<アルダ王国>の方針決定
<フロイライ王国>のジョルナス第一王子が説明を始める。
まずはドルロイ時代の会議の状態だ。
「この世界にはこの大陸を含めて七大陸存在しており、大変申し訳ないが、この大陸のみなぜか技術やレベルの進歩が非常に遅かった。これは後々説明するが、あるお方が封印されていたからと推測される。そこで、我らは技術を供与し、共に研鑽できる仲間となってもらうべく、大陸の代表者として<シータ王国>の国王を大陸代表会議に招待した。その際、ダンジョンでとれる貴重なドロップを持ち込んできたので、返礼として召喚関連の情報と魔道具を渡してしまったのだ。まさかいきなり実施するとは思っていなかった・・・この術には多大な犠牲が必要なことも十分説明してあったのだが・・・そして、その召喚された一名が得られた特殊能力により一部のダンジョンを攻略して行った所までは把握している。だが、突然その召喚者が<シータ王国>から逃亡したために、状態を把握することができなくなってしまったのだ。それからは、<シータ王国>については、要注意の王族が支配している国として注視していた。」
ここまでは、ある程度知っている情報だ。だが、このジョルナス王子の言い方では、彼が<シータ王国>初代召喚者の召喚に必要な情報や道具を供与したように聞こえる。一体何歳なんだろうか?
「そしてつい最近になるが、召喚の儀式で出る波動を我らはキャッチした。やはり<シータ王国>から出たもので、実際に複数名召喚されていたのでしょうな。私の護衛であるこの魔族によれば、ここ<アルダ王国>は<シータ王国>から独立しており、種族差別的なふざけた扱いもなく、とても良い国であると聞き及んでいる。なので、我らは今後<シータ王国>を見限り、<アルダ王国>をこの大陸の代表と認め、会議に参加していただこうと考えていた。その旨をあの愚王に伝えようとしたところ、奴は我らが与えた魔道具を使用して我が国に<転移>してきたので、断罪したのだ。」
ああ、ドルロイが断罪された状態は、<未来視>で確認できていたが、そんないきさつがあったとは知らなかった。
「そして、これからが本題。貴国にとっては少々厄介な話になるのだが、是非とも聞いてほしい。」
そう言って、ジョルナス王子となぜかレークト王子まで立ち上がり深く礼をしてきた。
「やはり何かよからぬ自体が起こっていたようですな。まずはお話を聞かせていただきましょう。」
「ダン王、感謝する。ではさっそく話を始めさせた頂く。まずは、驚かれるかもしれないがこの世界の七大陸にはそれぞれを管轄する神がいらっしゃる。先ほどこの大陸のみ技術などが進んでいないと申し上げたのは、この大陸の神が封印されていたからだ。しかし、今は封印が解かれている事を確認している。」
ジョルナス王子は、<アルダ王国>の幹部を見回す。
「おや、少しは驚かれると思ったが、全員微動だにしないとは・・・」
「ジョルナス王子、実は神についての情報はすでにつかんでおりましてな。実際に我ら<アルダ王国>が神の開放に一役買ったのです。」
あえて俺個人の名前は出さずに、<アルダ王国>としてジョルナス王子に説明してくれている。
「やはりそうでしたか。護衛の二人によると、技術や各人のレベルが突然跳ね上がったと聞いているので、少なくとも神に間接的に接しているのではないかと思っていたのですが正しいようですね。」
ジョルナス王子は、俺たちが神の存在を信じ、さらに神の封印開放にまで手を出したことを知って、話し方が柔らかくなってきた。
威厳を出そうとして無理な話し方をしていたんじゃないだろうか。
「それならば話は早い。すでにある程度情報をお持ちでしょうから率直に申し上げる。我らの大陸を救っていただきたい。そもそもここに二大陸の代表しか来られないのは、各大陸が魔神によって被害を被っているからなんです。我らの大陸も何とか現状維持を保てていますが、時間の問題です。そうすると、この大陸は見渡す限り全てが敵の状態で戦わなくてはならなくなります。お互いのために協力してもらえないでしょうか?」
思った通り、代表がそろわないのは魔神のせいらしい。
「すみません。現状についてお伺いしたいのですが、今のお話ですといくつかの大陸はすでに危機的な状態にあると推測します。その場合、その大陸の神はどのような状態になっているのでしょうか?」
キャンデル副隊長が、俺と同じ疑問を持っていたようだ。
「神を滅することはいくら魔神でもできないため、完全に封印されている状態です。そうすると、神によって与えられていた力もすべて封印されてしまうため、戦力が一気に落ちてしまうのです。」
「魔神とは、どのような力をもって攻撃や封印をしてくるのでしょうか?そして、魔神によって危機的な状態になっている大陸の状況は詳しく教えていただくことはできますか?」
しばらくはキャンデル副隊長に話をしていてもらおう。
「魔神も神も持っている力は強大で、スキルを駆使してきます。魔神と神の力の違いは正直よくわかりません。あまりに強大な力のため、いつの間にか荒野になっていたりするようなので・・・そして、すでに魔神の手に落ちている大陸は瘴気が蔓延っており、破壊衝動のみが存在する魔獣で埋め尽くされています。しかし、この魔獣達はいざと言う時には、魔神によって操作されているかのように軍隊として活動するのです。このため、大陸の国家は、国、そして家族を守るために多数の命が今なお散り続けているのです。」
「ジョルナス王子、辛い説明をさせてしまい申し訳ありません。状況はおおよそ把握することができました。ただ、我らはこの大陸以外にも大陸があることは最近知った状況で、地理的な情報、環境的な情報、貴国の環境等一切の情報が不足しています。安易に助力を了承することはできないこと、ご了解ください。」
キャンデル副隊長は、<アルダ王国>を第一に考えているため、今この場で助勢する確約はしなかった。彼の言う通り、あまりにも情報が少なすぎるのだ。
しかし、今この時でも家族を、国を守るために戦っている人達がいることは忘れてはならない。
この後はどのように話を持っていくのか・・・
キャンデル副隊長は<念話>で幹部達と相談している。
一応流れ的には助力はするが、まずは情報収集が先決だ・・・と当たり前の所に落ち着きそうだ。
父さんもその方針で行くように指示を出している。
その間、ジョルナス王子達には<念話>は聞こえていない為、俺達が新黙しているように見えるので、不安そうな顔をしている。
やがてこちらの方針が決定したため、そのままキャンデル副隊長が話を続ける。
「ジョルナス王子、我ら<アルダ王国>は可能な限り助力できるように、まずは情報収集を行っていきたいと思います。各大陸の現状、そして位置、さらにはどんな些細なことでも構いません。例えば気温や天候、季節や特産物等、何でもいいので知りうる限りの情報を教えていただけますか?」
そして、改めて<念話>で兎獣人の特殊能力を持つロメ、ジュリ、コーロを招集するように依頼している。
彼女たちの力も借りるとなると、相当本腰を入れることになる。
その<念話>を聞いた各副隊長の緊張が一気に上がり、部屋の空気がピリピリしている。
<SS:聖級>を持つものから出される力だけに、ジョルナス王子や護衛の魔族二人、そしてレークト王子も冷や汗をかいている。
この力が強大であればあるほど彼らにとっては力になるので、ほっとしている部分もありそうだ。
しかし、やっと落ち着いて幸せな生活が始まるかと思っていたのに、このタイミングで更なるトラブル・・・本当に勘弁してもらいたい。