私はウェイン(2)
やがてキャムとその他のメンバーも無事Lvアップが終わったようで、一旦王都に帰還し、各隊に所属になる主なメンバーの顔合わせを実施することになった。
ジン様によると、私の想像通りにキャムは【諜報部隊】から【近衛部隊】に異動が決まった。元上司として、キャムには是非ともユージ様の近衛騎士として任務を全うしてもらいたい。
逆に、入隊する者もいる。通常の<アルダ王国>国民志願者から常に入隊は受け付けており、必要に応じジン様の許可の元、Lvアップや教育を実施しているが、今回の<シータ王国>対策として移民の特殊スキルを持つ兎獣人のイノザが、我が部隊に配属になるとの事だ。持っているスキルは<超聴力>との事で、内容は本人に会ってから具体的に確認させて貰おうと思っている。
私はこの会合の後に、各隊長を務めている幻獣を一度招集することにしている。
正式な部隊として公表されているわけではないが、ジン様直属の【幻獣部隊】としての動きを確認しておこうと思う。
と言うのも、キャムのLvアップの為に<神龍>に向かい任務を行っていたが、夜の休憩時に同じ<神龍>に来ている兎獣人に一度会いに行った。私の隊に所属するイノザの顔も確認しておきたかったのもある。
その時に<未来視>を持つ兎獣人のロメから、同じように<神龍>に同行しているエレノアと私に相談があった。その内容とは、<シータ王国>が<アルダ王国>に攻めてきた際、ジン様が何らかの事情で重症を負い、そのため神獣達も力を発揮できずに敗戦する未来が見えた・・と言うのだ。
ただ、いくつもの起こり得る未来の内の一つであるが・・・という事ではあったのだが。
この件については常に最悪の事態を考慮する必要がある為、幹部全員に<念話>で情報共有は済ませている。
この報告で唯一の救いは、ジン様が重症であり死亡しているわけではないという事だ。最悪の状況でも、ここで何とか<シータ王国>を止めることができれば、反撃することもできる。
そう考え、【幻獣部隊】の隊長の立場として、どの様に動くべきかあらゆる場面を想定して意思決定をしておこうと考えたのだ。
やがて円卓に到着し、各隊長と王族の方々、そしてユージ様が席に着く。
近衛騎士は隊長以外は各護衛対象の後ろに控えており、副隊長は隊長の後ろにいる。
キャムは正式な異動の宣言がなされたわけではないが、既にユージ様の護衛の位置にいる。隙が無い動きになっており、成長を嬉しく思う。
そして、今回の入隊メンバーは端の方に座っている。副隊長は既に一度紹介済みなので各隊長の後ろにいることにしたようだ。
ふと気が付くと・・・なんと、驚くことに【技術開発部隊】ガジム隊長の後ろに、<フラウス王国>の重鎮であるはずのノレンド殿とランドル殿がいるのだ。
この二人があの位置にいるという事は、<フラウス王国>のリンデム王が<アルダ王国>に所属を変える事を許可したという事になる。そしてもう一つ驚いたことは、おとなしくガジム隊長の後ろに立っているという事だ。
私の記憶では、常に騒がしく・・そしてお互いに喧嘩をして生傷が絶えない印象であったのだが・・。ようやく大人になったのだろうか。
若干困惑していると、ダン王の話が始まった。
「皆、良く集まってくれた。今回の<シータ王国>との再戦は、最短の想定では明日になってしまう。ここで、各隊の新たな系統の確認と今後の作業についての話を詰めて、その後に幻獣達には各国の<魔界森>への<転移>を迅速に行い、即帰還して<シータ王国>に対する対策を遂行してもらいたい。まずは各隊の状況を再確認させてもらう。既に理解していると思うが、ノレンド殿とランドル殿は我が<アルダ王国>の【技術開発部隊】副隊長に任命された。」
「あの<シータ王国>を完膚なきまで叩き潰せるよう、隊長を筆頭に全力を尽くします。」
「最新の魔道具も開発済みであり、今後更に改良を加えて行きたいと思っています。」
なんと、まともな挨拶までできている。
