表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/169

魔神サイド

 ここは、<ジロム大陸>のとある王城・・・


 「主よ、あまり良くない報告です。第6魔位の気配が<ドツマ大陸>から消えました。同時に、第6魔位が生み出していたであろう魔獣達の気配もなくなっています。この状況ですと、<ドツマ大陸>は奪還されたと見るべきです。そして、侵攻中の<ブロス大陸>と<カムリ大陸>も状況は芳しくありません。」

 「そうか。我の忠告も聞かずに、得られた強大な力に浮かれて勝手に行動した結果がそれか。しょせん奴は<SSS:神級>の力を扱う器ではなかった。我がその器を見抜けなかったのは反省する必要があるな。」

 「何を仰いますか。全知全能の主に間違いなどあろうはずがございません。あの第6魔位が自らの分をわきまえずに行った行動ですので、主には全く非はございません。」


 玉座に座る魔神に対して膝をつき報告をしている魔獣が、第6魔位と呼ばれている二コラ隊長によってあっという間にボコボコにされた魔獣の報告をおこなっている。


 「過ぎてしまった事は仕方がない。そもそもこの<ジロム大陸>以外は禁呪の生贄を集めるために侵略したに過ぎないので、別段気にすることでもあるまい。<ブロス大陸>と<カムリ大陸>についても、既に生贄は十分足りているので、このまま撤退させても構わんぞ。」

 「仰せのままに。」

 「しかし、我が臣下を下した者、そこそこ強そうではあるな。楽しみだ。」


 自らの臣下であり、大陸の神の力を与えた魔獣が倒された報告を受けても、余裕の魔神。

 実はこの魔神、実際に各大陸に存在する神とは別の悪神が、鬼族を依り代として存在しているのだ。

 この鬼族は、<コビア大陸>の王族であったが既に自我はなく、完全に乗っ取られている。<コビア大陸>前王の排除を行った際には意識はなかったのだろう。


 「して主よ、今後はどのように動きますか?」

 「折角自由に動けるようになったのだ。もう少々力を馴染ませた後に、あの忌々しい神とやらを完全に排除しに動く。」

 「主と痛み分けとなったあの神とやらですか?」

 「そうだ。我が復活できているこの状況、すなわち奴も復活しているのだ。」


 神自体を完全に消滅させることはできないが、封印を行うことはできる。

 しかし、互いの力が強大すぎる時には、自らも犠牲とした封印術を展開するのが一般的だ。

 

 実は<アルダ王国>の水晶さんと呼ばれている神が、はるか太古にこの魔神と戦い、ほぼ相打ちのような形で互いを深く封印していたのだが、ジンにより封印は解除され、そのおかげか魔神の封印も弱体化して、最終的には解除されてしまったのだ。

 

 しかし、強大な力を持つ神が完全封印下で何もしていないかというと決してそのようなことはない。

 この魔神は、長い年月をかけ復讐のためだけに新たな術を開発していた。

 その術とは・・・言うまでもなく神殺しだ。


 この神殺しは完全な禁呪であり、発動には大きな犠牲が必要なる。

 <アルダ王国>の面々は、救うことができなかった人々は、召喚関連の禁呪の生贄になったと考えているが、実際は違う。

 あくまでも自らを封印することができた力を持つ、水晶さんと呼ばれている神の完全な抹殺に向けた術のためにかき集めたのだ。


 一方水晶さん側は封印中に何をしていたかというと・・・情報はない。

 

 地球の神から神獣達の転生を頼まれた際にはすでに封印状態であり、無意識化で何かの術を開発していた為に半ば無条件に受け入れた経緯はあるのだが・・・何の術を開発していたか、そもそもその術が完成していたかすら認識できていないのだ。


 そんな太古の因縁から今回の騒ぎが起こっているなどとは<アルダ王国>の面々はわかるはずもなく、現在に至っている。

 当の水晶さんも記憶が完全に戻っていないので、ジンを含めて<アルダ王国>の面々に説明のしようがないのだ。

 しかし、強大な力を持つ神であり、さらには新しい神である神獣やジンが近くにいるのだ。完全復活は間もなくだろう。


 「それで、他の<SSS:神級>の魔獣達の状態はどうだ?あのバカ以外は慎重に自らに与えられた力を分析していたので問題はないと思うが。」

 「はい、第5魔位以外につきましては互いに力の確認を行っています。第5魔位は現在この<ジロム大陸>に帰還中です。」

 「そうか。だがあの神を排除する前に我らの目の前をうっとうしくも飛び回るコバエを排除する必要がある。しかし第6魔位を討伐できる者達だ。安易にいかず慎重に情報を集めろ。神を排除する前に我らの戦力が下がるのは好ましくないのでな。」

 「仰せのままに。」


 魔神は、今回襲撃してきた<アルダ王国>の面々が水晶さん所縁の者達であるとは知らずに、情報の収集を命じた。

 魔神と話をしていた魔獣は、指示を受けると即座に退室して行動を開始する。


 「フン、我が永き眠りについている間、なかなかの強者が出てきたようだな。起きて早々楽しめそうだ。」


 魔神は、封印が解けて自由になり力が徐々に戻っている。封印される前も魔神らしく破壊衝動があり、本能の赴くままに全てを破壊し、神の討伐対象になった。

 復活した今も破壊衝動は健在で、より強い敵がいるのは願ってもないことなのだ。


 依代である鬼族との相性も良かったのか、思いのほか力の復元が早い。

 と言うのも、この鬼族も破壊衝動ではないが常に戦いを求め続ける性格をしていたため、波長がかなり合っていた。

 

 そんな魔神率いる神の力を奪った魔獣軍団が、<ジロム大陸>に集結しつつある。

 このまま行くと、<アルダ王国>の部隊と激突するのはそう長い時間はかからないだろう。

 

 魔神は、まだ見ぬ強者との戦いを熱望しつつ、自らの力を取り戻す作業を開始した。

 何もしなくても力は徐々に回復するのだが、待っている時間を無くすべく術を開発していたのだ。

 

 こうなると、力を完全に馴染ませるという点においてはジンよりも魔神の方が圧倒的に早いのだが・・・


 互いの思惑を乗せたまま、本格的な戦闘と情報戦が開始される。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