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大陸神解放2(第三者視点)

 <ドツマ大陸>に唯一残った瘴気のある領域、その中心に聳え立っている城の上空に無数の魔法陣が出現した。


 城を囲うように全方向から、赤、青、黄金、銀、白・・・と色も大きさも異なる魔法陣が破壊対象である城に向かって攻撃準備をしている。


 攻撃準備の余波だけで、大地が大きく揺れているのだ。

 

 この術を発動しているのは【攻撃部隊】のマーニカ隊長。

 これを見た同部隊所属のホープ副隊長をはじめ、この場にいる副隊長は、自らとの力の差を痛感した。

 

 彼ら副隊長も決して弱くはない。いや、むしろ隔絶した強さを持っているのだが、やはり隊長は別格だという事を思い知らされていた。

 これで一割の力というのだから、本当にとんでもない隊長に鍛えてもらっている自分がいかに恵まれているか、しかしその恵まれた状況でも、足元にも及ばない強さがある隊長に申し訳ない気持ちを持ちつつ、全力で自らの防御を行うことを決意した。


 対照的に、攻撃の余波や魔獣の逃亡を防ぐための結界を張る隊長達は涼しい顔をしている。

 この隊長達も異次元の強さ、この術を発動しているマーニカ隊長と同等の強さを持っているので、副隊長達とは違って平常心を保っている。


 やがて術が完成したのか、マーニカ隊長から全員に攻撃を行う旨連絡がきた。


 『準備完了したので、五秒後に攻撃します。エレノア、セリア、ユフロ、結界お願いね。副隊長は万が一の打ち漏らしを警戒してください。では5・・4・・3・・・・・・』


 <念話>でのカウントダウンが始まったあたりから、隊長は結界を張り始めた。彼女たちにしてみればこのタイミングで術を起動しても十分間に合うのだ。


 逆に初めから結界を張ってしまうと、マーニカ隊長の攻撃を迎撃するのではなく、逃亡することに力を置かれる可能性があるので、あえてこのタイミングでの結界術の起動としていたのだ。


 結界を張り、様子を城の様子を見るとマーニカ隊長の術に対する防御を行うための術起動がなされているようで、その力は<SSS:神級>や、<SS:聖級>が見受けられる。

 これだけ近く、そして強大な力であればいくら瘴気で覆われている領域でも力の感知は容易い。

 

 『・・・ゼロ』


 マーニカ隊長のカウントダウンが終わり、無数の魔法陣から中央に聳え立つ城に向かって攻撃がなされた。

 結界の中で行われている攻撃であり、その結界自体はマーニカ隊長と同等の強さを持つ隊長三人が張っている物であるため、攻撃の余波は副隊長がいる位置には一切届いていない。


 副隊長達は安堵の表情を一様に見せている。

 彼らの心の中はこうだ。


 『あんな攻撃、余波だけで俺達炭すら残らずにこの世から消え失せるところだった。こんな攻撃を防ぐ結界を張るなんて、隊長格じゃなきゃ無理だろ!!』


 結界の中は、何かが荒れ狂っているのはわかるが、音も聞こえないので何もわからない。


 やがて結界の中が落ち着いてきたため、視界もクリアになってきた。

 スキルで内部の状況を把握しよとしていた副隊長もいたが、あまりの攻撃の余波で何が何だかわからいのであきらめたようだ。


 すると、城と城壁は跡形もなくなくなっていたが、瘴気は薄いながらも存在し、50匹程度の魔獣も無傷で生存しているのだ。


 思わずホープ副隊長は驚愕の声を漏らす。


 「おいおい、あの攻撃で無傷かよ。」


 副隊長達は同様の感想を持っており、最大限の警戒を始めた。

 武具に魔法をまとわせ、イノザ副隊長は複数の召喚獣を召喚し始めた。


 一方、隊長達は涼しい顔をしている。

 

 攻撃を防がれた形になったマーニカ隊長は呟く。


 「やはりいましたか、<SSS:神級>の魔獣。どうやら中央の一匹のみのようですね。しかしいくら一割程度の力で放ったとはいえ無傷なのは少々ショックですね。あの魔獣は防御特化型なのでしょうか?」

 

