表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/169

<シータ王国>の位置づけ

 我はドルロイ、<シータ王国>の国王である。

 前回の<アルダ王国>に対する攻撃は大失敗であったが、今回の<シータ王国>に伝承される秘伝中の秘伝である召喚術を使用してまで実施した甲斐もあって、辺境東伯領を取り戻すことに成功した。


 召喚時に6,000人、そして攻撃を受ける囮の騎馬隊に扮した250人の<シータ王国>国民が犠牲になっており、更には、召喚者の1名はいつの間にか逃亡し<アルダ王国>にいた上、2名は今回の戦闘で死亡してしまった。


 しかし、得た物も大きい。

 やつらはとてつもない力を持っている者が多数いるが、その内の幻獣と言っていた者達は全滅、更に何といっても神狼(フェンリル)をこちらの手中に収めたのだ。


 こいつがいれば、今後他の領地を奪還するのも夢ではない。

 この神狼(フェンリル)を実質操作している召喚者の代表のような北野には、エルフを与えておけば問題ないだろう。


 しかし、気になるのは地下迷宮(ダンジョン)である<神狼>に入れなくなっていることだ。


 今までそのような状態になった地下迷宮(ダンジョン)は聞いたことがない。

 伝承によれば、その昔に召喚した者によりいくつかの地下迷宮(ダンジョン)が攻略され、そこに管理者なる者がいる事を突き止めた。


 その管理者に<シータ王国>のとある貴族にならせたことが<シータ王国>の<S:帝級>を持つ者を継続して輩出できる、国家の最重要機密事項になっている。


 管理者によって、地下迷宮(ダンジョン)に入場制限をかけることはできるが、その場合は入口が見えなくなるのだ。もちろん入口があった位置に侵入しても何も起こらない。

 これは攻略された全ての地下迷宮(ダンジョン)で言える事なので、例外はない。


 すると、今回の<神狼>については膜のような物で覆われている状態であり、地下迷宮(ダンジョン)が生まれ変わっているのか?


 あの神狼(フェンリル)は、この<神狼>の守護神獣であると考えられる。<アルダ王国>の連中には、こいつと同じ強さの獣があと3匹いた。つまり、各辺境伯にある4大地下迷宮(ダンジョン)の数と一致し、そして地下迷宮(ダンジョン)の名前と獣の容姿が一致しているから容易に想像できる。

 

 その守護神獣すら入れないなど通常は考えられないのではないだろうか。

 守護神獣については伝承にすらないのでよくわからないのだが。


 総合的に考えると、守護神獣が地下迷宮(ダンジョン)外部で活動できる状態になっているために、新たな地下迷宮(ダンジョン)の守護神獣を生成しており、入れない・・・のだろうか?


 少し話がそれたが、地下迷宮(ダンジョン)は生活を行う上で必須なのは言うまでもない。

 食料、アイテム、各素材などの重要な入手先だからだ。


 そして、この大陸にある39カ国・・いや、忌々しいが<アルダ王国>を入れて40カ国のどの王も知らないだろうが、この大陸以外にも大国が存在し、大陸の代表を集める会議がある。当然この大陸の代表は、最強国家である<シータ王国>となっている。


 会議の際に、地下迷宮(ダンジョン)産のアイテム等は重要な取引品になるのだ。

 最初の召喚を行うためのアイテムは、当時の<シータ王国>が多大な犠牲を出して強引に地下迷宮(ダンジョン)を攻略しつつ得たドロップアイテムと交換したのが始まりなのだそうだ。


 今、既にその時に入手したであろう<シータ王国>の秘宝ともいえるアイテムは既にないが、同等のアイテムがある。しかし残りは一つだけ・・・召喚用のアイテムをもたらした国へ転移できる物のみだけが残っている。

 これは、次回の会議開催時に使用するもので、易々と使うわけにはいかないのだが・・。


 よって、<シータ王国>の権威を復活させるためにも、各辺境伯にある地下迷宮(ダンジョン)産のアイテム、素材等を会議前に入手し、有用なアイテムと交換する必要があるのだ。


 そのためには今後どうして行くか・・・

 少なくとも<シータ王国>の王城は召喚術の影響か、既に廃墟のようになっており、格式も何もあった物ではない。

 ここ、辺境東伯領は全ての建物や設備が洗練されているので、新たな王都とするのが良いだろう。


 だが、若干の距離はあるとはいえ即敵国である<アルダ王国>にたどり着ける位置にある為、奴らは徹底的に排除する必要がある。

 そして、生まれ変わっているであろう<神狼>がこのまま変わらない状態であるならば、早急に他の辺境伯領にある地下迷宮(ダンジョン)も確認する必要があるだろう。

 しかし、きっとすべて同じ状態であるとは思っている。なぜならば、残りの辺境伯領にある地下迷宮(ダンジョン)の守護神獣と思われる獣も地下迷宮(ダンジョン)の外に出ており、どう考えてもここ<神狼>と同じ状態になっているはずなのだ。


 とすると、この4大地下迷宮(ダンジョン)ではなく、その他の地下迷宮(ダンジョン)のドロップアイテムを早急に収集するのが正解か?

