スキル取得へ向けて初討伐(1)
ようやく<神狼>内部に転移し活動します。
ウェインがここ<神狼>を出てから、俺はモモと共に基本Lvを上げつつ敵の情報を得ることができるスキルを手に入れることとした。
<テイマー:Lv10・・神級>を使用すれば魔獣の情報は丸裸にできるのだが、今後は、今回のクズ共のように、人族を相手となる場合もあるだろう。
それに魔獣以外の種族、例えば、辺境北伯領<アルダ>に住んでいるエルフ、ドワーフ、魔族、龍人族、獣人族などはテイムの対象外であるため、これらの種族も対象としたスキルが必要になる。
つまりは、種族に「獣」の文字がない種族、または有っても種族に「人」の文字が言っている種族は<テイマー:Lv10・・神級>では、情報を得ることができないのだ。
よし、いつもの行ってみよう!!
「水~晶~さ~ん、教えて~」
『・・・いつもながら突然ですが、どの様なご用件でしょうか?』
若干呆れられている感はあるが、ここでめげてはいけない。
「いや、ね、敵の情報を得るスキルを取りたいって話をしたじゃない?具体的なスキル名を聞いていなかったし、どの魔獣を狩ればいいのか、どの階層に行けばいいのか、全く分からないから教えてもらおうかと思って・・」
『承知しました。魔獣に関しては現時点では3階層に生息している<マジック・ゴブリン>を討伐していただくと、<鑑定眼>を手に入れることができます』
うぉ~い、俺でも知っている最弱ランキング安定上位に位置する<ゴブリン>、若干種族は進化しているようだが、こいつを倒せばいいのか??
管理者権限で、俺には攻撃できない上に、こんな簡単な<ゴブリン>で良いの??
逆に不安になってくるけど、水晶さんの言う事には間違いはないだろう。
『ジン様、今後の<テイマー:Lv10・・神級>をうまく活用するためには、他にも取得して頂いた方が良いスキルがあります。現在<神狼>の中では、モモ様とジン様、そして私は念話が使用できる状態にしてありますが、<神狼>の内部でしか範囲は及びません。例えば今回のように外部に使いを出した場合、<念話>で交信することができれば、即情報を得ることができます。その他にも取得していただきたいスキルはありますが、先ずは<鑑定眼>と<念話>を取得する方向に変更されてはいかがでしょうか?』
『私もそう思いますご主人様。万が一ご主人様と離れた位置にいることになっても、常にご主人様とお話していたいです。私自身<念話>は持っているのですが、他の<神獣>の交信で主に使用していたため、他の種族に対する交信がうまくできないのです・・』
モモが、本来の目的とは少しずれているが、水晶のアドバイスを好意的に受け入れている。
俺としても、特に問題ないためその案を受け入れることにした。
「とすると、追加で討伐する魔獣は何になるの??」
『<マジック・ゴブリン>です』
変わらないんかい!!同じかい!!
「そのままアドバイス無しで討伐していっても、問題なかったんじゃないの?」
『いいえ、ジン様はスキルで魔獣の情報を得ることができるため、<マジック・ゴブリン>討伐時に、スキル表示が<鑑定眼>だけではなく、<念話>も出ていたとしたら、「あれ?水晶さん使えないな~」なんて思われるかもしれません。そんな感じに思われたら、ちょっと悔しくないですか?』
「君のプライドのためにアドバイスしたんかい!!」
最近の水晶さん、フランクになってきた気がする・・と言うよりも、俺に対する扱いが適当になってきたような・・
俺自身も、記憶が戻ってモモと水晶さんと接し始めてから、かなり気持ちが楽になっている上、この異世界の家族が皆性格がとてつもなく良いので、明るい性格になってきた自覚はある。
『まあ、まあ、ご主人様。いいじゃありませんか。私はご主人様と一緒にこの世界で初めてのお散歩に行けるので、とっても楽しみです。お弁当は何にしましょうか??わくわくしてしまいますね。』
モモがとても嬉しそうに話しているが・・ そうか、君にとって魔獣討伐はお散歩ですか・・
実は、モモの種族は<神獣>であり、食事はしてもしなくても良いらしいが、俺が制御室で過ごしている時、モモは食事を用意してくれている。
その時は人化して作業をしているのだが、紳士な俺は上着を必ずモモに渡して着てもらっている。
決して、チラリズムとか考えてないからな。
コホン。で・・だ、肉は魔獣の物だと何となくわかるが、その他はどのように材料を手に入れているのかとても気になる所だ。
明らかに加工された布団や、食器も不揃いではあるが準備してくれたのだ。
「モモ、食事の材料や布団とかは、どうやって手に入れたの?」
『この<神狼>は200階層あるため、各層によって特色があります。中には一面森の層や、平原の層もあるため、野菜や果物などはそこで入手しています。また、お肉は高ランクの魔獣程おいしい傾向があるので、深層で準備しています。その他については、<神狼>を攻略している冒険者が死亡した場合、冒険者自体は魔獣に処理されますが、装備や荷物は放置されます。これらを水晶さんにお願いして回収してもらっているんですよ。中にはご主人様がお持ちのレアスキル、<空間魔法>を持っている高ランク冒険者がいます。これは大量の荷物を異空間にしまうことができますが、本人が死亡した場合、異空間の荷物は外に排出されます。しかし、高ランク冒険者でもほとんど<空間魔法>は持っていないので、マジックバックと言う魔道具に荷物を入れているようです。ちなみに、中から低ランク冒険者は普通に荷物を持っているようですよ』
モモが初めてかなり長くしゃべったような気がするが、良くわかった。
『時々、騎士の格好をした者も来ますが、こちらは大概マジックバックは持っているので、おいし・・・嬉しいですね』
つまりは、悪く言えば「追いはぎ」、良く言えば「有効活用」だな!
