<アルダ>の日常(2)・・祭りの準備と塔の管理者登録
魔界森の管理者になりました
翌日、俺は父さんの執務室に来ていた。
祭りの詳細、つまりは開催日時と、その際の警戒態勢を聞くためだ。
「父さん、昨日皆と領内を散歩して軽く顔合わせは済んでいるけど、全員に紹介できたわけではないんだ。以前話していた神獣達の領民への紹介を兼ねた祭り?をどうするのか教えてもらえる?」
「そうだな、今後はどのような状態になるかわからないが、あの程度の襲撃ではこの領地はびくともしないことが証明された。あの襲撃犯がどこの者かは分からないが、この領から離れる方向に撤収していったと報告を受けている。その方向はどうやら王都ではなさそうなので、そう考えると他の辺境伯からの連絡から王国自体が活動を開始するには少し時間があるはずだ。今後祭りなど楽しめる状況ではなくなるかもしれないので、早めに実施しておきたいと考えている。ジンはどう思う?」
そうか、今回の襲撃犯が使者の関係者ではないとすると、少し時間があるのは事実なのだろう。
「そうだね、今後の対応の準備もあるから、祭りは早い方が良いかな。領民皆が今の状況を知っているわけではないんでしょ?気兼ねなく楽しんでもらって、最後に状況を説明するのではどうだろう?」
実を言うと、昨日の散歩のときに大人から状況の具体的な確認をされており、ほぼ皆現状をある程度理解してはいるんだけど・・
「そうだな。では祭り自体は今日明日で準備して、明後日に一日開催するとしよう。基本的にはこの城から東西南北に延びる街道に出店をし、通常よりも割安で販売させる。補填はこちらで持つことにしよう。朝に開催の宣言をすることになると思うが、その時に皆を紹介すればいいだろう」
「わかった。その間の警備体制はどうするの?」
「そうだな、今後緊張が続くことを考えるとこの日位は近衛も含めて楽しんでもらいたいと思っている。ただ全員が警備から外れるわけにはいかないので、時間制で交代としよう」
と、あっさりと開催が決まった祭り。イメージは前世の出店?が沢山出る上に、店の商品は割安で購入できるためお得感満載な感じがする。
よし、そうすると2日程時間ができたので、魔界森の管理者権限について勉強しておこうと思う。
俺は現時点で種族変化による強大な力を得ているようなので、更に魔界森という新たな力?を得るような話をするためには、少し落ち着いて話を聞く必要があると考え、<神猫>の制御室に神獣+背後霊と転移した。
契約魔獣の4人は<アルダ>の警護だ。
ここなら周りを気にせず落ち着いて話ができるほか、力を試すのも危険がないからだ。
『いいえ、ジン様。力を試すのはしばらく控えて下さい。今のジン様が力を全開放してしまうと階層そのものが大ダメージを受け、いくら力を増した今の状態でも修復に膨大な時間が必要になります』
『あ、わかりました。』
危ない危ない。同じことをして怒られたくないからな。
『では水晶さん、魔界森が管理個所になったとのことだけど、これに関連する機能上昇とかはあるのか教えてくれないか?』
『まず一番大きな変化として、ジン様が魔界森の管理者になったことです。この魔界森はご存じの通りかなり大きな森で、内部にも高Lvの魔獣が闊歩しています。そして魔界森の中央に、ここからは見ることができませんが5階建ての塔が存在しています。この5階層は、各4大地下迷宮と魔界森の一括管理を行える管理室となっています』
『よくわかったよ。とすると、今後の管理はその5階層に行けばいいってこと?』
『各地下迷宮の状態を確認して管理を行う手間を考えると、塔の5階層に来ていただき一括管理された方が良いと思います。現在のジン様は、実際には管理はされていないので、必要ないかもしれませんが・・』
イタタタタ・・
痛いところを最後についてきたな。
『そうだよね。で、そこの4階層まではどうなっているの?』
『現在何もない状態です。そもそもこの塔の内部にはジン様またはジン様が許可を出した者しか入ることができません。出入口というものは存在せず、塔の外周にある魔法陣により内部に入る仕組みですが、この時点でジン様の許可の有無により選別されます。もちろん塔外部からの攻撃や破壊、スキルによる侵入はできません。これは神の権能によるものですので何人たりとも破ることができないのです』
そうか。要するに各制御室をまとめたところという事だな。
そうすると、1階層から4階層に何もないというのが寂しいな。
大きさはどのくらいなのかなどわからないことがあるので一度見てみようか?
