を見ると・・・明らかに次元の違う・・そう、正に神と言っても良い・・神々しい魔獣が4匹も表れた。
あれはまずい。我が支配していた国家群の総戦力でも、1匹すら倒すこと・・いや傷すらつけることができずに全滅するだろう。
唖然としていると、4匹の中央にいた人族・・見たことがある。<アルダ王国>の次男・・ジン・アルダが何やら魔法を発動し、我が<シータ王国>の<S:帝級>部隊は一瞬で全滅した。
まさに悪夢だ・・・
そして、我はやつらに辺境伯領地と宝物庫の中身を根こそぎ持っていかれることになり、二度と<アルダ王国>そして、その同盟国に手を出さないと誓わされた。
死を覚悟した後に、耐えがたい屈辱的な事態になったのだ。
当然やつらは今回の我の策略に使用した秘薬について聞いてきた。
今後の心配をしたのだろう。同様のアイテム等がないかも聞いてきたのだ。
我でもそうするだろう・・・
やつらはこう聞いてきたのだ。
「この部屋以外に我らに害をなせるようなアイテム、資料などはあるか?」
そして我はこう答えた。
「今この部屋の中にある物が全てだ。」
事前にやつらは、「我の言葉の真偽がわかる」という事を言っていた。
なので、決して嘘はついていない。これは神が我に復讐の機会を与えて下さったのだ。
やつらが言葉の真偽がわかるという情報を我に伝えた事、そして質問の仕方が我に有利な聞き方であった事、全てが偶然ではあるが合致したのだ。
我が<シータ王国>は、召喚に関する5つの伝承がある。
一つ目は、召喚した異世界の人族は隔絶した力を持つが、送還は不可能
二つ目は、その召喚の方法と注意点
三つ目は、一度だけ召喚を実施し、その者に有効なアイテムを2つ作らせた
四つ目は、召喚者は、1つのアイテムは未完成の状態で逃亡し<フラウス王国>を建国した
五つ目は、召喚者が地下迷宮でいくつか有用なアイテムを入手した
である。
当然、作らせたアイテムの内1つは今回使用した物だ。
そして残りの1つも宝物庫の他の財宝と共にやつらに根こそぎ奪われた。
更に、有用なアイテムとは杖と<剣:上級>だ。もうないがな・・
だが、召喚方法については奪われていない。
なぜなら、方法は我の頭に入っており、王族に口伝でのみ伝承されるからだ。これはあまりにも残虐な方法であるから故だが、今回はこれが功を奏した。
その召喚に使用するアイテムは、我が肌身離さず持っている。
つまり、あの質問をされた時に我も部屋にいたのだから、全てあの時、あの瞬間は、あの部屋の中に全てがあったのだ。
しかし、今回の事態で我の権威は失墜し資金もないのだが、この城にはまだ騎士が残っており、<シータ王国>に逆らえない国々もある。
そして、既にある程度は地下迷宮でLvを上げてある各辺境伯の子供、辺境東伯の三男アレン、辺境南伯次男ブゴウ、辺境西伯次女ショリーも今はこの城にいる。
この状況を考えると、我が再起を図るには最後の手を使う他ないだろう。
あまりにも非道な方法であるため、本来は決して実行しないと決めていたのだが・・あの神々しい魔獣を上回る戦力を必要とするならば、そうも言っていられない。
だが、我の足場はもろくも崩れ去っているので、暫くは動けん。
その間、暫しの平和を楽しんでおくと良い!!
そう、つかの間の平和をな・・
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