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私はウェイン(5) 戦闘開始

 キャンデル副隊長から状況報告と指示があってまもなく、【諜報部隊】の精鋭からも情報がもたらされた。


 『イノザからの報告の通り、不思議な服を着た5人にそれぞれ50人の騎士がついていることを確認しました。そのはるか後方に、ドルロイとアレン、ブゴウ、ショリーの姿を確認することができます。召喚者らしき女1名と男1名は傍におり、残りの男3人が固まっている状態です。召喚者らしき5人の内女は1人、そして残りの4人の男は不思議な服装で、丁度ユージ様が話をされていたジャージと言う者を着ています。色は・・女の近くにいる男のみ黒で、他の3人は青で見分けはつきません。』


 このアレン、ブゴウ、ショリーと言うのは、ジン様を裏切った辺境伯の子供たちである。まだ生きていたとは驚きだ。


 『キャンデルです。作戦の要は<強制隷属>のスキルを持つ者の判別です。判別可能ですか?』


 『いいえ、何やら妨害されているか、そもそも見ることができないLvなのか・・・<鑑定眼>は発動していますが、詳細がわかりません。』


 『わかりました。作戦を変更します。何れにしても<強制隷属>は一番危険な能力なので、距離を保ちつつ監視してください。』


 開戦前のこの状況で、既に作戦に綻びが生じている。不安がぬぐえないが、【管理部隊】のキャンデル副隊長と、【遊撃部隊】の特殊スキル<戦略術>と<並列思考>を持つジュリに作戦は任せることになっているので、我らは従うのみだ。そもそも奴らの能力が〈複写〉出来れば安心材料が増えるのだが、ユージ様の能力を〈複写〉する事はできなかったので、召喚者の能力は我らのスキルとは別の構造をしているのだろう。


 『<鑑定眼>については、ユージ様で能力判定が可能であることが確認できています。したがって、召喚者の未知の能力か、ドルロイの身に着けていたアイテムの効果かはわかりませんが、最早鑑定はできないと思って行動することにします。<鑑定眼>の隊員は一旦離脱してください。』


 いきなりの作戦変更が起きたため、何とジン様がこちらに来てしまっている。

 

 「ジン様、そして神獣の皆様、まだ<シータ王国>の姿も視認しておりませんので、後方に退避していただけますでしょうか?」


 どうしてもあの<未来視>の状況に近づいている気がしてならないのだ。

 だが、ジン様は首を縦に振ってはくださらなかった。


 「いや、状況が悪くなる可能性がある場合、王族がここにいる事で士気が違ってくるんだ。父さんたちは既に前回と同様に<魔界森>に避難済みだから、俺がここに来るしかない。」


 こうなってしまったジン様は、梃子でも動かないだろう。ジン様がおらずとも<アルダ王国>の士気は決して衰えることなどないのだが・・


 そうしているうちに、新たな指示が飛んできた。


 『今回の召喚者の能力保持者が判別できないため、現在【諜報部隊】より得られている情報である男4人、女1人についても何らかの幻覚作用により誤認させられている可能性も考慮するようにお願いします。今識別できるのは女1人の<重力魔法>となりますが、必ずしもジャージと呼ばれている物を着ている女が使えるとは思わないようにしてください。私ならば、本物は近衛に紛れさせます。』


 あのドルロイならば、その位の搦め手は使ってくるだろう。


 『まずは遠距離からの先制攻撃で敵の戦力をそぎ落とします。これはラム殿とエレノア隊長にお願いします。但し、エレノア隊長の魔方陣による攻撃を行う場合は、魔方陣自体は<アルダ王国>で顕現するようにしてください。敵に気づかれる可能性を少しでも減らしたいのです。その時点で防御してくるのは、おそらく<魔力強奪>の能力を持つ者です。【諜報部隊】で<魔眼><千里眼>のスキルがある者は、その者の識別を行えるように準備してください。準備でき次第、キャンデル向けに<念話>で回答をお願いします。』


 この作戦も、指示自体はキャンデル副隊長が行っているが、実際は【遊撃部隊】のジュリも必死で検討しているのだろう。


 『ラム殿とエレノア隊長、準備をお願いします。もちろん出し惜しみなしの全力です。そして【攻撃部隊】と自立型攻撃装置、スキル時間制限付き魔獣は即出動の準備をお願いします。やつらが視認できた瞬間に攻撃を発動します。』


 ラム殿は武具を展開し、既に銀色の弓は金色に変色している本気モードだ。

 すでに先端から無数の矢が出て、空中にとどまっている状態になっているが、今なお矢は出続けている。

 矢に付与している魔法は<精霊術>であろうか、詳細は分からないが風系統のようだ。


 そしてエレノアも多数の魔方陣を出現させて魔力を注入している。攻撃主体にする魔法は<炎魔法><風魔法><雷魔法>のようだ。この魔法陣の展開の速さと多さ、そして込められる魔力の量から闘技大会では見せていない完全なる本気であることがわかる。

