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<フラウス王国>第一王子・・(1)

第一王子の話が少し続きます。

王子目線です。

 私は<フラウス王国>第一王子のハルという。

 第一王子が故に、今後<フラウス王国>を背負って立つに足りる知識、経験そして信頼できる仲間を得るべく<ゴルデア王国>に留学している。


 我が<フラウス王国>は、先人の異世界人が立ち上げた国であり、そのお方の力を引き継ぎ、魔道具関連の産業が栄えている。

 もちろん防衛もその力を利用しているが・・


 そして今いる<ゴルデア王国>は武術に優れている王国なのだ。

 もちろん魔法を使用する物もいるが、体術系統の<スキル>を持っている者がほとんどだ。


 私自身は、どちらかというと魔法を得意としているが、祖国の影響か魔道具の力を借りている部分が多々ある。

 父上も私の不足している部分を改善するために、体術の何たるかを知るべくこの国に送り込んだのかもしれない。


 実はここ<ゴルデア王国>は、我が<フラウス王国>からは若干距離がある。距離だけでいえば<シータ王国>が正に隣国なのだが、<フラウス王国>を建国した先人である人族が、<シータ王国>に無理やり召喚されて逃げてきたものであることから、我が国はかの国とは国交を結んでいない。

 

 そもそも、人族至上主義、他種族排他主義などというふざけた主義がある者共などと交流を持つなど、こっちから願い下げだが・・


 そして、私は日々武術の研鑽を重ね、<身体強化:Lv3・・中級>を得るまでに至っている。

 これも私が通う学園の教師陣、そして共に切磋琢磨してくれている学友のおかげだ。


 このスキルは比較的万能だ。相手の攻撃を受けてもある程度耐えられるし、自らの動きも大幅な改善が見込める。


 スキル発動までにはかなりの時間がかかったが、このスキルを最も得意とする<猫獣人>の学友が懇切丁寧に、時間をかけて教えてくれたのだ。


 そんな充実した毎日を過ごしていると、夜に通信魔道具で父上から連絡があった。

 なんと、<シータ王国>から独立した<アルダ王国>の国王一族が挨拶に来て、同盟を結んだとのこと。

 そもそも<アルダ>とは、<シータ王国>の辺境北伯であったはずだ。

 良い感情のない<シータ王国>において、唯一尊敬のできる貴族である。

 

 きっと彼も<シータ王国>に愛想が尽きたのだろう。父上も全力で支援する事を約束したらしい。私も完全に同意だ。

 ただこの連絡には、別に驚くべき点が3点あった。


 一つ目は、なんと彼等の第二王子が我らが建国の先人と同じ国、この世界ではない異世界の記憶を持っているというのだ。これは王族のみに伝承される秘話とアイテムで判別できるため、間違いないのだろう。更に、二つ目として、かなり高性能なドロップアイテムを頂戴したそうだ。

 最後の三つ目は、なんと弟のリノスが<アルダ王国>の第一王女に一目惚れし、<アルダ王国>に同盟の証として同行するとのことだ。


 ドロップアイテムに関しては重鎮たちは狂喜乱舞して、軽い戦闘になったそうで、正直光景が目に浮かぶ。

 それ程の貴重なアイテムを差し出していただけるとは・・私も早くそのアイテムを見て研究したいものだ。

 弟は・・あいつがそんなに早く行動するとは、どうやらお相手は人柄、容姿全てに非の打ち所がない女性なのだろう。


 そうして再び日常を過ごしていると、親友ともいえる<猫獣人>の者がある情報を持って来た。


 「ハル、ちょっと変な情報を手に入れたんだけど、王族のお前なら真偽は分かるかな?何やら<シータ王国>から辺境北伯が離反して<アルダ王国>を建国したらしい。そして、お前の祖国である<フラウス王国>と同盟を結びその結果を全世界に布告したらしいぞ。そのせいかは知らないが、<シータ王国>は戦闘準備をしているという事だが・・事実か?」


 「詳細は知らされていないが、同盟までは確認が取れている事実だ。」


 隠す必要もないので、事実を教えた。


 「そうか、そうすると<シータ王国>の戦闘準備についても信憑性が高いな。ならば私は一時この学園に通うのをやめて、<アルダ王国>に兵士として志願しようと思う。」


 「おい、どういうことだ?わざわざ危険地帯に自ら向かうのか?」


 「結果的にはそうかもしれないが、実は俺の一族は過去に辺境北伯に救われているんだ。俺達はあのお方に返しきれない恩がある。ここで己を研鑽しているのもあのお方の力になりたいがためだ。俺、いや俺達一族は辺境北伯・・ではなく<アルダ王国>に絶対の忠誠を永遠に誓っている。ここで力にならずして何のために己を磨いているのか・・・」


