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戦況の確認

 一旦<アルダ王国>に帰還し、ユフロに状況を聞いてみる。


 「<転移>で送った人たちの状態はどう?」

 「回復もすんで、今は食事をしている所です。全員大けがはありませんでしたが疲労が蓄積されているようなので、今日はこの後ゆっくりしてもらう事になっています。」

 「わかった。それと、子供の父親についての情報、直接本人から聞くわけにはいかないから<神の権能>で記憶を読んでおいて。」


 普段は記憶を読むことなんてしないが、今回はしょうがない。万が一辛い過去を思い出させてしまうかもしれないからな。


 やがて、各隊の隊長、副隊長全員が帰還してきたので、円卓の間で報告を行うことにした。

 もちろん幹部全員参加だ。


 まさか視察程度のつもりで、いきなり救出作業が始まるとは思っていなかったので、他の大陸に顔を出すことができなかった。

 そこで、全員で情報を共有する事にしたんだ。


 <ブロス大陸>担当、【管理部隊】副隊長のキャンデルが報告を始める。

 

 「ジョルナス王子と共に、現時点で魔神の配下である魔獣達が攻撃をしている箇所に行ってきました。やはり魔獣は破壊衝動が高く、種類も空中、地中、地上から攻撃を仕掛けられる複数の魔獣がおり、軍隊のように統率されていました。私とグリフ副隊長の調査の結果では、統率するレベルの高い魔物が控えていると判断しました。感知したレベルは<S:帝級>でしたが・・・」


 最後は若干歯切れが悪くなっている。なぜなら、敵の部隊長的な魔物のレベルが想定よりも低いからだ。

 その為、本当は別の魔物が裏に控えているのでは、と疑心暗鬼になっている。

 だが、副隊長二人のレベルは<SS:聖級>の上限だ。更に付け加えると、グリムは【諜報部隊】の副隊長であり、探索系統のスキルは非常に高い。

 その二人の情報であるならば実際に敵のレベルは低い・・・いや、一般的には脅威になるのだろうが、俺達にとっては脅威になるはずもないレベルという事だ。


 俺達と同じ<コビア大陸>に行き、救出の状況を把握しているウェインが、自らの隊に所属するグリフ副隊長に確認する。


 「グリフ副隊長、私の担当した<コビア大陸>ではジン様と神獣様達が地下に隠れていた避難民を救助した。そちらは現在戦闘中なので状況は大きく異なると思うが、敵に飲み込まれてしまった地域に避難民はいたか?」

 「いいえ、探索した限りではやつらに侵攻された場所に避難民の気配はありませんでした。」


 きっと、ジョルナス王子が確実に避難させつつ戦闘しているのだろうか・・・


 次は <カムリ大陸>担当、【遊撃部隊】副隊長のリゲルガだ。


 「こちらも、全方位からの攻撃に耐えていると言った戦場でした。正直、あのままでは長くは持たないでと判断しました。なので、独断で申し訳ありませんが、目についた高レベルの・・・先程キャンデル副隊長の報告にあった部隊長的な魔物を数匹仕留めてしまいました。やはり<S:帝級>レベルで間違いなく、これで暫くは優勢に戦いを進めることができると思います。しかし、あの数だけは厄介ですね。広範囲旬滅系統の力を使わないと、戦局は元に戻ってしまうでしょう。しかし、我らが実施してしまう場合地形が変わってしまうので、その後の復興を考えると躊躇してしまいます。最後に情報ですが、我らのスキルで瘴気が近い場合に制限されるのは、<念話><転移>と言った距離を必要とする物であるようです。」

 

