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私はウェイン(1)

 私は、ジン様より【諜報部隊】隊長の任を仰せつかっているウェインだ。

 前回ジン様とダン王の好意により見逃してやった<シータ王国>のドルロイが、禁呪の召喚術を利用して異世界人を召喚し、<アルダ王国>に再度攻め込もうとしている。

 

 我が主君の温情を仇で返すとは、万死に値する。

 

 だが、前回も不思議な魔道具により翻弄された経験がある為、今回も更なる警戒が必要だろう。

 

 ジン様も同様の考えの様で、各部隊に有能な新人を副隊長に任命させ、Lvアップを行わせている。

 また、移住してきた兎獣人の特殊スキルを持つ者も、Lvアップの上で各隊に配属させる決定を下された。

 

 この召喚と言うのは厄介で、異世界から召喚された者はかなり高い能力を有しているらしい。

 そして、その召喚された者達はジン様が前世で生活をなされていた知人だというのだ。

 

 6人召喚されたようで、その内のお一方、ユージ様については、既に我が<アルダ王国>にいらっしゃる。

 このお方はジン様の大親友という事で、我ら幻獣部隊も尊敬に値する人物であると認識させて頂いている。


 もちろんユージ様も不思議な能力をお持ちで、<アルダ王国>の主要メンバーにのみ、その能力を説明していただいた。

 そしてユージ様曰く、残りの五人は、何と前世のジン様に害意があったというのだ。

 あのドルロイと同じく、こちらも万死に値する。


 思い出すだけで無意識に殺気が出てしまうが、心を乱されるようでは隠密失格だ。もっと精進せねばならない。

 そして、ユージ様の護衛となるキャムについてもLvアップをさせた上で、【諜報部隊】からは異動となり、ユージ様の護衛になる為におそらく【近衛部隊】に所属することになるのだろう。ジン様の指示により、キャムには〈念話〉と、〈転移〉は必ず取得させるよう厳命されている。


 キャムの異動先については私の推測なので実際は分からないが、その他の情報は既に同僚である幻獣から都度<念話>で報告を受けているのだ。


 今私は新たに加わった同僚である【管理部隊】副隊長である、キャンデル副隊長の奥方の捜索に<シータ王国>にキャムと共に来ている。

 正直今の状態の<シータ王国>であれば、労せずに発見することができるだろう。

 ジン様の<神の権能>の使用許可もいただいているため、<テイマー>の力をお借りして昆虫を集めて、ひたすらテイムし続けた。


 昆虫のいそうな地域、そして優先して探索すべき地域についてはキャムから情報を貰っている。

 

 やがて、ある昆虫から、ほぼ廃墟に近い床の下にある地下室に、数人のエルフが捕らわれていると報告が上がってきた。

 私とキャムは即<転移>で現場に急行した。

 

 確かに、かなり衰弱したエルフ族の女性三人程が床に倒れた状態でいるが、まだ辛うじて息はある。

 鉄格子を力で破壊し、<神の権能>による回復を施したうえで、この不衛生な場所からまとめて<影魔法>と<空間魔法>を使用して、心地よい空間を作成の上三人を移動させた。


 キャムによれば、この建屋がある並びは奴隷商の並びで、今回の<シータ王国>の衰退から商人は動ける者達のみ引き連れて逃亡したのではないかとの事だ。

 なぜエルフ族が動けなくなっていたかについては、種族的に<精霊術>を使われるとかなり強いため、奴隷紋をつけたとしても、基本的に衰弱している状態で維持されているらしい。本当に鬼畜の所業だ。


 だが、助け出せたこの三人にキャンデル副隊長の奥方がいるかはわからない。残念ながら<テイマー>により探索した結果、このあたりには他に囚われている人達はいないのだ。

 既に回復はさせて命の心配はないが、体力までは復元できずに今は寝ている状態だ。

 無理に起こすこともできなくはないが、過酷な状態で生き続けていたのだからこのまま少し休んでいて貰おう。

 