もし環境が良ければ、場合によっては<神龍>にいて貰っている竜神達に引っ越してもらってもいいかもしれない。
最終的には<アルダ>に住めるといいんだけどね・・
「皆、とりあえず塔の5階層に転移で行ってみようと思うんだけど・・」
『ジン様、塔の管理者正式登録が終わっていないため、塔内部に直接転移することは今のままではできません。塔外周に転移いただき、そこから魔法陣にのって5階層に行っていただき、管理者登録をお願いします』
そうだったよ。親切設計だけど最初だけはめんどくさいんだ。
「皆、さっきの、やっぱりなし!!初回は直接転移できないみたいなので、塔の外に転移しようと思う」
そうして俺たちは塔の外周に転移し、そのまま魔法陣にのり5階層まで行って管理者登録を行った。
ここの管理補助者は、最初に逢った神獣であるモモになってもらった。
1階層から4階層を見たが見事に何もなく、単純に広い空間があるだけだった。管理者権限で広さも含めて好きに変更できるようなのでしばらくは放置しようと思ったのだが、神獣の皆がそれぞれの階層を欲しいと言い出した。
4大地下迷宮の総合管理を行う場所だけに、拠点となりそうだからここに部屋が欲しいようだ。
部屋割りについては決めて貰うことにして、俺はラムと塔の外周を見てくることとした。
この時は珍しく皆はついてくるとは言ってこなかったのだ。
外周を見てると、塔と魔界森の間には1000メートル程の距離が離れており、その間には平原がある。その後は魔界森が続いている状況で、塔の一周すべて変わりはなかった。
あまり変化を起こしたくなかったので設定は基本的には変更しないこととしよう。面倒くさいとも言うが。
そういえば、魔獣は魔界森の外に出ないが内側にも入ってこない設定なっていた。
そんなことを考えていると、突然塔が激しく揺れた。
何事かと思い様子を見ると、再度激しく揺れたのだ。思わずラムと目があってしまった。
この短い間に2回もこのような状態になるとは何か内部で大事が起こったのだと思い、慌てて塔の5階層に戻った。
管理者登録しているので、魔法陣には乗らず直接だ。
と、そこには何故か神獣の4人が全てを統合した水晶さんの前でそろって正座しているのだ。しかもちょっと涙目・・
どんな状況かわからずに、水晶さんに話を聞くと・・・
4人は、誰が5階層に一番近い4階層に住む権利を得るかで軽い言い合いになったそうだ。
なぜ5階層に近い方が良いかというと、基本俺の場所が5階層となるから・・らしい。
そして彼女たちの軽い言い合いは、はっきり言って尋常ではない。
つまり、この言い合いという名のキャットファイトで層の一部が壊れたらしい。
これに怒った水晶さんが彼女たちを即呼び出し・・いや強制的に転移させ現在に至る・・と。
・・・何をしているんだ君たちは。内容的に悪い気はしないが、君たちの力が凄まじいことを理解しないといかんよ?
そう思いはしたが、とばっちりを食うのが嫌なので怒られる4人を静観することとした。
相変わらず長い、長~いお説教を終えた4人は涙目のまま水晶さんに謝っていた。
その間にどのような解決方法があるかラムと相談していた。そう、俺は時間を有効に使う、できる男なのだ。
「皆、階層を破壊してしまったのは良くなかったけど、俺の近くにいたいって気持ちは嬉しかったよ。そこで提案なんだけど、各層をそれぞれに割り当てるのではなくて、4階建ての層を4つ作る・・つまり4層を縦に4分割すればいいんじゃないかな?」
皆が はっ!!とした顔をした。
何故か水晶さんからもそのようなイメージが伝わってきたが・・
「「「「流石です。ジン(ご主人)様!!」」」」
そうして、知らず知らずのうちに訪れた魔界森最大の危機は、無事クリアできたのであった。
お読みいただきましてありがとうございました。




