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召喚者たちの攻撃

第三者視点になります。


 ジンが悠里からの不意の斬撃を受け、重症を負った。

 指揮を執っている【管理部隊】のキャンデル副隊長は撤退を指示し、ジンを逃がすべく布陣が組まれる。

 

 その中には、副隊長に任命されたばかりの面々もおり、<シータ王国>に対する怒りか、<アルダ王国>に対する忠誠か、はたまたその両者か・・


 【遊撃部隊】副隊長のリゲルガは、手に持つ剣に炎を纏わせている。

 【攻撃部隊】副隊長のホープは雷を大きく纏う大槌を上段に掲げている。

 【防衛部隊】副隊長のイノザは、魔道具の袋を多数出現させており、手には砂の棒を二本持っており、魔獣も召喚済みだ。

 【治安維持部隊】副隊長のワイムは、金と銀の短剣を両手に持っている。

 【諜報部隊】副隊長のグリフは、徒手空拳で戦う姿勢を見せている。


 だが、そんな彼等を、<重力魔法>を持つ悠里は一瞬で身動きできない状態にしてしまい、追撃を行うべく彼らに近づいていく。

 

 その歩みを止めたのは、【諜報部隊】隊長であるウェインだ。

 動きが取れなくなっている副隊長達を<影魔法>で収容後、<重力魔法>の及ばない範囲に再度出現させたのだ。

 

 そして、ウェインは全員に聞こえるようにこう言った。


 「我は<アルダ王国>幻獣部隊隊長のウェインだ。隊員よ、作戦を遂行せよ!!」


 幻獣以外は困惑している。当然指揮管理しているキャンデル副隊長も同様だ。

 だが、流石は<アルダ王国>の精鋭、困惑は一瞬で全員即撤退行動をとり始めた。


 それを追撃せんと、召喚者と<強制隷属>の支配下にあるモモが動きを見せる。

 そこに立ちふさがったのが、ウェイン、マーニカ、セリア、エレノア、ユフロだ。


 ユフロは状況が許せば、レイラと共にジンの傍にいるはずだったが、戦力を温存できる状態でないと判断した為、残ったようだ。


 ジンはレイラに抱えられ、<光魔法>での治癒を行われながら遠ざかり、<転移>を使ったのか既に姿は見えない。 

 

 ウェインの幻獣部隊に対する指示はこの事であると即座に理解したキャンデル副隊長は、更なる指示を飛ばした。

 ウェイン隊長は、最悪の事態が起こった際には幻獣部隊が足止めを行うので、残りの全員に退避指示を行うように、予めキャンデル副隊長に伝えていたのだ。


 『幻獣部隊を除き全員即退避。神獣もジン様の護衛を!!彼らの意思を無駄にするな!!!』


 キャンデル副隊長は、幻獣部隊がここで散るつもりであることを理解してるのだろう。彼らの命を賭した忠誠に少しでも応えられるように必死になり、強めの指示になったのだ。


 神獣は、モモを心配そうに見るも踵を返してジンの後を追っていった。

 モモは血の涙を流しながら追撃せんと動くが、そこにウェインが立ち塞がり、<影魔法>による拘束を試みた。他の幻獣も最大戦力であるモモに対して対処しようとした為、意識をモモに持っていかれた。

 そのために召喚者に対する警戒が薄くなり、マーニカが<心身操作>の対象となってしまったのだ。


 この<心身操作>は<強制隷属>と比べると強い力ではないが、幻獣レベルであれば不完全ながら操作できてしまう能力なのだ。


 マーニカは<心身操作>の能力に抗っているために、完全に動きが止まっている。

 そこに、ピアスをした<魔力強奪>を持つ者がやってきて、動くことができないマーニカの頭を掴んだ。

 直接触れることで能力を最大限に発動できる状態になった為、マーニカは力なく倒れてしまった。

  

 他の幻獣達はこの状況を目にしているが、隔絶した力を持つ神獣であるモモを抑え込むのに全力で、助ける余裕すらないのだ。


 魔力を一気に失ったマーニカは意識がもうろうとしているようだが、ジンに対する忠誠からまだ攻撃をしようとしている。


 そこに、絶大な魔力を強奪して力が溢れている<魔力強奪>を持つ召喚者が、倒れているマーニカに向かって拳を振り下ろした。

 その拳はマーニカの心臓を貫いた。しかしマーニカは最後の力を振り絞って貫かれた腕を握りつぶしたのだ。マーニカの命の炎が消えかかっているためか、命を脅かす攻撃を受けたためかはわからないが、<心身操作>が外れたのだ。


 そして、叫び声をあげながら暴れるピアスをした召喚者の腕をいまだに放さず、最早スキルを使う余力もないのか、<念話>ではなく、何とか声にした最後の言葉がここにいる全員に聞こえる。


