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悠里の確保

第三者視点


 ドルロイと北野は<シータ王国>にある中で一番Lvの高い<A:上級>の地下迷宮(ダンジョン)攻略を急いでいた。

 

 といっても、全ての移動そして戦闘はモモに任せており、彼らはモモの背中に乗っているだけなので楽なものだ。

 

 もちろんモモが<A:上級>の魔獣に手こずるわけもなく、相当な速度で攻略をしている。

 稀に出てくるドロップはポーションばかりなので、この地下迷宮(ダンジョン)はそのような設定になっているのだろう。

 出てきたアイテムもモモによって保管されており、北野とドルロイはモモの背中で欠伸をしている状態だ。


 しかし、北野はこの地下迷宮(ダンジョン)で異世界転移で手に入れた能力以外の<スキル>を手に入れる事を目的としているために、フロアボスに関しては、モモの力で最大限に弱らせた後に北野が止めを刺している。


 この地下迷宮(ダンジョン)は、全70階層であり、既に深層に分類されている65階層まで到達している。

 この時点で北野のステータスは、


---------------------

名前:北野 信二(召喚者) 

種族:人族

Lv:51(A:上級)

HP:700/700

MP:600/600

MT:900/900

【スキル】

 <特殊能力:心身操作>

 <身体強化:Lv5・・上級>

 <物理耐性:Lv5・・上級>

---------------------


 となっている。


  一方、北野の命令で<シータ王国>王都の奴隷商に囚われているエルフを見つけ出しに行っているアレン、ブゴウ、ショリー一行はステータスを生かして全力で休みなく王都に向かって走り、目的地に到着して必死で捜索していた。

 だが、話を聞いていた地下室はもぬけの殻だった。

 既にエルフ達はウェインにより救出された後なので、当然なのだが。


 三人は他の奴隷商の建屋もくまなく探したが見つけることができなかったため、やむを得ず悠里のみ取り残されている<神狼>の町に全力で引き返した。


 「おい、ショリー、どうするんだ?あの北野とか言うのを怒らせるとまずいぞ。」


 「そんな事言ってもしょうがないでしょ?いない者はいないんだから。」


 「そうだな、正直に伝えるしかないだろう。ドルロイ王もいることだし、何とかなるだろう。」


 と三人で今後の相談をしながら<神狼>の町にたどり着いた。

 本来は北野達もそこにいるはずだったが、実際にそこにいるのは木に背を預けて力なく座っている悠里と、悠里を襲おうとして返り討ちにあった魔獣の数々だけだった。


 おびただしい魔獣の数を見て若干尻込みしてしまうが、ショリーは恐る恐る悠里に話しかける。


 「あの、悠里さん?北野さんとドルロイ王はどこにいらっしゃるのでしょうか?」


 「あいつ等ならもうここにはいないし、きっと戻ってこないわよ。」


 辺境伯の子供である三人はお互いを見ている。状況が把握できていないようだ。


 「あの、戻ってこないって・・」


 「そのままよ!!」


 悠里はかなりイラついているようで、それ以上ショリーは聞くことができない。


 そして、暫く沈黙が続いた状態であったが不意にトーカが彼らの前に現れた。威圧をする必要もないので、人化したままで散歩でもするように魔獣の死骸を縫うように歩いているのだ。


 もちろんジンの命令で彼らを捕獲するためだ。


 「皆さん、久しぶりです。そこの<重力魔法>使いはこの姿でお会いするのは初めてですかね。先の戦いでは好き勝手して頂いたので、是非お礼をしにまいった次第です。特に敬愛するジン様に深手を負わせたのは許せることではありません。」


 トーカは、同じ契約魔獣の幻獣達が大幅にLvアップしたため、<神の権能>の力が上昇している。悠里はともかく、辺境伯の子供に対しては力を極限まで抑えないと、この溢れ出る力だけで最悪死亡してしまう可能性があるので必死で抑え込んでいる状態だ。

 あまりに強大な力を持つ者は、普通の者が想像もし得ない苦労があるようだ。

 力を抑えつつも、ジンと話す時とは違い、丁寧な言葉を使って会話を継続する。


 この状態を全力であると勘違いした悠里は、怒りに目を見開いて今にも攻撃を開始しそうな雰囲気だ。きっと北野に捨てられた事も彼女の怒りを増幅させているのだろう。


 そして他の三人は・・・、トーカが極限まで力を抑えた状態でも既に大きな力の差があるので、既に口を開くこともせず、視線も外して下を向いている。恐怖からか流れる汗をぬぐう事もせず、三人で自然と寄り添った状態で震えているのだ。