 ジン様の未来がかかっているのだ。本気にならないわけがない。


 やがてやつらが視認できた瞬間、魔力の奔流が巻き起こり、我ら<アルダ王国>からやつらに向けて形容のし難い魔法が放たれた。

 キャンデル副隊長も、ここまで極大とは思わなかったのではないだろうか。これなら魔方陣を隠す隠さないなど最早関係なく、敵に視認されている。


 <魔力強奪>によって防がれるかと思った攻撃は、なんと250人程度いるであろう<シータ王国>の集団にさく裂した。

 

 その瞬間、暴風と雷撃の余波が<アルダ王国>の方まで来たが、【技術開発部隊】の防壁内部にいるために何の影響も受けなかった。

 

 【諜報部隊】精鋭も、ラム殿とエレノアの本気度を確認した時点で私から退避の指示を出している。もちろんキャンデル副隊長も了解済みだ。

 もし退避していなければ、いくら距離を取っていたと言えども骨も残っていない。

 ラム殿とエレノアは未だに攻撃をし続けている。ジン様が絡むとこうなるのは分かりきっていたことだ。

 このあたりは、実際に経験しないとキャンデル副隊長とジュリも織り込むことはできないのだろう。


 と、そのキャンデル副隊長より、あせっているのか口調が変わった連絡が来た。


 『様子がおかしい。こんなに簡単に壊滅するはずがない、全員警戒度を最大限に引き上げろ!!』


 と言ったとたん、城壁が破壊された。

 我らは既に前回の経験があるので、【技術開発部隊】が即補修を行おうとしたが、キャンデル副隊長がそれを止めた。


 『不用意に近づくな!!一定の距離を取り、即自立型攻撃装置とスキル時間制限付き魔獣を破壊された防壁周りに展開!!』


 やはり<未来視>の通りになってしまっているようだ。私は改めてこの命、ここで散らす覚悟を決めた。

 敬愛し、尊敬してやまない、我が絶対なる忠誠心を捧げさせていただいている主であるジン様を今一度目に焼き付け、叶う事なら再び魂が蘇り、ジン様にお仕えできる事を願って・・・


 やがて、崩れた防壁からでている砂塵が収まり、普通の服をきた5人が表れた。

 キャンデル副隊長の言う通り、ジャージと呼ばれる物を着ていたやつらは偽物だったのだ。


 しかし、なぜここまで簡単に近接を許した?

 と思っていると、我が【諜報部隊】所属隊員が、召喚者である5人に付き従っているのだ。


 『全員最大限の警戒を!おそらく【諜報部隊】隊員は<心身操作>によって懐柔されている。隊員が複数いる事から、<強制隷属>ではない可能性が高い。』


 『ユージだ。割り込みすまんが緊急連絡だ。あの髪の毛の茶色いのが<心身操作>、そして女が<重力魔法>、眼鏡・・・目の周りに何かつけているやつが<強制隷属>だ。他の二人はどっちがとっちだかは覚えていない。』


 同じ世界から来たユージ様から、貴重な情報がもたらされた。すると、最も注意すべきは目眼と言う物を使用しているやつだ。


 『エレノア隊長、<土魔法>と<氷魔法>で<強制隷属>と他の4人の分離を!!ウェイン隊長、<影魔法>で操作されている【諜報部隊】隊員の収容、レイラ隊長、<強制隷属>に光魔法、同時にタイミングを合わせてセリア隊長、ユフロ隊長、マーニカ隊長、全員で牽制のため<魔力強奪>を持っているであろう残りの2人に全力で攻撃を!!』


 我ら幻獣部隊が一斉に指示の通り魔法を発動して作戦を実施した。

 だがしかし、<影魔法>を読んでいたのか、【諜報部隊】隊員は空中に移動し<強制隷属>に対して発動された魔法に向かって行った。

 

 「レイラ、攻撃をやめろ!!」


 ジン様の指示により、レイラは発動をキャンセルしたため、隊員に攻撃が当たることはなかった。

 そして、ユフロ、マーニカ、レイラが発動した魔法は<魔力強奪>の能力に食われてしまったようだ。

 <強制隷属>と残りの4人の間にできた<土魔法>と<氷魔法>の壁も<魔力強奪>で破壊されている。

 おそらく<アルダ王国>の防壁も<魔力強奪>で破壊したのだろう。


 だが、これで誰がどの能力を持っているかが分かった。あの耳に飾りがあるやつが<魔力強奪>だ。


 キャンデル副隊長も全て把握したようで、即、情報展開が行われている。


 『誰がどの能力を持っているか全て判別した。茶色の髪が<心身操作>、女が<重力魔法>、眼鏡が<強制隷属>、耳飾りが<魔力強奪>、残りの1人が<反射攻撃>だ。』

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