 そうなると、<神猫>にLvを上げに行っているキャンデル副隊長に随行しているのは・・マーニカだったはずだ。


 『マーニカ、ウェインだ。少々確認したい事が有るが、大丈夫か?』

 『問題ありませんよ。どうしましたウェイン?』

 『実は、キャンデル副隊長の奥方救出に<シータ王国>に来ているのだが、エルフ族三人を救出した。だが、衰弱が激しいため、本人に確認できる状態ではない。なので、キャンデル副隊長に、奥方であるか確認してもらいたいのだが、一旦そちらに行ってもいいか?』

 『わかりました。キャンデル副隊長を呼んでおきます。』


 そして、俺とキャムは<神猫>の深層に<転移>し、マーニカとキャンデル副隊長を待った。

 まもなくキャンデル副隊長は泥だらけで表れた。


 「ウェイン隊長、私の妻が見つかったのですか??」


 相当気になるのだろう。気持ちはわかる。


 「キャンデル副隊長、落ち着いてくれ。我らが<シータ王国>に行き保護したエルフ族の女性は三人いる。かなり衰弱していたので回復魔法を掛けてはいるが、体力までは戻っていないため、現在睡眠状態から醒めてはいない。もちろん命に別状はないが、そのためキャンデル副隊長の奥方かの確認が取れていないのだ。Lvアップ作業中に申し訳ないが、今その三人を見て頂き、奥方かどうかを確認してもらいたい。」


 私は、三人を魔法空間からそっと出した。当然この岩の上に直接寝かせるわけにはいかないので、<影魔法>の応用で、影の布団のような物の上に寝て貰っている。


 もしこの三人の中に奥方がいなければ、最早見つけることはできないかもしれない・・私は祈る気持ちでキャンデル副隊長を見て、安堵した。


 彼は涙を流しながら、優しく一人の女性の頬をなでていたのだ。

 我ら<アルダ王国>に忠誠を誓う、頼もしき同僚の不安が解消されて何よりだ。

 私は、念のため本人に確認を取る。


 「キャンデル副隊長。そのお方が奥方で間違いないという事でよろしいか?」


 彼は涙で声が出ないのだろう。ひたすら頷いている。

 それはそうだ。婚姻後にさらわれて、あまり力のない彼が奥方を見つける為だけに、想像もできないような、それこそ本当に血のにじむような努力をして、競技大会で見せたあの力を得た事を考えると、本当に無事・・いや、かなり衰弱していたから完全な無事と言うわけではないが、再会することができて良かった。


 だが、私にも任務があるのでこのままここにいるわけにはいかない。


 「キャンデル副隊長。確認ができて安心しました。我々は彼女達をジン様の待つ王都<アルダ>に連れて行き保護した上で、次の任務に行かなければなりません。当然そこで奴隷紋も解除します。キャンデル副隊長もここでのLvアップと言う任務を完遂願います。」


 涙を流しながらではあるが、キャンデル副隊長は私を見て力強く頷き、最後に優しく奥方の頬にキスをしていた。


 「ウェイン隊長、本当に感謝いたします。私の絶対の忠誠は、私の幸せを再度見つけて頂いたこの<アルダ王国>に捧げます。では、私も任務があります故、妻とその仲間達を、よろしくお願いいたします。」


 一気に覚悟を持った逞しい男の顔になったキャンデル副隊長は、そう言って深く頭を下げると、踵を返して深層の奥へ消えて行った。


 私はマーニカに目配せすると、彼女もキャンデル副隊長の消えた方向に進んでいった。

 これでまずは一つ目の任務は無事に終了した。

 即エルフ族の三人とキャムを連れて王都<アルダ>に<転移>した。


 そこでジン様に救出完了の報告をさせて頂いたうえで奴隷紋の解除をお願いし、エルフ族を保護していただき、その足でキャムと共に<神龍>の深層に向かう事にする。


 <神龍>では既に兎獣人達のLvアップが行われているため、互いに干渉しないように、<神龍>に兎獣人と共に来ているエレノアに連絡を取る。


 『エレノア、ウェインだ。キャンデル副隊長の奥方は無事救出することができた。次の任務はキャムのLvアップになっている。今から<神龍>深層に向かって任務を行うが、そちらと被らないようにする為に今使用している階層を教えてくれ。』


 『無事任務終了できてよかったですね。我々は160から170階層を利用しているので、180層辺りを使ってもらえると助かるわ。』


 『承知した。』


 そして、私は即キャムと<神龍>180階層に転移し、Lvアップ作業を始めることにした。

 

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