 「何よあんた。あの戦いの場にいたやつの誰か?覚えてないけど・・私たちの力に怯えて結局は逃げた連中の内の一人でしょ?そんな力で私に歯向かうなんていい度胸してるじゃない。今手加減できる状態じゃないけど文句言わないでよ!」


 「いえいえ、文句なんて言いませんよ。あなたの力など私には通用しませんから。重ねて言いますが、ジン様を傷つけたこと、死ぬほど後悔してもらいますよ。」


 「あんたジンの何?そんな偉そうなことを言うなら、あの時私の攻撃を防げたんじゃないの?それができない程度の力だから防げなかったんでしょ?それともここにあの凄い力を持った獣がいないからいい気になっちゃってる?だとしたら大間違いよ。」

 

 「フフフフ、面白いことを言いますね。そのもすごい力を持った獣、あなたたちに連れ去れた神狼(フェンリル)の事を言っているのでしょうか?・・同じ強さの者達があの場にどれほどいたか、その小さい脳みそで思い出せますか?」


 「は?四匹でしょ、バカにしてるの?」


 「正解です。良くできました。その力を持った者の内の一人が私であると思いつかない時点でお里が知れていますけれどね・・」


 辺境伯の子供三人は、最早震えが抑えられずに立っていることもできないようで座り込んでしまっている。


 トーカは意図的に力を徐々に開放している。

 あの三人が死なない程度を見極めつつだが・・。

 最終的には必要に応じて、あの三人には退避か<神の権能>を使用して力の奔流による影響を受けないように防御することも考えているようだ。


 「なっ、あの獣があんただって言うの?」


 徐々に増幅する力に悠里も焦りを見せている。


 「そう言っているのですよ。」


 トーカはこれ見よがしに空中、地面に競技大会で幻獣達が見せた無限ともいえる魔方陣を展開した。

 

 最早辺境伯の子供は気を失っており、トーカの<神の権能>により保護されている状態だ。


 「ふざけんじゃないわよ!!」


 悠里は最大の力を持って<重力魔法>をトーカに向けて使用した。

 しかし、確かに能力が発動した感覚はあるのだが、何も起こらない。


 「な、なんで?なんで何も起こらないの?」


 「そうですね、その足りない脳みそでもわかるように説明して差し上げましょう。あなたの<重力魔法>は確かに素晴らしい能力でした。ですが、既に私達も同じ能力を使うことができるのですよ。ですから、あなたが加えた力と逆方向の同じ力で相殺させて頂きました。」


 「私が使った力と全く同じ力、同じ範囲じゃないとこんなに何も起こらないわけないじゃない。そんな事できるわけないでしょ!」


 「それができると言っているのですよ。」


 一気にトーカの力が増え始める。


 「ヒッ・・」


 流石に悠里も力の差を悟ったのか、座り込んでしまった。


 「あらあら、これでもまだまだ全力には程遠いんですけどね。これでは戦いにすらなりませんね。ですが、ジン様を傷つけた報い・・受けて頂きますよ。」


 そう言って、魔方陣はそのままにゆっくりと悠里に近づいていくトーカ。


 「こ、こないで!」

 

 必死に能力を発動しながら後ずさる悠里、しかし立ち上がることができずに能力も相殺され、トーカの歩みを止めることはできない。

 

 こんなに大量の魔方陣を発動しつつ悠里の能力を完全に相殺するなど普通はできる事ではないのだ。

 ようやく悠里もその異常状態に気が付くが、最早手遅れだ。


 トーカは悠里の首を掴むと、片手で悠里を持ちあげた。


 「や、放して。苦しい。」


 「面白いことを言いますね。ジン様はもっと苦しい思いをされましたよ。」


 悠里はその言葉を聞いて絶望し、気を失ってしまった。


 「あら?困りましたね。まだお仕置きは済んでいないんですが・・やりすぎてジン様が悲しむといけませんから戻りましょうか?」


 そう言って、気絶している辺境伯の子供三人と悠里と共に<転移>を使って<アルダ王国>に移動した。 

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