 あまりの親友の熱い忠義に、<アルダ王国>の王族が羨ましくなる。

 こんなにも素晴らしい人材の無条件で絶対の忠誠を受けているのだ。父上の言う通り、<アルダ王国>はもちろんの事、王族も素晴らしいのだろう。


 そうすると、親友や我が祖国、そして同盟国である<アルダ王国>に対して私ができる事は何だ・・。


 正直私が今のLvで戦闘に参加してもはっきり言って足手まといだろう。

 <シータ王国>には<S:帝級>がいるらしいからな。私では数秒の時間稼ぎもできないまま存在を消されるだろう。

 たとえ魔道具を駆使してもだ・・

 悔しい現実だが己の評価を間違えると、自らのみならず味方にまで甚大な被害を及ぼす可能性があるので、決して過信や自惚れはしない。


 考えろ・・・


 そして悩んだ結果、私にできるのは知略しかないと結論付けた。

 もちろん<アルダ王国>には私など足元にも及ばない優秀な人材が沢山いるだろう。

 しかし、同盟国そして親友が絶対の忠誠を捧げる<アルダ王国>に対して何もしないという選択肢は取れないのだ。

 

 そう決断して、魔道具により父上に相談した。

 ところが、


 「ハル、お前が得た<シータ王国>の戦力準備は事実だ。そして、お前の気持ちはよくわかるが、現在お前の弟であるリノスが<アルダ王国>にいる。少し辛辣な表現になってしまうが、邪魔になってしまう可能性があるので、別の方法を考えた方が良いだろう。」


 痛いところを突かれた。事実なので何も言い返せない。


 「お前の親友である<猫獣人>の者については、こちらから<アルダ王国>国王に連絡を入れておく。<アルダ王国>には転移を使えるものも多数いるとのことなので、<ゴルデア王国>から<アルダ王国>の長い距離も問題なく瞬間に且つ安全に移動できるだろう。しかしお前が親友とまで言い切る者すら絶対の忠誠を誓っている<アルダ王国>、やはり素晴らしい国なのだな。私も早く行ってみたいものだ。」


 そうして私は通信を終えた。


 私の力不足をここまで悔やんだ時はない。

 今までは甘えがあったのではないか?今後は己の研鑽に対しては一切の甘えを許さず行う必要がある。そう、今回のような時に役に立たないのでは意味がないのだ。時間は待ってくれない。


 少し落ち着いて、私はまず今できる事を考えた。

 気持ちを切り替え、親友に転移の件を伝える事にしよう。


 翌日、学園に来た親友の<猫獣人>グリフに私は状況を伝えた。


 「グリフ、実はお前の事を父上に相談した時に<シータ王国>の件、事実であることが確認できた。そこで、父上が<アルダ王国>に連絡をして、転移でお前を迎えに来てもらえるように手配してくれるそうだ。」


 「おお、助かるぞハル。正直今日この日の授業が終わったらすぐに出立しようとしていたところだ。」


 なんと親友は既に出立の準備を終えていたようだ。

 少し悲しい気にはなるが、私は私のできる事をしよう。


 「グリフ、実は<アルダ王国>には私の弟であるリノスという者がいる。是非仲良くしてやってくれ。私は力不足で<アルダ王国>に行っても足手まといになるので、ここでできる事をしたい。いや、必ずお前と<アルダ王国>のために力になってみせる。楽しみにしておけ。」


 決意を新たにがっしりと握手をした私とグリフは、互いの健闘を誓いあった。


 「父上から転移に関する情報が入ったらまた連絡する。それまでは勝手に出立するなよ?」


 「ああ、もちろん危険がなくあっという間にたどり着けるならそれに越したことはないからな。大人しくしているよ。」


 そして以外にもその日の昼に魔道具による連絡が来た。


 「グリフよ、<アルダ王国>から連絡があり、その者を迎えに今日の夕刻にそちらに迎えに行くとのことだ。夕刻には準備を整え、学園の門の外にいるようにしておいてくれ。」


 「わかりました。私は私でここ<ゴルデア王国>で祖国と<アルダ王国>そして親友のためにできる事をします。」

お読みいただきましてありがとうございました。

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