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<シータ王国>との闘い・・<フラウス王国>の紹介(2)

やはり2人はしでかします。

 重鎮A、Bの持っている破壊力から考えると、今回の事態は俺が想定した中でもダメージが無い方だったので、とりあえずあの二人を別室に連れて行くだけでもいいだろう。

 

 『ユフロ、レイラ、この程度であればあいつらにしてみたらトラブルとは言えないレベルなので、別室にお連れしろ。ただし<転移>は使うなよ。そのおかげで更に興奮して手が付けられなくなると困るからな。』


 『『承知しました。』』


 すすす~っ・・とユフロとレイラが重鎮A、Bに近づき、それぞれに軽く耳打ちすると、彼らは喜び勇んでユフロ、レイラと共に退出していった。

 いや、流石だな。ユフロとレイラはおそらく幻獣について質問があれば別室で受けるとか、彼らの気を引く事を言ったのだろう。

 そして重鎮A、B・・・挨拶の途中、しかもまともに自己紹介すらしていない状態で、自分の知識欲を優先して平気で途中退出できるあの図太・・いや度胸。

 

 一連の鮮やかな流れをみて、リノス王子はようやく我に返った。

 重鎮A、Bが退出して我に返った王子は慌てて挨拶を再開した。


 「も、申し訳ない。大変お見苦しいところをお見せしました。彼らは・・ご覧の通り少々我が強いのですが、大変頼りになる仲間でして・・特に錬金関連は全て任せられると思っております。これからよろしくお願いします。」


 少々気まずいのか、かなり切り上げた感のある挨拶になってしまっていた。


 その後は錬金術と聞いたガジムが早速リノス王子の下に挨拶に行き、ガジムと一族もこの部屋から退出していった。


 ・・まずいな。パーティー自体は問題が無くなったが、別室に大惨事が起きるかもしれない・・


 『ユフロ、レイラ、そっちにガジム一族が向かった。応援で幻獣部隊全員をそちらに向かわせる。何かあったら<空間魔法>を使って隔離しろ!』


 そして、ウェイン筆頭とした幻獣部隊もこの会場から音もなく消えていった・・


 幻獣部隊の緊張が高まる別室をよそに、この部屋のパーティーはつつがなく進行している。


 ソフィア姉さんは、若干落ち込んでいるリノス王に寄り添って、何やらかいがいしく世話をしている。

 

 少々ピリピリしていた気持ちが、柔らかい暖かさに包まれて癒されていくのがわかる。リノス王子・・ソフィア姉さんは本当に素晴らしい女性(ひと)です。俺の前世のクズ女なんて足元にも及ばない慈愛に溢れている女性(ひと)なんです。よろしく頼みますよ!!


 ・・なんて言ったらいいんだろう。仲の良い人を取られる??ちょっと違うな。少しだけ寂しい気持ちがあるんだけどね・・このままうまく行ってほしいけど、そうすると姉さんは<フラウス王国>に行くことになるのかな?その場合は、安全のため近衛騎士のハルドや幻獣のエレノアにも一緒に行ってもらうことになるか・・


 いやいや、そうなったらとても良い事なんだし、<転移>を使えば一瞬なんだから問題ないよな。


 そう、こんな事を思っていると、いつもの神獣メンバーが優しく俺を包んでくれましたよ。


 俺が色々な考えを巡らせている間も、別室では不穏な空気が蔓延していく。

 都度都度状況をウェインが<念話>で報告してくれるのだ。


 ユフロ、レイラ、そして重鎮A、Bだけで話をしていた時までは問題なかったらしいが、そこにガジム率いるドワーフ族が乱入してからが問題だ。


 当然警戒態勢の幻獣部隊が勢揃いしたのだが、彼らにはそんなことは全く関係ない。彼等の錬金にかかる情熱と比較すれば、他の何事も・・・いや、忠誠心以外はという事になるが、全てが塵と同義になってしまうのだ。


 お互い軽い自己紹介を終え、ガジムは、


 「我が<アルダ王国>の魔法防壁はドワーフ族が全力を以て作った物だ。<フラウス王国>の侵入対策と比較してどう思う?」


 「うむ、我らが<フラウス王国>からこちらの門をくぐる際に、とても大きな力を感じたが、あの壁のせいか?素晴らしいな。なるほど、壁自体に機能を持たせたのか・・我らは門の入口に結界を張って、許可が出た者のみ目的に応じた場所に転移できる魔道具を使用している。」