 それは、最後まで敬愛する主人に尽くし続ける覚悟の声だ。既に命の炎は消えかかっているので大きな声ではないが、心の叫びからか、確かにこの場の全員に聞こえたのだ。


 「幻獣部隊の皆、先に行きます。例えこの身が無くなろうとも、心は皆と共にジン様の傍に。」


 最後の魔力と生命力の全てを体内で異常循環させたのだろう、握りつぶした手を放すことなくマーニカの体はピアスの召喚者を巻き込んで大爆発を起こした。

 爆発の煙が収まった後には大きなクレーターがあるだけで、ピアスの召喚者、そしてマーニカの姿も既にない。


 モモは、<強制隷属>の影響を受けていながらも、その力に対して抗い続けている為、幻獣部隊には神レベルの力は出していない。何とか<アルダ王国>に対する被害を最小限に食い止めようとしているのだ。これが今のモモに出来る最大の抵抗になっている。


 幻獣部隊が全力を出して拮抗している状態を作り出しているのは、モモが全力を出していないからに他ならない。

 幻獣部隊がたとえ契約魔獣として<神の権能>を使えるとしても、本物の<神の権能>を使えるモモには太刀打ちできないのだ。


 <心身操作>を持つ茶髪の召喚者は<強制隷属>を持つ眼鏡の召喚者に対して、モモから<反射攻撃>を持つ召喚者に攻撃させるように指示をした。


 その際モモに対して、


 「おい、そこの獣、俺達が憎いか?お前に一度だけ反撃のチャンスをやる。そこにいるやつに一度だけ攻撃させてやるんだ。精々頑張るんだな。」


 と煽っている。

 これは<心身操作>を持つ茶髪の召喚者がモモに対して本当の力・・神の力を使わせるように仕向けているのだ。

 もちろん、この状態で<心身操作>によりモモに神の力を使うように操作を試みている。

 通常ならば<心身操作>の影響は受けないが、この状況故か、少なからず一時的に操作されてしまったようだ。


 モモはすかさず<反射攻撃>を持つ召喚者に攻撃を行った。モモからすると、愛すべき主人を前世でも害し、この世界でも害した彼等を許すことはできず、茶髪の召喚者の思惑通りに全力で<反射攻撃>を持つ召喚者に攻撃を行ってしまったのだ。


 当然その攻撃は反射され、近くにいたセリア、エレノア、ユフロを飲み込んだ。

 ウェインはモモを抑え込む必要が無くなった瞬間に<反射攻撃>の背後に<転移>し、暗器を使用してその頭部を爆散させた。

 だが、攻撃を反射してしまった後であるため、セリア、エレノア、ユフロは力なく倒れており、やがて体が徐々に消滅し始めた。

 

 ある意味モモの全力攻撃を受けて姿が残っていたのは、幻獣部隊のLvの高さがあって成し得たことだが、既に命は散ってしまっている。


 こうなると、ウェインだけではいくら力を抑えているとはいえ、神獣であるモモを抑えることなどできない。ウェイン自身もそのことはよく理解しているので、少しでも召喚者の数を減らそうと<重力魔法>を持つ女に暗器で攻撃を仕掛けた。


 しかし、操作されているモモに阻まれて逆に<重力魔法>によって動きを制限されてしまった。

 <影魔法>で離脱しようとするも、モモの力による影響か、うまく発動しないようだ。


 既に最大の任務であるジンの退避時間は十分に稼いだため、最早直接攻撃することはできない状況であるが、少しでも召喚者にダメージを与えるべく最大の魔力で自爆を行った。


 <重力魔法>を操る女は、ウェインに能力を発動するために<心身操作>と<強制隷属>を持つ者とは若干距離が離れている位置にいたせいか、モモによる防御の範囲から若干外れていたようで、吹き飛ばされて地面を転がっている。


 両腕はあらぬ方向に曲がっているが、その他には強化されたおかげかダメージは無いようだ。

 だが、最早戦闘に参加することは不可能な状態であるのは間違いない。


 そもそも、最早ここには<アルダ王国>の国民は一人もいない。

  <心身操作>を持つ 北野 信二

  <重力魔法>を持つ 佐伯 悠里

  <強制隷属>を持つ 佐藤 幸助


 そして、<強制隷属>の支配下にあるモモの三人と一匹だけなのだ。


 佐伯悠里は、強化のおかげか痛みを感じていないらしく、北野と佐藤の方に普通に歩いて近づいている。


 「とりあえず今日はこんなとこか。あとでドルロイにこの戦果を報告しておけよ佐藤。」

 「わかったよ。でもこれからどうするの?」

 「そりゃお前、さっき<アルダ王国>のジンの傍にエルフがいたのに気が付いたか?このとんでもない力をもった獣を使いこなせるようになったら、あいつらを探し出して蹂躙した上で、エルフは俺の僕にしてやる。」



  

 

少し悲しいですが、物語の最後にはきっと・・・

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