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二コラ隊長の回想

 私は<アルダ王国>王族の方々の鉄壁の壁である【近衛部隊】の隊長を務めさせて頂いている二コラと言う。

 既にご存じの通り、我ら【近衛部隊】の面々はダン様に返しきれないご恩がある。

 

 そんな中、<アルダ王国>第二王子であるジン様が覚醒し、我らに強大な力を授けて下さった。

 その強大な力に満足することなく、共に<アルダ王国>に命を捧げる仲間である【技術開発部隊】が作成してくれた<神狼>の町にある鍛錬場と、幹部のみが知り得ている地下迷宮(ダンジョン)の管理者権限による設定を受けて、深層で己を磨き続けている。

 

 と言うのも、幻獣部隊の隊長達は<シータ王国>とのトラブルの際に、別格に強くなったのだ。同じ隊長格として明らかに我らとは強さのレベルが異なる。

 この強さに少しでも近づくことを目標に、我ら【近衛部隊】は血のにじむような努力を繰り返している。

 いや、我らだけではなく、他の部隊も同様ではあるのだが。


 幻獣部隊の方々も良く鍛錬場に来る事が有るが、その際に模擬戦の相手をして頂ける時がある。

 当初は散々な結果であったが、最近は拮抗してきたと肌で感じることができている。

 戦闘条件、近接や鍛錬場の状態にもよるので一概には言えないが、我らの力もそこそこ上がってきているのではないだろうか。

 しかし、ジン様から頂いた武具の性能によるところもあるので、決して慢心はしない。


 そんな中、我ら【近衛部隊】に初の実戦のチャンスがやってきた。

 通常我らは王族の方々から離れることはないのだが、最近の<アルダ王国>各部隊のレベルは異常に上がっており、また【技術開発部隊】の技術力向上による各種魔道具による防衛体制も万全なことから、ダン様より出撃許可が下りたのだ。そもそも常日頃からダン様を始めとした王族の方々は、我らに自由を与えて下さろうとしている。

 我らには勿体ない程のお方たちだ。


 今回の出撃に関しては、ミーナは身重なためロイド様と共にいることになっている。

 

 実はこのミーナ、ここだけの話だが【近衛部隊】唯一の拳闘タイプの武具持ちだが、その名に恥じぬ強さを手に入れている。

 我ら全員、彼女に近づかれてしまったら手も足も出ずに敗北するのだ。


 なので、近接戦闘については彼女に教えを乞いつつ、実戦形式の鍛練では、いかに彼女を近づけさせないかが勝負の分かれ道になっている。

 戦績については聞かないでいただけるとありがたい。

 間もなく、間もなく我らも近接戦闘技術を得ることができるはずだからだ。

 

 もちろんミーナには、遠距離・中距離攻撃技術について教えているので、我らは彼女以上の鍛練を行わないと差は埋まらないのは理解している。


 と、身重でありながらこの強さを持っている彼女が王都に残るのも、我らの安心材料になっているのは否定しない。

 そもそも猫獣人は、子供が産まれてくるまでが人族よりも異常に早いことが知られている上、彼女のレベルであればその後も即業務に復帰できるだろう。

 

 我らの初任務は<コビア大陸>の魔獣共の駆除になった。

 情報によれば、最高戦力は我らと同じ<SS:聖級>らしい。


 この私二コラ、オルド、ハルド、ラムは、<アルダ王国>【近衛部隊】の誇りにかけて魔獣共を一掃して見せなくてはならない。

 

 若干気負い気味だとは自分でも思うが、この力を得てから初実戦であるので、気合が入ってしまうのもやむを得ないだろう。

 私以外の隊員も同じような状況だ。


 程無くして敵地に<転移>すると、見渡す限りの魔獣が待ち構えていた。

 確かに<SS:聖級>もいるが、その他は<S:帝級>や<A:上級>の魔獣が無数にいる。


 同行してきた元魔神軍の虎獣人?タイナル殿は、この状況を見て自らの力不足を悟ったようだ。

 だが、彼女の責任感、捉えられている仲間を思う気持ちからか、震えながらも戦う強い決意が見て取れる。彼女の気概は見習うべきところがある。

 

 しかし、この場は我らの初実戦、そして立派な気概を持つ彼女をあえて死地に送り込むこともない。

 私は彼女に、全てを我らに任せるように伝えた。


 彼女は驚いたような顔をしたが、我等にとってはむしろ都合の良い練習台になると、内心では心を躍らせてしまっていたのだ。


 私が思っていることは、当然他の隊員も思っていることであり、ここで問題が発生した。

 ラムが、この魔獣の対策を自らに任せるように言ってきたのだ。

 

