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調査前の日常

 やがて会議は進み、<神龍>の町の外れに一般国民進入禁止エリアを設けて、厳重な警戒と防御力、攻撃力を誇る会議場を設置することに決定した。

 この王都中心部にある王城の一部屋から、その会議場入口には相互間のみ通行できる転移門の設置も決まった。


 【技術開発部隊】のガジム隊長が喜びを抑えきれないようでうずうずしている。と言うのも、父さんからの依頼であれば、何を差し置いても達成したくなる性格なのだ。もちろん隊長だけでなく隊員も同じ性格が集まっている。

 いや、少しだけ例外がいた。

 

 俺の前世で知人だった斎藤、そして、今世で知人?だったブゴウ、アレン、ショリー、元辺境伯爵の子供達だ。

 今どうしているのか、少しだけ聞いてみるか?


 「ガジム隊長、父さんの為に、いつも素晴らしい結果を残してくれてありがとう。ところで、ガジム隊長が管理しているあいつら、どうしてる?」

 「ありがとうございます。あいつ等ですか・・・正直言って使えませんな。仕事は粗いし体力もない。いくらレベルがそこそこでもあの根性ではまだまだ先は長そうです。しかし、斎藤に関しては少しだけ改善が見られました。」

 

 何だって、あいつが改心?ちょっと信じられないが。


 「実は、ちょくちょく愚痴をこぼしやがるんで、いかに今が幸せかを教えてやったんですよ。衣食住は保障されているし、睡眠だって三時間は取れる。しかしあいつは、休みがないなどとほざくんです。自分の立場が分かっていないようなので、教育(鉄拳)を施しましたが理解が今一つなので、最終手段を取りました。」

 「えっと、そうなの。あの斎藤が改心するほどの最終手段ってちょっと怖いんだけど。」

 「大したことはありません。まあ、改心したと言ってもまだまだなのは間違いないですが。実は一週間程<神狼>の町にある鍛錬場にいる北野と共に生活をさせたんですよ。あいつと全く同じ条件で。ただそれだけで人が変わったようになりましたよ。今が幸せだって気が付いたんでしょうな。ハハハ。」


 おいおい、凄いことするな。北野は決して出る事の出来ない巨大な敷地を誇る鍛錬場で、常に【諜報部隊】に狙われているので、頻繁に重症を負っている。もちろん睡眠時間もお構いなした。そして週一回は暗部の仕事の一部である自白をさせる為の実験台になっている。ガジム隊長は一週間程北野と同じ環境に置いたと言った以上、斎藤も実験台になったのだろう。まあ、今までの経緯があるから同情はしないが。


 だが、北野の環境と比べると、確かにガジム隊長の言う通り【技術開発部隊】で寝る魔もほとんどなく働く程度であれば、正に天国だと思えるはずだ。

 それは改心もするだろう。流石・・・なのか?まあ良いだろう。


 「そっか、あいつらの近況もわかったよ。ありがとう。」


 とすると、最後の一人である悠里が気になるが、こちらは【治安維持部隊】から時々報告が上がってきている。

 <神鳥>の町にある宿泊施設で今も働き、看板娘のようになっているのだ。

 悠里ともかなり色々あったが、少なくとも俺は今何の蟠りもない。

 

 近い内に皆で遊びに行って、話をしてもいいかもしれないな。


 <アルダ王国>としての方針、そしてすべきことが決定し、各部隊は業務に戻って行く。

 そもそも<神龍>の町は、交易が激しい<神鳥>の町や王都がある<神猫>の町と違い、落ち着いた場所だ。そして<神狼>は、一部秘匿すべき鍛錬場などがある為に、消去法で<神龍>の町に新しい会議場を作成することに決定した。


 もちろん<アルダ王国>内の各地方、元<フラウス王国>等に作ることも可能だが、会議の内容が不明であり、不測の事態に対処しやすい直轄の町で作成することにしたのだ。

 

 全国民に、新会議場建設と<神龍>の町の外れは今後侵入することができない旨カードで通知されている。もちろん各ギルドにも通知が大々的に表示される。


 そして、建設が始まり、凡その完了時期が一週間後になりそうだと連絡が来た。

 父さんは、各装備の点検や訓練を実施する期間も含めて、今から二週間後に会議を開催したい旨書簡に同封されていた魔道具で回答をした。


 ガジム隊長によれば、かなり高出力な魔道具であり、これなら大陸外でも通信できるだろうとの事。

 もちろん壊さない範囲で解析を実施し、ランドル副隊長、ノレンド副隊長を筆頭として同等以上の魔道具の作成に取り掛かっている。

 