 そのつぶやきに反応したのは他の三隊長達だ。


 「防御特化型?だとしたら私の力とどちらが優れているか、確認する必要があるんじゃないかしら?」


 防御重視の力を持ってる、いや、すでに<神の権能>で全能力を持っているので、今は持ってい()になるのだが、ジンに召喚された時点では防御重視の幻獣であったユフロが対抗心を露にし、妖艶にほほ笑む。

 しかし、その実、内心では一切の油断をしていない。

 あの攻撃で無傷なうえに、配下であろう他の魔獣達も無傷で守って見せたのだ。

 

 エレノア隊長とセリア隊長も油断せずに、結界を維持し続けつつ会話に入ってくる。


 エレノア隊長がマーニカ隊長に確認を始めた。


 「マーニカ、本当に一割の力で攻撃したの?」

 「ええ、もちろんです。丁度一割ですよ。」


 そこにセリア隊長が加わる。


 「とすると、万が一防御特化型でなかった場合、なかなかの力を持っていることになりますね。ここは我らが全力で潰したほうがいいのでしょうか?何れにしても、初の<SSS:神級>が相手です。瘴気が無い今、ジン様に報告だけはしておきましょう。」


 そう言って、セリア隊長は<念話>でジンに報告を入れる。

 すると、<アルダ王国>側の幹部にも同時に情報が展開されて、何やら【近衛部隊】の一部が出撃することになったようだ。


 セリア隊長がこの場にいるメンバーに念のため<念話>で状況の説明を行う。


 『えっと、ジン様に報告した所<アルダ王国>の幹部の中で出撃希望者がいて・・・【近衛部隊】の二コラ隊長とオルド殿がこちらに来るみたいです。なんだかジン様が若干疲れていたような気がしますが・・・とにかく【近衛部隊】の二人に相手をさせて、可能であれば<SSS:神級>を捕獲するような指示が出ました。』


 副隊長達は困惑している。

 彼らも幻獣である隊長達が<SSS:神級>であることは知っている。もちろん【近衛部隊】と【技術開発部隊】の隊長は<SS:聖級>であることも知っている。


 つまり、この場にいる副隊長と同じレベルなのだ。

 そのレベルにいるはずの【近衛部隊】が<SSS:神級>を相手にしたいと言っている・・・

 自分たちではなすすべなく滅ぼされる程の攻撃を、無傷で耐えた魔獣達を相手にしたいと言っているのだ。


 もちろん副隊長達も、<アルダ王国>を守る為ならどんな手を使っても彼らを滅するために動くだろう。しかしこの場には隔絶した戦力である幻獣部隊の隊長達がいるのだ。

 

 その彼女達を差し置いて戦闘したい・・・

 

 実は副隊長達、【近衛部隊】の業務の特殊性からか、彼らの鍛練を目にしたことがない。

 彼ら【近衛部隊】の鍛練できる時間は夜中に限られるので、鍛錬場で逢うことはなかったのだ。

 つまり、【近衛部隊】の実力は<SS:聖級>であることまでしか把握していないのだ。


 副隊長達の動揺を気にすることなく、隊長達は普通に話をし始めた。


 「そうすると、この結界は逃亡防止のために消さない方が良いかしら?」

 「そうね、でも二コラ隊長とオルド殿もすぐ来るみたいだし、その後については二人と相談しましょうか?」


 なんとも緊張感のない会話に、動揺していた副隊長も何やら落ち着きを取り戻すことができたようだ。


 彼女達の会話の通り、即<転移>で二コラ隊長とオルドはやってきた。


 「皆さん、突然の要望で申し訳ありません。今回【近衛部隊】の私二コラとオルドであの魔獣を担当させて頂きます。」

 「隊長、俺がアレですよね?」

 「バカを言うな。さっきジン様の前で担当を決めただろ?」

 「くっ、そうだった。」


 「状況としては、あぁ、マーニカ隊長の攻撃を皆さんの結界で防いだという事でよろしいでしょうか?」


 二コラにしてみれば、<神の権能>を持つ隊長全員が同じ攻撃をできるのだが、魔力のくせについては人それぞれであるため、攻撃後に僅かに残った魔力、そして今正に展開されている結界の魔力から簡単に状況を推理して見せた。

 と言っても、幹部達にしてみればあまり難しいことではない。


 あくまで、二コラとしては確認のために言ってみたに過ぎないのだ。

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