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オルド無双

 あっさりと対戦相手を消滅させてしまったラム。

 勝敗が決した段階でマーニカ隊長は結界を解除した。

 

 魔神側の結界は、魔獣が助けを求めてきた時点で解除されていたのだが・・・


 腹の虫がおさまらないラムは、魔神サイドに向かって叫んでいる。


 「こんな雑魚ごときがジン様に暴言を吐くなど許されることではない。お前らもジン様に弓を引いた段階で同罪とみなす。楽に死ねると思うなよ!!」


 そんなラムをこちらに引き戻したのは、二コラ隊長だ。

 流石【近衛部隊】隊長。落ち着いている。


 「ラムよ、気持ちはわかるが少し落ち着け、ジン様の御前だぞ。」

 「う・・・そ、そうでした。ジン様お見苦しい所をお見せしました。」


 ラムが俺に向かって頭を下げてきた。


 「いや、俺の為に怒ってくれてありがとう。とんでもない力を完全に制御できていたね。」

 「恐れ入ります。最後の鍛練の成果です。」


 どうやら落ち着いたようだ。

 見た目も黄金色から元に戻っている。


 「ラムよ、良い戦いだった。落ち着いてくれて嬉しいぞ。もしあのまま暴走していたら、俺達の獲物が無くなってしまう危険があったからな。」


 二コラ隊長がそんな事を言っている。

 どうやらラムを落ち着かせた第一の理由としては、あのままラムが暴走して他の魔獣達を一掃してしまう事を防ぐことだったらしい。


 ホントにこの近衛達は・・・


 ともあれ、神の力がもう一つ元に戻っているはずだ。

 念のために<念話>で確認した。

 神の力は即戻るようでカムリさんの力が戻ったと報告があった。

 これから、徐々に力を馴染ませていくことになる。これで、神の力を奪った魔獣から力を剥奪せずに消滅させても、力が戻る事が証明された。


 すると、魔神が大声で何か叫んでいる。


 「そこの雑魚共、良くも我が腹心を消滅させたな。だが、当然強さで言えば一番下から戦闘しているのだ。お前らが調子にのれるのもここまでだ。」


 何だか負け惜しみにしか聞こえないようなセリフと共に、魔獣がこちらに向かって一匹歩いて来た。

 正直俺から見るとあの魔獣もさっきの魔獣と大きな違いはなく、目クソ鼻クソと言う感じなのだが・・・


 対してこちらからは、オルドが前に進み出た。

 

 オルドに対して二コラ隊長が、


 「おいオルド、できれば生け捕りだが同じように不敬があれば消滅させても構わんぞ。」


 落ち着いているようで、二コラ隊長もかなり内心では怒っているようだな。

 さっきは少々ふざけた事を言っていたが・・・


 「わかった。さっきはラムと同じように一瞬我を忘れて攻撃しそうになった。だが今は落ち着けている。問題ない。」


 そう言って、魔獣と相対する。

 先の戦闘と同様に、こちらはマーニカ隊長のみが結界を作成し、向こうは残りの魔獣達が対応している。

 

 そういえばあいつら、なんだかんだ言って消滅されそうになっていた魔獣を助けるために何か魔法を使っていたな。

 仮に魔神クラスの蘇生や強化の魔法であれば厄介であったのは間違いないので、この結界は重要だ。

 あいつらにとって見たら、立場が逆になっているだろうがな。


 しかしこの結界は、マーニカ隊長が念入りに張っているので、あいつらの補助魔法が届く可能性は万に一つもないだろう。


 向こう側の結界も作成し終わったようで、オルドも武具を一段解放し槍を顕現させている。

 オルドの第一解放は、持ち手は黄金、刃は銀の槍だ。

 第二解放までは確認したが、これは槍の穂先が両端になっていたようだった気がする・・・

 もちろんオルドも第三解放までできるようだが、視察時もタイミングが悪く見たことはない。


 そのオルドに対して相手の魔獣が、


 「おい、貴様は魔族だな!なぜ魔族があのような人間に使えている?何か弱みを握られたか、洗脳されたのか?俺が思うにお前はこちら側だと思うがな。どうだ、こちらに着けば魔神様直下の大幹部を確約するぞ。結界の外にいるもう一人の魔族もどうだ?」