 これにはさすがの私も無条件で賛成することはできない。

 と言うのも、せっかくの実戦なのだ。更にジン様を始めとして神獣のお二人もいらっしゃる。その前で我らの力の一端をお見せすることができるこの栄誉、いくら隊長と言う皆を纏める立場である私でも、全てを譲るわけにはいかない。


 なので、初撃のみ彼女に任せて、残りは私、オルド、ハルドに任せるように調整した。

 これで全員が実戦を行えるか・・・と思っていたら、オルドよりラムに注意が入った。

 オルド曰く、ラムの攻撃威力を調整し、<SS:聖級>の魔獣は残すように言っているのだ。

 私としたことが、うかつだった。


 ラムの広範囲攻撃は、【近衛部隊】随一だ。適当な力で攻撃をしたとしても、我らが感知している魔獣共の強さでは、一切抗うことができずにその命を散らすだろう。


 オルドから指摘を受けたラムも、しぶしぶ条件に従っている。

 という事は、オルドが何も言わなければシレっとこの魔獣達を全滅させるつもりだったのだ。

 ここはオルドのファインプレーと言うべきだろう。

 我が隊員ながら油断も隙もない。


 そしてラムは、我らの模擬戦では牽制にすらならない攻撃を放った。

 だが、あの魔獣共にはこれでも防ぎきれないだろう。

 我らの為に<SS:聖級>の魔獣十匹を残す条件であったが、私はその十匹が心配になってしまったのも事実だ。


 同じように、オルドも十匹の状態が心配になっているようで、その十匹に防御系統の付与を使用するなどと言っている。

 気持ちはわかるが、流石にそれは駄目だろう。


 そんな心配をよそに攻撃は彼らに襲いかかったが、ラムはそもそもその十匹を的にはしていなかった。

 しかし、もしラムがあの<SS:聖級>に狙いをつけていたら、このレベルの攻撃でも全滅だっただろう。


 本当に良くやった、オルド。


 攻撃が収まると、十匹以外の魔獣は霧散しており、地形も変わっている。

 まぁ、あの攻撃であればこの程度だろう。


 よし、ここからが我らの出番だ。

 と、ウェイン殿とマーニカ殿がジン様に救出を終えた報告をしている。

 流石に仕事が早い。我らも早速残りの魔獣を始末しよう。


 しかし、ここで問題になるのが誰がどの魔獣を始末するかだ。

 一応一番強い魔獣は隊長として私が受け持つとして、残り九匹だ。その部分を均等に各三匹で問題ないだろう。


 早速隊員達に提案した所、オルドとハルド両者からクレームが入った。

 ムムム、この私の名采配に対してクレームとは、納得いかないが隊長として和を乱すわけにはいかないので、一応、本当に一応聞いてみよう。


 彼らも一匹でも多くの魔獣を相手にしたいと言う思いが伝わってくる。

 しかしその思いは私も同じだ。

 

 そして私は気が付いた。ジン様の御前にも関わらず見苦しい争いをしてしまっていることに。

 いかんいかん、初めての実戦なので我を忘れてしまっていたようだ。

 こんなことではまだまだ精進が足りないな。ふぅ~、よし、落ち着いた。


 ジン様も、若干呆れ気味に一匹は生け捕りとし、残り三匹を均等に始末するように指示して下さった。

 ジン様、本当に申し訳ございません。


 すると、オルドとハルドが生け捕りを行うのは自分だと主張しだしたのだ。

 私も乗り遅れまいと、その争いに参戦した・・・


 「良いから!!生け捕りは二コラ。わかった!!」


 再度ジン様からご指示を頂く。

 しまった。ついさっき反省したばかりなのに同じことを繰り返してしまった。

 くっ、この二コラ一生の不覚。


 まあ良い。一度気を取り直してこの雑魚共を始末しよう。

 そして、生け捕りは・・・やはり情報を一番持っていそうなのは一番強い魔獣だろう。

 辛うじて他の魔獣よりも強い個体と、上から順に三匹を私の獲物として指定した。

 

 オルド・ハルドもそれぞれ獲物を指定したが、指定された魔物達は何やら不服なようで、耳障りな騒音をまき散らしている。

 少々イライラして力が溢れてしまったからか、奴らは我らから距離を保ち始めた。

 

 こちらもゆっくりと近づいていくのだが一向に距離が縮まらない。

 すると、オルドが逃げ道を防ぐべく結界を張ってくれた。


 これならば問題なく鍛錬ができると言う物だ。

 と思い、心を躍らせた物だが、現実はそう甘くはなかった。


 やつらは一応<SS:聖級>なのだが、何の鍛錬にもならなかったのだ。

 あの魔獣が言っていた魔神と鍛錬ができる日を心待ちにし、この日の初実戦は終了した。いや、終了してしまった。

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