彼らの雰囲気から、以前と違いステータスも大幅に上昇しているようだ。
確か副隊長は<S:帝級>上限まで上げるという事だったが、私には特に彼らが地下迷宮で作業するという情報は入っていない。だが、通常の状態で達することができるLvではないため、誰かが連れて行ったのだろう。
不思議に思っていると、セリアより<念話>で、
『ジン様に、<神鳥>でのLvアップをお願いされました。ウェインには任務中に余計な情報を入れないように言われていたんですよ。』
成程、納得だ。セリアに向かい軽く頭を下げておく。
「そして、今回ユージ殿が我が<アルダ王国>の幹部となったことから、現在【諜報部隊】所属のキャムを【近衛部隊】へ異動とし、ユージ殿の近衛騎士に任命する。」
キャムは半歩前に出て、一礼した。その際にも隙を見せないところが成長を感じさせた。
何となく、子供の成長を喜ぶ親の気分はこんな感じなのかと思ってしまった。
「さらに、以前我が<アルダ王国>に移民してくれた国民の中で、特殊なスキルを持つ者が各隊に配属される。【管理部隊】にはロメ、【攻撃部隊】にはコーロ、【遊撃部隊】にはジュリ、【諜報部隊】にはイノザ、それぞれ各隊の隊長の後ろに移動するように。」
すると、紹介された兎獣人の四人は、立ち上がり一礼すると、各隊長の後ろに来た。
私の後ろにはイノザが来ている。
「それぞれ特殊なスキルを持っているため、各隊長は速やかに情報を収集し、隊長同士で共有すること。そして、【技術開発部隊】によって強化された防壁の情報と、現在想定されている<シータ王国>の攻撃対象になっている<神狼>の町の防衛体制について【管理部隊】のセリア隊長から作戦を展開してくれ。ただ、既に<神狼>の町の国民は既に退避が済んでいるので、闘技場周りの設備については【管理部隊】と【遊撃部隊】、そして【技術開発部隊】で検討の上対処せよ。以上」
一斉に起立し、深く一礼する。ダン王は既にある程度の作戦については報告を受けており、各国への連絡などの対応を行うために退席された。
ダン王と近衛の一部が退席されて、それぞれの特殊スキル持ちのステータスについて情報を開示することから始めた。今回の<シータ王国>に対する作戦は、【近衛部隊】も戦力に加えるのでミーナ殿とラム殿はこの場に残っている。
彼女たちのステータスはこうなっている。
名前:ロメ
種族:兎獣人
Lv:71(A:上級)
HP:430/430
MP:530/530
MT:330/330
【スキル】
<未来視 :Lv7・・上級>
<身体強化:Lv7・・上級>
<危険察知:Lv7・・上級>
<危険回避:Lv7・・上級>
<精神耐性:Lv7・・上級>
【称 号】
<アルダ王国>に忠誠を誓う者
名前:コーロ
種族:兎獣人
Lv:71(A:上級)
HP:440/440
MP:480/480
MT:390/390
【スキル】
<統制術 :Lv7・・上級>
<身体強化:Lv7・・上級>
<危険察知:Lv7・・上級>
<危険回避:Lv7・・上級>
<並列思考:Lv7・・上級>
【称 号】
<アルダ王国>に忠誠を誓う者
名前:ジュリ
種族:兎獣人
Lv:71(A:上級)
HP:400/400
MP:450/450
MT:420/420
【スキル】
<戦略術 :Lv7・・上級>
<身体強化:Lv7・・上級>
<危険察知:Lv7・・上級>
<危険回避:Lv7・・上級>
<並列思考:Lv7・・上級>
【称 号】
<アルダ王国>に忠誠を誓う者
名前:イノザ
種族:兎獣人
Lv:71(A:上級)
HP:440/440
MP:480/480
MT:390/390
【スキル】
<超聴力 :Lv7・・上級>
<身体強化:Lv7・・上級>
<危険察知:Lv7・・上級>
<危険回避:Lv7・・上級>
<隠 蔽 :Lv7・・上級>
【称 号】
<アルダ王国>に忠誠を誓う者
なかなかの仕上がりではないだろうか。