カードの完成と<シータ王国>の出撃
大同盟で使用できる便利グッズをつくります。
開墾作業も一段落して、一部の国民は新国土に居を構えて移住した。
新国土で得ることができる食料については、商業ギルドが管理していくことで正式に決定した。
<フラウス王国>に続く道は完全に整備され、所々小さな町のような休憩所が設けられている。もちろんここにも移住者がおり、宿泊系の商いと、作物の管理等を行っている。
そして、ついにガジムが返ってきた。残念ながら重鎮A、Bも一緒だ。
あいつらはまた怪我をしているが、どうせ<フラウス王国>の残りの重鎮と喧嘩でもしたのだろう。
ガジム達の作成したカードは、
・偽装や他人が使用することはできない
・本人の身分証明書に使用できる
・犯罪歴は非表示にできないが、犯罪に応じた一定期間が過ぎれば非表示可能
・ステータスを表示できるが上限は<S:帝級>まで
<S:帝級>以上も<S:帝級>表示となる
・<スキル>やLvは非表示にできる
・冒険者、商人はこのカードに表示され、非表示にはできない
・同盟国出入国時にこのカードが必要で、全て国で管理できる
・国民以外の入国者は仮カードを発行し管理する
・貨幣は冒険者または商業ギルドで預金しておけばカードでの決済が可能
・国からの緊急連絡がカードを通して通知される
各人のLvやスキルは、本人の魔力を利用してカードが使用できるようになっているので、その魔力から読み取るようにしたとの事。
但し、Lvの具体的な数値については微細な魔力では誤差が大きいことから表示対象としていない。と素晴らしい出来栄えだった。
唯一の難点は、このカードを作成するために必要な素材だ。
<SS:聖級>の魔獣の素材が大量に必要とのことで、4大地下迷宮で幻獣部隊に取りに行ってもらおう。
この報告を<フラウス王国>はもちろん既に知っているためその他の6カ国、<ゴルデア王国><ラーム王国><イグイム王国><ミューラ王国><ベネチカット王国><エフソデア王国>に連絡した。
カード発行機器は国民用に冒険者ギルト、商業ギルト、入国者用に入国門、それぞれ各国3つ以上が必要になるので、こちらも素材が揃い次第<フラウス王国>で作成し配布するとの事。
国民は、冒険者ギルドまたは商業ギルドにてカード発行申請を行い、それぞれのギルドの登録情報が王族が管理する統括機関に送られる仕組みになっている。
このシステムが稼働すると、両ギルドは本来の業務ができなくなる恐れがあり、初期の段階のみ王城に勤務する者が出張所を開設して対応することにした。
もちろんこの魔道具関連の作成方法などは、主軸同盟国である<アルダ王国>にも開示される。というよりもガジムが知っているので、必要に応じてこちらでも作成しよう。
他の同盟国にも開示しようとしたが、開示されてもどの道理解できない・・とのことで不要だと言われたらしい。
着々と大同盟の中でのシステムが出来上がり、今まで迫害?を受けてきた5カ国も<アルダ王国>や<フラウス王国>、そして<ゴルデア王国>との公平な交易や人の移動により活力を取り戻している。素晴らしい。
各国の生活環境の違いや文化の違いがあるので、このあたりに対応するため両ギルドでは人材を各国から採用しているし、当然異動もある。
最終的な目標は、ある意味この8カ国が異文化を持つ一つの国家のようになればいいだろう。
そしてカード関連の魔道具を作成するための素材が、幻獣部隊によりあっという間に揃えられ、両ギルドの預金関連のシステムも8カ国共通で整った。
例えば、商いを営む者は必ず商業ギルドに登録し、カードの金銭処理ができる魔道具を得る必要がある。
その魔道具を使用してカードを顧客から受け取った商人は決済を行うのだ。
そして、基本的な税収としてはこの両ギルドから収められることになる。
入国関係では、非表示にできている犯罪情報も表示できる読み取り機が準備されているため、場合よっては入国拒否もあり得る。
もちろん、新規入国者を装っても個人の魔力から情報を読み取るので、一度でもカードを作った物は、情報を隠蔽することはできないシステムになっている。
このカードシステムは大同盟8カ国のみ有効ではあるが、非常に使い勝手が良い。
今後同盟に加わる国が出てきたら活用してもらいたいものだ。
そして、8カ国全国民にこのシステムを事前告知していよいよカード運用開始を行う日がやってきた。