 「フ・・フフフフフ、ハハハハハ」


 オルドは何やら大笑いしているのだが、目が笑っていない。

 喜びの笑いと勘違いした魔獣は、更に続ける。


 「そうか、嬉しいか。そうだろう。きっとお前とあそこの魔族はあの人族に良いように使われていたんだろう。この戦闘もそうだ。自分は戦わずにお前たちに命を懸けさせる。見下げ果てたクズだ。そんな・・グヒャ」


 さっきもこんな景色を見たな。

 学習能力がないのか?こいつら。さっきのラムと同じように近接したオルドに殴り飛ばされて結界に当たり落下している魔獣・・・

 しかしふと思った。近衛はなぜこんなに近接戦闘能力が一気に上昇しているのだろうか?・・・と。

 

 「ご主人様、ミーナさんとの鍛錬を見ていないからわからないんですよ。彼らは少しでも近接戦闘の技術を上げてミーナさんとの対戦成績を良くしようと必死に努力していましたから。」


 顔に出ていたのか、契約魔獣だけに俺の思う所が伝わってしまったのかモモが答えてくれた。


 「そっか。そういえばミーナは近接戦闘型で、近衛同士の模擬戦の戦績が良いと言っていたね。それで彼らの対ミーナの戦績は上がったの?」

 「フフ、最後の鍛練では互角になったと言っていましたが、それ以前については聞かないで上げて下さい。」


 そういう事らしい。

 そんなやり取りをしている中、オルドが叫ぶ。


 「二コラ隊長!こいつも完全滅殺確定だ。ジン様をクズだと?このウジ虫が~!!!」


 ありゃりゃ、意外とオルドも沸点が低いみたいだ。

 体がラムと同じように黄金に見える。


 これは第三解放なのだろう。


 しかしラムと違って、オルドの武具である槍を手に持っている姿勢は変わらない・・・のだが、槍自体は視認できない。


 そして、見えない槍を上空に突き刺す動きをしたオルド。

 黄金色の粒子が結界内部に充満し始めているのがわかる。


 かなり遠くに吹っ飛ばされていた魔獣の所にも粒子が充満した瞬間に魔獣の両腕が消滅した。


 なんだかさっきの戦いをトレースしているようだ。


 「なんだこれは?くそ、Ωθζ」

 

 魔獣は何やら術を発動して腕を再生すると、防御結界を張ったようだ。


 そういえばこの魔獣、何も武器を持っていない。とすると、魔法特化型だろうか?

 すると、魔獣側から黄金の粒子を払うように巨大な雷が発生してオルドに向かってきている。

 流石は<SSS:神級>だな。


 しかし、魔獣から発生した巨大な雷はあっという間に霧散してしまう。

 それはそうだろう。あの黄金色の粒子、俺の<神の権能>で確認すると、全て槍になっている。その細かい槍に異なる付与がなされている状態だ。

 つまり、膨大な攻撃力と屈強な防御力を持ち合わせている粒子状の槍がこの空間を支配しているのだ。

 その中であの程度の雷がオルドに着弾することなどありえない。


 腐っても神の力を持つ魔獣だ、自分とオルドの力の差を理解したようだ。

 覆す事が全くできない程の力の差を理解してしまった魔獣は、攻撃を無効化された状態で放心している。


 「ふぅ~、何ともあっけない。ジン様、この魔獣捕縛でよろしいでしょうか?」

 「え?あ、ああ。よろしく頼むよ。」

 「承知しました。」


 ブチ切れの戦闘状態からいきなり普通に話しかけてくるからびっくりしちゃったよ。


 そのままオルドは放心状態の魔獣に一撃を加えて混沌させると、魔獣を肩に担いでこちらに歩き始めた。


 マーニカ隊長は結界を解除したが魔神側は解く気配がない。しかしオルドは気にせずに手を一振りすると、魔神側の結界を破壊してそのままこちらに来た。

 魔獣を頬り投げるように地面に置くと、


 「マーニカ隊長、能力の剥奪をお願いします。」


 そうだった。近衛達は能力の剥奪は会得していないんだったな。

 こうして、更に神の力を取り戻すと共に、鍛錬場の的も得ることができた。


 因みに力を取り戻した神は、ブロスさんだったよ。 

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