 なので、建設の指揮はガジム隊長直々に執っているのだ。

 それならば一週間で完成するというのも納得だ。


 各部隊の隊長も準備に余念がない中、俺と神獣達は建設中の建屋の視察をおこない、そして<神鳥>の町にいる悠里の様子も見に行った。

 これから慌ただしくなってしまうかもしれないので、遠目に見るだけにしておいたが、楽しそうに、忙しそうに働いている姿を見て安心した。

 

 「あの様子ならもう大丈夫ですね?ご主人様。」


 性格が豹変する前の優しい悠里を知っているモモが太鼓判を押してくれた。

 俺も同意し、<神鳥>の町を後にし、<魔界森>の塔五階層に戻った。


 今回会議に参加する国家は、<アルダ王国>、<フロイライ王国>、<ワンダ王国>の三カ国だ。

 相当な距離があるのだが、一度行った事のある場所に転移できる魔道具があるとの事で、当日に<アルダ王国>入口に来るとの事。

 もちろん<アルダ王国>に来た事が有るのはあの魔族の兄弟だろうから、彼らも来るのだろう。

 <ワンダ王国>の方は、一旦<フロイライ王国>に転移後、一緒に来るらしい。


 着々と準備が進んでいる中で、レイラが<転移>してきた。

 彼女も幻獣部隊の中では、<シータ王国>のいざこざ時に一時仲間を全員失うと言った経験をしたため、モモと同じく甘えん坊になっている。


 「ジン様、来ちゃいました。モモ様、トーカ様、ソラ様、シロ様、こんにちは。」

 

 神獣達と女子トークも良く盛り上がっているようで、今日も騒がしくも幸せな日になるのかと思っていたら、本当に用事があってきたらしい。


 「あの、ユージ様のお子様が産まれました。とっても可愛い女の子で、ユージ様はもうデレデレですよ。キャムもしっかりしていて、王族の皆さんも今ユージ様とキャムの元に向かっています。なので、私達も行きませんか?」

 「えっと、産まれたばかり?なんだよね?そんなにすぐに行っても大丈夫なのかな?」


 日本では、少し時間をおかないといけなかった気がするんだが。にしても生まれるのが早い。日本の常識では考えられないな。


 「大丈夫ですよ。キャムのレベルも<SS:聖級>ですので、既に体調万全で、体力も全回復していますから。」


 そうですか、地球の常識は通用しないんでしたね。でもそういう事なら行かせてもらおう。


 「皆、行くよ!!」


 神獣達も赤ちゃんを見られるのでとても嬉しそうだ。

 俺、神獣達、レイラは王都に<転移>して、ユージの自室に突撃した。

 

 部屋に近づくにつ入れてフニャフニャという鳴き声?らしきものが聞こえてくる。なんだかその声だけで癒されるし、自然とニヤニヤしてしまう。


 同行している皆も同じようで、見回すと皆がニコニコしている。

 一応ノックして返事を待つ。


 「ユージ、俺だ。おめでとう。挨拶しに来たぞ!」

 「おっ、ジンか。入ってくれ。」


 俺達はユージとキャム、そして赤ちゃんのいる部屋に入室した。


 「皆さん来てくれたんですか。ありがとうございます。」


 キャムが俺達に深々と礼をしてくる。


 「いや、ごめんねこんなに大勢で来ちゃって。でも可愛いね~。」


 実際赤ちゃんは、キャムと同じく小さい猫耳があり、髪の毛はユージと同じ黒髪だ。目は今あいていないからわからないが、きっと黒目ではないだろうか。本当にちっちゃくてフニャフニャしている。可愛すぎる。


 部屋にいる女性陣は、ほっぺを優しくつついたり、もうなんだか嬉しすぎてしょうがない感じだ。わかるぞ。


 「ユージ、本当におめでとう。可愛いな。こんなに可愛いんだったら俺も子供欲しいな。」

 「そうか?そうだろう。可愛いだろう。なんて言ったって俺とキャムの子供だからな。そういえば、さっきダン王を始めとした王族の皆さんも来てくれた。本当にいい国だな。」


 普通に会話をしていたのだが、この場では少々まずい言葉が含まれていたようだ。


 「ご主人様、それでは私との子供、どうでしょうか?」

 「あ、ずるいモモ、私も・・「私も・・「私も・・」」」


 と、神獣達、そしてこの場にいる幻獣であるレイラが顔を赤くしながら立候補してくる。

 いや、君たちの好意は分かってますよ。俺も皆が大好きだから、本音を言うと嬉しいし、子供も欲しいよ。

 でも、今はダメでしょ?いろんな意味で。


 そんな、緊張感のない幸せな時間を過ごさせてもらっている。

 大陸代表会議まで、残すところあと9日。

 

 

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