 リゲルガ副隊長と、同行していたホープ副隊長も微妙に申し訳なさそうな顔をしている。

 一応今回は情報収集を主目的としていたので、敵の部隊長?をいきなり仕留めてしまった事が今後の作戦に影響を与えてしまうかもしれないと心配してるのだろう。

 ここはフォローを入れておこう。


 「良い判断だったと思う。こっちもいきなり救出作戦を実施しているのだし、全く問題ない。そちらも避難民はいなかったという事で良いかな?」

 「はい、我等の探索ではおりません。」


 では次だ。ここからは既に魔神の手に落ちている大陸になる。


  <コビア大陸>担当、【諜報部隊】隊長のウェイン。もちろん俺も一緒に行っているが、ウェインに任せる。


 「<コビア大陸>では、確かに瘴気が蔓延しており<念話><転移>そして<探索>は制限を受けた。避難民については既に救出済みだが、大陸の一部、王都周辺に限られるため、まだまだ助けを待っている人がいるだろう。既にあの地は反対勢力がいないのか、レベルの低い魔獣のみが配置されていた。やつらの拠点は王都周辺にはなさそうなので、今後は敵の拠点探しから始める必要がある。」


 そう、確かに<探索>系統のスキルも制限を受けたのだ。と言っても俺達レベルであれば誤差の範囲だが。しかし、<転移>と<念話>は距離に応じて大きな制限を受ける。転移先と通信先の距離が大きければ大きい程スキルが使えない。きっと副隊長達は、微妙な制限を受けた<探索>については気が付かなかったのかもしれない。


 残るは<ドツマ大陸>担当、【管理部隊】隊長のセリアと、<リハク大陸>担当、【攻撃部隊】隊長のマーニカ最後に<ジロム大陸>担当、【遊撃部隊】隊長のエレノアだが、ウェインと同じ報告であり、避難民は探索範囲ではいなかったそうだ。


 もし、彼らの報告の通りに敵の部隊長クラスが大したことがないのであれば、一気に奪還するのも手だが、裏に俺達と同程度の魔物が控えているとしたら、いや、少なくとも魔神がいるのは間違いないので、戦力を分散してしまっては危険かもしれない。


 判断に悩むところだが、今この時でも犠牲が出ているし、救出を待っている者達もいるかもしれないのだ。

 のんびりはしていられない。


 俺は普段は使用制限をしている<神の権能>で<未来視>を発動した。

 しかし、魔神の影響を受けているのか、あの大陸での<未来視>による先読みはできなかったのだ。

 

 そうすると、兎獣人の<戦略術>を持つジュリを筆頭としたメンバーでの検討が必要になるか・・・

 キャンデル副隊長も同様の考えを持ったようだ。 


 「現状の報告は一旦終わりましたので、少々休憩とさせて頂いても良いでしょうか?その間・・・エレノア隊長、ジュリをお借りしてもよろしいでしょうか?」

 「ええ、もちろんよ。」


 もちろん俺も<神の権能>で<戦略術>は使えるのだが、地頭が良くないのか・・・とても残念だがそういう事だ。この辺りについては、あまり触れないでくれるとありがたい。<神の権能>も万能ではなかったという事が証明されてしまったのだ。


 何故か神獣達が俺に寄り添ってきてくれるが、傷口に塩を塗られている気がするような、しないような・・・

 そんな感じで、無駄に休憩時間を使っていたら、再度会議が開催された。


 既にある程度の作戦ができたようで、ジュリが説明をする。

 

 「まずは作戦の前に、新たな情報を説明させて頂きます。既に避難されていた方々から得た情報ですが、魔神の軍も一枚岩ではないようです。魔神の配下には確かに魔神に準ずる力を持つ魔物がいるようですが、その内の一人が今の魔神のやり方に異を唱えて軍から離脱したそうなのです。ウェイン隊長、ジン様、神獣様達が救出した人々はその離反した魔物にかくまわれたそうなのです。しかし、その魔物に同意するものは少数しかいなかったらしく、個人で奮闘しているとの事。先ずは彼女・・・女性だそうですが、その人に接触を至急図るべきではと思います。移動に制限があるようなので、<コビア大陸>にいるのは間違いないので、接触を第一とさせてください。そこで魔神軍の詳細を更に入手することが、確実な勝利につながります。」


 そういえば、彼らの記憶を探るように指示を出していた。その報告を聞いていなかったが・・・そういう事だったのか。

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