 その場合は、残念ながら今の<シータ王国>の戦力はほぼゼロであるため、こいつらを頼るしかなくなる。


 この北野は、多数の犠牲・・同じ召喚者を犠牲にしても動じない冷淡な心と、相手を翻弄することができる頭脳を併せ持っている。

 こいつにある程度今後の方針を決めさせるのが良いだろう。

 そもそも最大戦力もこいつの配下にあるのだしな。


 「北野、<神狼>の地下迷宮(ダンジョン)に入れなくなっていることは想定外ではあったが、ここ辺境東伯領にはこれ以外にも地下迷宮(ダンジョン)は多数存在する。どうだ、そこの獣を使って攻略してみないか?これは秘匿事項だが、地下迷宮(ダンジョン)を攻略するとかなりのメリットがある。一番のメリットは、その地下迷宮(ダンジョン)を自由にできるという事だ。」


 「めんどくせーな。自由って言われてもよくわからねーしな。」


 「うむ、そうだったな。かなりのメリットがあるのだが・・・例えば北野が気にしていたような宿泊場所も地下迷宮(ダンジョン)の中で自由に作成することができる。そして、そこで生み出される魔獣も自由自在な上、ドロップアイテムも労せず得ることができるのだ。」


 「ドロップアイテムってのは例えば?」


 「そうだな、地下迷宮(ダンジョン)のLvにもよるのだが、例えば自らの能力をかなり底上げする武器、場合によってはポーション・・回復薬だな。そして、そこにいる魔獣が持っているスキル・・・お前が持っているような能力を得られる可能性が高くなるのだ。」


 「おいおい、良いじゃねーか。こっちは<反射攻撃>と<魔力強奪>が無くなっているんだ。その分補強するのも悪くない。早速行くか?」


 「うむ、では向かうとするか。なるべくLvの高い地下迷宮(ダンジョン)が良いだろう・・とするとここからは少々時間がかかるが<A:上級>の地下迷宮(ダンジョン)があるな。だが、即向かってしまうと、王都に行かせたやつらが我らを見つけられない可能性もあるな。」


 「あ、じゃあ私がここに残るよ。」


 腕を骨折している女がそう言ってきた。


 「では行くか。距離があるからその獣に乗っていくのはどうだ?」

 

 「いいな。そうするか。だが、<強制隷属>を持つこいつが死んだら能力が解ける可能性が高い。そうすると完全に俺達は反撃することができなくなるので、こいつは別のどこか決して見つからない場所に監禁しておく必要があるな。」


 やはり北野は冷淡だ。一応?は仲間であろうに、己の利益を最優先するその姿勢。冷淡ではあるが尊敬にも値する。

 確かに北野の言う通りなのだ。とすると・・・こいつらを一週間かくまった湖畔が良いだろう。

 あそこは自給自足もできるし、<シータ王国>の果てと言ってもいい場所だ。湖畔の周囲一帯は深い森があり、何人たりとも外部からは侵入できないだろう。

 ただ残念なのは、王都にある特殊な部屋から王族であるこの私が魔方陣を直接起動しないとその場に<転移>できないことが難点だ。

 これも、初代の召喚者が作った物なので、万が一の修復もできない。


 「北野、そうすると残念だが一旦王都に行き、例の湖畔にこ奴を飛ばしておくのが良いのではないか?」


 「そうだな、それしかないだろうな。」


 そういって獣に我と北野、そして<強制隷属>を持つ佐藤とか言う者が乗ると、北野は女に言い放った。


 「悠里はここに残れ。万が一反撃しにあいつらが来たら迎撃しておけよ。」


 そういうと、返事も聞かずに獣を走らせたのだ。

 女は何か叫んでいるが、最早何を言っているかわからない。だが、言いたいことは分かる。

 この状況で<アルダ王国>のやつらが攻めてきたら、あの女など一瞬で消し炭なのだからな。


◇◇◇◇◇◇


 だが、ドルロイは知らない。本人は国際会議にこの大陸代表として出席しているつもりだが、初期の召喚を実施した時代から、他の大陸の実験台にさせられている事を・・・

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