<アルダ>の日常(1)・・領地の散歩
領内の様子です
俺は久しぶりに領地を散歩することにした。
神獣の皆、一晩話して少しは打ち解けたと思っている契約魔獣の4人、背後霊・・もとい、近衛騎士のラムと繰り出したのだ。
そうそう、契約召喚魔獣のリーダーにはウェインになってもらった。このメンバーの中では唯一の同性だしね・・
最初に召喚したためか、他のメンバーからも一切の異存は出なかった。
よし、散歩を開始しよう。
散歩は神獣の皆と召喚魔獣達と更に仲良くなるきっかけにしたいこと、この<アルダ>を領民を含め良く知ってもらいたかったこともある。
<アルダ>は、知っている通り人族以外に他種族が共存・共生している<シータ王国>唯一の領地だ。
当然この領地内にいる人族は他種族を差別などしない。ので、最近は他種族間のハーフの子供もたくさんいる。
住んでいる種族は、人族、ドワーフ族、龍人族、魔族、エルフ族、獣人族だ。
領地内の人口?はおよそ5,000人で、基本的には<シータ王国>以外でも使用することが可能な白金貨、金貨、銀貨、銅貨が貨幣として流通している。
主な産業は<神猫>を攻略しに来る冒険者向けのサービス、例えば宿泊関連、装備の販売、装備のメンテナンスなどがある。
この<神猫>は基本ドロップはあまりなく魔法Lvがアップしやすい環境であると言われているが、意外と装備もドロップするのだ。
そのため、その装備を使用した後のメンテナンスが必要になってくるケースもある。
また、冒険者向けのサービスの一環として保養所的な場所もかなりあり、大きな風呂も存在する。
元日本人としては是非お勧めしたいところだ。
この話を神獣の皆にしたところ、シロ(元ネコ)が熱いお湯は苦手だったとのことだが、城の中にある風呂に慣れてきたため、最近では問題ないとのことだった。
そう、この言い回しで解ってくれると思うが、一緒には入っていないぞ!!・・・入りたいけど・・・
そして、領地の所々で畑や果物を栽培している。この広さでは領民全ての食卓を満足させることはできないが、肉は討伐された魔獣で補い、その他にも交易で支えているのだ。
今後の展開では交易に赤信号が点灯する可能性があるので、4大地下迷宮と魔界森で確保できないか水晶さんと話す必要がありそうだ。
よし、気を取り直して散歩という名の視察をしていこう。
城から北に向かうと、<神猫>の入口に近い門にでることができる。
この通りが<アルダ>の主要産業が広がっている街道となっているのだ。
当然この装備関連の店はドワーフ族が経営している。
外部から来る人族は他種族排他主義の激しい者は門で弾かれるので、あまり大きなトラブルにはなっていない。
実際彼らが作る武具は、他の領地で作成している物よりもかなり上品質であることは他種族排他主義の人族も認めている。
そんな奴らは、ここで購入した人族から購入するか、ここに購入するように別の人族を送り込むかしているのだ。
以前獣人族の奴隷が購入しに来たことがあったが、その頃は<魔眼>を持っている者がいなかったため、奴隷紋を解除させてあげることができずに、皆悔しい思いをした。
受け付けは基本的に人族がどの店も行っている。無用なトラブル防止のために実施しているのだが、俺の目標は、こんなことをする必要がない世界としたい。
<アルダ>の中でも、若干制限を懸けてしまっているようで悔しいのだ。
本人たちは一切気にしていないようだが・・
そして一旦城に戻り南に向かう。こちらは林レベルの木々があり、想像の通りエルフ族と一部の獣人族が住んでいる。ここでも一部木の実や果物を栽培している。
俺達が顔を出すと、エルフ族、獣人族、彼らのハーフの子供たちが集まってきた。
神獣の4人は子供が好きなようで、暫く一緒に遊んでいたようだ。
帰り際には花の冠をもらったようで、皆嬉しそうにつけていた。
契約魔獣の4人は護衛?なのか、俺の周りに来た子供の相手はするが、俺から距離を取ることはしなかった。
背後霊も・・以下同じ・・
西側は岩肌が見える地域で、龍人族と一部の獣人族が住んでいる。
ここは鉱石が取れるので、武器販売の素材としてドワーフ族に提供されている。
残念ながら食料関係はここでは栽培することはできていない。
ここでも子供たちが来てくれて、にぎやかな時間を過ごすことができた。
最後に東側。ここは魔人族と獣人族の一部が住む草原地帯だ。
一部畑になっており、時々ここに住んではいないが畑作業をしに来る他種族を見ることができる。
魔人族が畑仕事をしている姿を見るのは、前世の記憶から行くと何とも言えない気持ちだ・・
ここは残念ながら、視察の最後になってしまったせいか時間が遅く、子供と触れ合うことはできなかったが・・
そして一連の視察を終えた俺たちは城に戻ってお風呂に入り、ゆったりとした一日を過ごすことができたのだ。
今は、女性陣が風呂に入っている最中なのでこの部屋にいるのは俺とウェインだけだ。
「ウェイン、<アルダ>を見てどうだった?」
「ええ、領民も種族にとらわれず皆ジン様、そしてこの<アルダ>に強い信頼があるように見えました。他の領地を見たことがないので比べることはできませんが、理想の状態なのではないでしょうか?」
「そう見えるか?まぁそうなんだけど、一部店の受付が人族のみとかあっただろ?あれって、外部から来る人族の連中に気を遣っているんだよ。こんな部分も無くしていければいいと俺は思っている。今後の<シータ王国>や他の辺境伯、そして襲撃・・とは言えないレベルだったがそんな連中とのトラブルで今後どうなるかはわからないが、この状態を変えるきっかけにはなるだろう。当然俺一人の力ではできない。ウェイン、今後も力を貸してくれるか?」
「本当に、本当にもったいないお言葉です。私で良ければこの身命を賭してお力にならせていただきたく・・」
「いやいや、固いよ。せっかく少し壁が無くなってきたかと思ったのに・・でもありがとう。頼りにしてるよ、ウェイン!」
そして俺は右手を差し出し握手をしようとしたのだが、ウェインは両手で俺の手を包み込み跪いた。
想像とはちょっと違ったが、まあいいだろう。
今日はとっても穏やかに過ごすことができた。
召喚魔獣や俺の家族である神狼の皆も、一部ではあるが領民に認知されたので良かったと思う。
父さんが、ここのところ少しギスギスしていたから、領民全員に皆を紹介する会という名の祭りでもしようかと言っていたので、少しでも先に領民に紹介しておきたかったのだ。
こっちの世界の祭りは楽しみだが、警戒はどうするんだろう・・
明日にでも父さんに聞いてみよう。
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