<シータ王国>との戦闘(1)
戦闘になってしまいました。
俺を除く王族と母さんの護衛担当、近衛騎士のオルドと幻獣のレイラ、そして何らかの理由で移動が遅くなってしまう住民の一時避難が終了した。
王族は<転移>で連れて行き、塔の3階層にいてもらった。
そしてその間に住民を集めて貰い、といっても少々待たされたが、彼等も<転移>で同じ3階層に連れて行った。
その後王城に戻ると魔法防壁の外に光があふれ、<シータ王国>の部隊が表れた・・
いよいよ戦闘開始か・・本当はこんな事はしたくないが、かかる火の粉は振り払わなければならない。
暫定的に指揮官は俺になっているが、防壁はドワーフ族、防壁内部の狙撃はエルフ族、遊撃は獣人族、龍人族、魔族の族長で連携してもらうこととし、俺は単独・・といっても幻獣部隊と神獣、そして近衛騎士達を指揮することとなっている。
当然最高・最大戦力だ。
俺達はあいつらが表れた東門側の防壁上部へ移動した。もちろん全ての門は閉じられており、全員攻撃態勢を整えている。殺気も一切隠していない。
以前はこの状態で<シータ>のやつらはすくんで動けなくなっていたのだが、何か手を打っているのか前線にいる者はなにも感じていないようだ。
『ジン様、前線にいる者は鑑定できていない装備を持っている<A:上級>部隊のようです。報告と一致します。何か策があるようなのでご注意を。』
聞き洩らしがないようにわざわざ<念話>でウェインが報告を入れてくれた。俺は片手を軽く振り、わかった旨を伝えた。
そして、いきなりやつらは弓で防壁に対して攻撃を始めた。
飛んでくる矢に対して<神の権能>を使用して鑑定してみたが、鑑定することができなかったのだ。
「なに?まさか俺がまだ<神の権能>が完全に使用できないからか?」
思わず声に出してしまったが、これに答えたのはモモだ。
「ご主人様、残念ながらあの矢は何か細工がなされています。私の<神の権能>でもうまく鑑定することができません。その他の前線にいる者の装備も同じですね。」
そして、なんとその矢によって防壁の一部が少しではあるが破壊されたのだ・・
「なんだと!!すぐに補修作業と補強強度を上げろ!!」
ガジムが大声を上げて防壁に対する作業を指示している。
これに呼応するように<アルダ王国>側から一斉に攻撃が始まった。
魔法によるもの・・我々の部隊は<A:上級>と<S:帝級>が混在しているため、様々強さの魔法が放たれている。時々<A:上級>では必要となる魔法の詠唱が聞こえる。そしてエルフ部隊による狙撃。
遊撃部隊はまだ魔法防壁内で待機している。もちろん東側以外の警戒の為全てがここに集結しているわけではない。
轟音、爆発が起こり続けるが、その中でも<シータ王国>側から反撃がなされているのだ。
正直想定外だ。この攻撃を受けながら反撃できるとは・・・俺は不安を感じ、父さんに住民の全避難と他国の王への連絡をするように<魔界森>にいる幻獣であるレイラに<念話>で伝えた。
このような状況では契約魔獣の方が力を使わずに伝えることができる為、直接父さんには<念話>をしていない。
この状況が続いていると、ついに魔法防壁を補修している部隊に負傷者が出始めた。
魔法などで遠距離攻撃をしている為、砂塵により視界が悪くなっていること、防壁の補修に気を取られていることから、飛んでくる矢を避けることができなかったのだ。
しかし今の所致命傷の者はいない。Lvが高くて助かった。しかも、そんな状況を見ても皆の士気は一切下がらず、むしろ自ら志願して補修に向かっている状況だ。
負傷者は<光魔法><水魔法>またはポーションで治療されている。
不思議なのは、<シータ王国>の攻撃が「矢」一辺倒であることだ。魔法も使えるはずで、戦闘前に杖を持っている者も確認している。
杖は自らの魔法力を上げる効果があると言われており、魔法使いで間違いないはずだが・・遠距離攻撃の魔法を持っていないか?