しかし、今回のLvアップは正直あまり時間がない。と言うのもウェインが帰還するまでの間に実行したいのだ。
なぜなら、ウェインが持ち帰る予定の父上の手紙の内容によっては、即ここを出て、<アルダ>に帰還する必要があるからだ。
そのあたりを踏まえて、少しでも早くLvアップの作業を開始しよう。
「水晶さん、なるべく早くLvを上げたいんだけど、さっきの話だと討伐対象は3階層の<マジック・ゴブリン>だよね? その階層だと、他の冒険者とかがいるから、攻撃されない俺らのことをみて不審がらないかな?」
『ジン様のおっしゃる通りです。そのため、更なるスキルを持つ<ヒュージ・ゴブリン:Lv70・・A(上級)>に討伐対象を変更することをお勧めします。階層は84階層になります。本来は、環境に慣れて頂くために3階層をお勧めしましたが、時間短縮と秘匿性に重点を置くこととし、提案させていただきます』
ウェインより強いのかよ、<ゴブリン>のくせに。
しかも、<ヒュージ・ゴブリン>がたくさんスキルを持ってても、俺がスキルをゲットできるかはわからないんだよな。
ま、攻撃されないし、他の冒険者や騎士達に比べたら天国だな。
時間がもったいないし、
「モモ、早速行くか。時間がないから残念だけど弁当は現地調達としよう」
『承知しました、ご主人様。 あの・・・せっかくのお散歩なので、人化してもいいですか?』
なぜか、少し上目遣いで聞いてくる。
<神狼>の姿でも可愛すぎる。も~OK。
「いいぞ、但し俺の上着を着てくれな」
『はい、ありがとうございます』
モモは即人化した上で、俺の上着を羽織り、俺の腕に抱き着いてきた。
役得役得。
「じゃ、行ってくるよ」
「いってきます」
俺とモモは水晶さんに一声かけて、管理者権限を使用し84階層入口にモモと転移した。
入口から階層を見渡すと、森と言うほどではない密集度の木が生えている、林が広がる地形となっていた。
偶然、この階層の入口は少し高台になっているのだが、明らかにLvの高そうな、全身が紫色をした少し不細工な顔を持つ魔獣が闊歩しているのを確認することができた。背丈は2m程だろうか・・
Lvが高く、何かスキルを持っているのだろう。こちらの気配に気が付いて、一瞬こちらを向く者もいたが、攻撃対象外になっているからか、まるでそこらに転がっている石のように興味を持たれずに無視された。
俺は早速<テイマー:Lv10・・神級>を発動し、彼らを見た。
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名前:ドノバ
種族:ヒュージ・ゴブリン
Lv:70・・A(上級)
HP:600/600
MP:900/900
MT:300/300
【スキル】
<統制:Lv3・・中級>
<身体強化:Lv5・・上級>
<念話:Lv4・・中級>
<棒術:Lv5・・上級>
<物理耐性:Lv3・・中級>
【称 号】
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やっぱりウェインよりは強そうだ。
管理者権限があるからよかったが、以前の俺のままこんなのが目の前にいたら、光の速さで土下座してたに違いない。そしてその先は、土下座の姿勢のまま「プチッ」と潰されるのだ・・
それ程圧倒的なステータスだ。
でも、こいつは<念話>はあるが、<鑑定眼>はない。そもそも魔法寄りではなく、体術寄りなステータスだから致し方ないのかもしれない。
しかし、はっきり言って<棒術>はイラン。ご都合主義の様だが、<テイマー:Lv10・・神級>の契約であれば、不要なスキルは排除できるのだが・・
今回は討伐によるスキル取得だからしょうがない。
討伐で必ずスキルを得られるわけではないのだから、希望のスキルがある者は即狩って行くことにした。
目につく魔獣を全て狩る方法もないことはないのだが、俺は初の魔獣討伐のため、MT(精神耐性)がモモとの契約で桁外れに高くはなっているが、そもそもMTが緊張や、初めてグロい物を見たときに効果があるものかどうかがわからないため、単体での狩りを選択した。
「モモは、手を出さないでね」
「承知しました、ご主人様。気を付けてくださいね」
そして俺は初討伐を行うために、入口から魔獣に向かって駆け出した。
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