 「なんだと、転移魔道具たと!!」


 「そうだ。しかし貴国の防壁に力を付与したのか?その技術、大変興味がある。」


 そう、この辺りはお互いの技術を取り込み良くしようという会話で問題はなかったのだが、


 「実は<フラウス王国>出立時に、この俺ノレンドが開発したばかりの魔道具を持って来た。」


 「あ?何出しゃばってんだノレンド。俺様ランドルが発案した技術だろうが?」


 「ふざけんな、チラっとお前の希望を言っただけじゃねーか。それにお前はお前で魔道具持ってきてるだろうが。」


 「おいおい、落ち着け。」


 なんと、あのガジムが宥める始末だ。


 そして、重鎮Aノレンドランドルは自らの魔道具について熱く語り始めた。

 二人で同時に説明するので、ドワーフ族は二手に分かれて聞いている。


 おや?ウチの連中は思ったより冷静になれるんだな。新しい発見だ。

 

 「この俺ノレンドが開発した魔道具は、正に今回<シータ王国>のくそったれに対して有効なものだと確信している。それはな、この魔道具をあいつらに使用することで、人族で重要な五感の内ランダムにはなるが2つを一時的に無効にできるんだ。相手のLvや状態にも依存するが、戦闘時に突然五感の内2つを奪えるのは大きいぞ!」


 一方ランドルは、


 「この魔道具を見てくれ。これはな、大気を一時的に密集して解放することにより、疑似的な風魔法を起こせるんだ。しかも、発動までの時間が短く、範囲も広い。発動中に次の箇所を指定できないのが難点だが、連続起動はできるので大きな問題にはならないだろう。」


 説明をすでに終えていたレノンドがランドルを煽ってきた。


 「おい、そんなへなちょこ魔道具で<シータ王国>に通用するのか?そもそも威力もへなちょこなんじゃないのか?」


 「なんだと?お前の腐れ魔道具も五感のうち2つなどどいう訳の分からない制限があるだろう。べつに戦闘中に味覚と嗅覚が無くなってもなんともないわ!」


 「ああぁ??俺様の魔道具の効果にケチをつけるのか?だったらお前で試してやろうか?」


 「こっちのセリフた。お前なんぞ俺の魔道具で吹っ飛ばしてやるぞ!!」


 通常運転だな。そろそろまずい。部屋を破壊しかねないぞ。


 『おい、今すぐその二人を隔離しろ!』


 『承知しました。』


 ウェインが代表して返事をくれ、即実行したようだ。


 そして残された幻獣部隊とドワーフ一族・・何とも言えない空気となり、一旦こちらのパーティー会場に戻ってきた。


 ガジムが・・


 「ジン様、彼等の情熱は良く、それは良く理解することができました。彼等の持って来た魔道具の技術・・実際には効果は目にすることがなくウェイン殿たちが隔離したのでわかりませんが、おそらくこの<アルダ王国>にはない技術であるため、これからあまり時間はありませんが、<シータ王国>との衝突時に間に合うように互いに研鑽していきたいと思います。」


 「頼んだよ。父さんにも報告しておいて。」


 「承知しました。」

 

 そう言ってガジムは父さんの方へ歩いて行った。


 俺は残されたウェイン達と話をすることにした。

 幻獣部隊には色々迷惑をかけているからな。


 「幻獣部隊の皆、本当によくやってくれて感謝している。あの重鎮A、Bの相手も押し付けちゃったりしてホントにゴメンね。お礼としてドロップアイテムをプレゼントしたいと考えているんだ。だけどまだ地下迷宮(ダンジョン)に行けていないので、もう少し待ってほしいんだ。」


 「「「「「「ありがとうございます。」」」」」」


 皆嬉しそうにしてくれている。早く彼らにプレゼントしたいぞ。


 と決意していると、ウェインが


 「ジン様、隔離した二名ですが・・信じられないことに互いに向けて魔道具を発動したらしく、一方は視覚と聴覚が無くなっているようで、もう一方は爆風に飛ばされて意識がない状態です。如何致しましょうか?」


 「・・・・・ホント何してんだよ。・・・疲れたよ・・・とりあえず、レイラに治療させておいて・・・」


 


 

 

 


 

 



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