普段王城勤務の者、そして両ギルドからも補助者が出て、各地で出張所を開設、カード受け取り業務を実施している。
基本的に初回カード発行は無料だが、再発行は残念ながら有料だ。
新規入国者に関しては、有料で仮カードを発行するが出国時にカード返却と共に返金する。この仮カードで預金を行っていた場合、出国時に全てその場で現金が返金される親切設計だ。
もちろん、金銭を出入国管理場所で少々多めに保管する必要があるので、安全には注意している。この金銭は大同盟内だけではなくこの世界共通だからね。
この<アルダ王国>や<フラウス王国>ではありえないと思うが、既に国内に間者が紛れ込んでいる国もあるはずで、そのようなものはカードの申請を行わないだろう。
しかし、カードを作成しなかった者は買い物もできなくなるし、もちろん出国もできなくなるので、申請しない者はいないだろうし、きっと間者はこのカードシステムを事前告知した段階で、身の安全を確保するために各同盟国を出国しているはずだ。
カード申請所は一週間ほど大混雑だったが、やがて落ち着き始めたので出張所についてはまもなく閉鎖することとした。
一度様子を見に行ったが、奴隷から解放した兎獣人が、ギルド職員として忙しくも楽しそうに働いている姿を見ることができた。元気そうで良かった。
各国の王は、このシステム運用状況について毎日魔道具による通信会議を実施しており、今のところ不具合や改善点は見当たらないらしい。
流石はガジムだ。
当の本人は、防壁を強化するために一族と重鎮A、Bと共に長く続く壁の強化を日々行っている。
俺?俺は神獣達と<魔界森>4階層の模様替えを手伝っているよ。
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いよいよ我が<シータ王国>の権威を全世界に示す時がやってきた。
今までの<アルダ王国>を始めとした8カ国、丁度<アルダ王国>より先に続いているので一気に叩き潰してやろう。
そして<神>の名を冠する地下迷宮の管理者を秘薬で無効化した状態でとらえて、この我ドルロイが管理者になってやろうではないか・フハハハハ。
そう考えると、<アルダ>のやつらもいい仕事をしてくれた。正直我らだけでは地下迷宮を踏破できる戦力を有していないのだからな。
我の代わりにわざわざ踏破してその権利を取られるのだから、やつらからするとたまったものではないだろうが、我を侮辱した代償だ。
フフフフ、管理者になったら強大な力が手に入る。楽しみでしょうがないぞ。
宰相と最後の打ち合わせを行う。
「秘薬を混ぜた剣、矢、槍、短剣、杖、そして盾は準備できたな?その武具は全て<A:上級>の者に持たせ、<S:帝級>は後方部隊とするように。そして、後方部隊にはドロップアイテムを全て宝物庫から出して配備しろ。腹の立つことに最上アイテムの<剣:上級>は4本中3本破壊されてしまっているがな・・腹は立つが、今後の事を考えると笑いが止まらぬぞ・・ククククク。」
「全てご指示通り整ってございます。ただ秘薬は今回の遠征のために全て使用してしまいましたが・・。」
「いや、問題ない。やつらを滅すれば我が管理者になれるのだ。秘薬も容易に手にすることができるだろう。」
そうだ、今回の遠征は失敗は許されないのだ。我がこの世界の真の王だと知らしめるために。
そのためには貴重な秘薬も惜し気もなく全て使用した。
この秘薬を使用して作成された武具は秘薬の効果を常に発動できるわけではない。
例えば杖は、魔法を使用した際に秘薬の効果が乗る魔法を発動できるが、使用するたびに杖に蓄えられている秘薬は減少していく。
弓は放てば再度拾えない限り使用できない。剣などは相手に攻撃が当たり効果を発揮した場合、その分秘薬の効果は減少していく。
盾は相手の攻撃が<S:帝級>以上であれば相手の攻撃を無効化できるが都度秘薬が減少する。
一番効率がいいのが杖なのだが、この秘薬に耐えられる杖の素材を数多く集めることができないのだ。
と言うよりも、過去に秘薬を入手した時に得たのであろう宝物庫に保管した杖以外は使用することができなかった。
しかし、最初にやつらの高戦力部隊を無効化した上で討伐してしまえば、残りは後方部隊の最高戦力<S:帝級>で始末できるので問題ない。
いよいよ、そう、いよいよだ。
昨日の後書きにも書きましたが、ようやくブクマ100を超えることができました。
応援ありがとうございます。
これからも楽しく読んで頂けるように頑張ります。