と考えていると、投石器?のようなもので門を狙っているようで大きな石が飛んできた。
こんなものでこの門は壊れるわけがないので放置していると、石は門に届かずに手前に落ちて大きな砂を巻き上げた。
視界が悪い中、再度矢を放っているようだ。
「あいつら、こっちに矢がほどんど飛んでこないが、何をしているんだ?」
『ジン様、どうやら門に対して矢を放っているようです。あの石は目くらましと考えると、あの矢には何か仕込まれているはずなので門の破壊をもくろんでいるのでしょう。至急対策が必要です。』
ウェインの言う通りだ。
<念話>を使うときには、召喚魔獣、近衛騎士、神獣全員に聞こえるように指示を出しているため、この情報は伝わっているはずだ。
俺も<念話>で指示を出す。
『既に<シータ>の攻撃を受けてしまっており、補強は間に合わないとして考える。幻獣部隊、即東門の前に集結し迎撃態勢を取れ。近衛部隊は遊撃部隊の族長に連絡し、5割程を東門に即集結させろ。』
指示を出したと同時に轟音が響き、門が破壊されていた。
2回目の投石で破壊されたようだが、投石だけでは破壊どことか傷すらつかないので、やはりあの矢に何か仕掛けがあるようだ。
召喚魔獣、近衛騎士、神獣全員に、
『やはり鑑定が効かない<A:上級>部隊が持っている装備は何か仕掛けがある。こんなに簡単に防壁が機能しなくなるとは異常だ。あの装備の攻撃には気を付けろ。』
注意を促し、全体の状況を確認するべく一度飛翔し空から確認をすることにした。
上空から観察する限りでは、<シータ王国>は東門に全ての部隊を集結しているようだ。
<神の権能>を使用して確認したのだが、この<神の権能>でも鑑定できない装備がある以上過信は禁物だ。
ついでと言っては何だが、門に続いて侵入しようとしている後続部隊に<神雷>を食らわせてやろう。
何人かがこちらを見て騒いでいるが知るか!!
そして<神雷>を放つと一瞬辺りが真っ白になり轟音が響き渡った。
その後、下を見下ろして愕然とした。
なんと、<シータ王国>の部隊が生存したままなのだ。正直手加減はしていない全力の<神の権能>を使用した<神雷>だぞ!!
よく見ると、鑑定不能の盾を持った者たちが防いだようだ。
何やら震えているようには見えるが、本来の威力であれば塵も残らないはずの攻撃をぱっと見、無傷で耐えているのだ。
<神雷>の余波で怪我をしている者もいるが、全て致命傷ではなさそうだ。
最早あの鑑定不能の装備は高Lvの魔道具であることは間違いない。
『皆聞いてくれ、今全力の<神雷>を放ったが、鑑定不能の盾を装備した者に阻まれた。軽いダメージは見られるが部隊としての機能を損なう程のダメージは与えられていない。彼等が持つ装備については最大限の警戒が必要だ。やつらが放つ攻撃は高Lvの俺達にも容易に届くとして対処しろ。決して攻撃を受けるな。』
そうしているうちに、後続部隊にも門の中に入られてしまった。
東門に行くと、幻獣部隊、近衛部隊、集結した防衛部隊の一部が<シータ王国>の部隊と交戦していた。
こちらのLvの高い攻撃は、全て盾で受けられている。
各部族の遊撃部隊とミーナの攻撃のみ通用しているように見える。
しかし、ミーナの攻撃を受けた者は盾もろとも吹っ飛ばされているが、それだけだ。非常にまずい。そもそもミーナの攻撃を直接受けたら盾もろとも爆散するのが普通だ。
力技で門の入口付近以降の侵入は防げているが、こちらの技が大きなダメージを与えられていないのも事実だ。
そんな中、
「フハハハ、<シータ>のクソ共、俺様の魔道具攻撃を食らえ!!」
「あ~?俺の方がダメージを与えられるに決まっている。こちらも食らえ!!」
そう、重鎮A、Bが魔道具を使用して豪快に参戦してきた。
何故か彼らの魔道具による攻撃は、<シータ王国>の鑑定不能魔道具を持っている連中にも大きなダメージを与えているのだ。
いや、重鎮Aの魔道具は、相手の五感を2つ奪う物なので、見た目のダメージは無いが、この乱戦状態ではかなり効果が出ている。
そして、重鎮Bの爆風は俺の<神雷>と比較にならないほどダメージを与えているのだ・・・
理由はさておき、この二人のおかげで戦況は若干<アルダ王国>が有利になっている。
なので、お礼として名前もわかるようにしてやったぞ。A、B!!
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