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闘技大会の延期

 そして俺達はこの世界での再開を喜び合った。

 

 初めはかなり困惑していた護衛の幻獣部隊も、状況を把握した瞬間にユージに対して跪いて首を垂れている。


 彼女たちの主人である俺の大親友であると理解し、ユージにも敬意を表しているのだ。

 それを見たユージはオロオロ・・・


 だろうな。ユージはなんてったって彼女すらいたことがないのだから。

 と言うのも、ユージは人柄もよく、見た目も頭も良いのだが、異世界関連の小説、漫画などにはまっているので、自ら話しかけるようなことはしなかったし、残念ながら家庭環境・・家族がいなく、あまり裕福でないことから女性とのお付き合いに及び腰だったのだ。


 本人はモテないし魅力がないと言っていたが、決してそんなことはない。


 その証拠に、同行してきた猫獣人のキャムなんかは、ハートっぽい目でユージを見つめている。


 暫くは何を話していいかわからずに再開を喜んでいるだけだったが、徐々に落ち着いて話ができる環境になってきた。


 とりあえず先行して、ラムに父さんたちに状況を説明してもらいに行き、円卓で今後の話をするためにゆっくりと皆で謁見の間を出て歩き始めた。


 ここから円卓までは普通に行けば5分程かかる。その間、もう少し二人の話題を楽しむか。


 「ユージ、お前、そのハチマキ相変わらずセンスねーな。どこでそんなの見つけてくるんだよ。」

 

 「いやいや、俺の素晴らしいセンスがわからないか?これは俺が付けて似合うんじゃなくて、お前が付けて似合うようにできているんだよ。」


 「なんか、そんな怪しい物ばっかりくれてたよな。で、前から異世界、異世界、って言ってたけど、実際に来てみたらどうだ?」


 「まだ、今一つ実感はないな。でも能力も得てるし、正直不安もジンがいるおかげでなくなったしな。まさかお前がこっちに転生しているとは思ってもみなかった。だけど俺と違って転生だから、ジンはこっちの生活について理解できているだろう?俺に有益なアドバイス頼むぜ?」


 「おう、任せておけ、でも基本的に2週間後にはそこにいるキャムが、お前の護衛を兼ねて常に傍にいることになるから、キャムにも聞けよ?」


 キャムは少しだけ赤い顔をしながら、ユージに向かって頭を下げている。


 「ふぇい、良いの?俺を守ってくれるの?」


 「おい、ユージ、お前紐みたいなこと言うな!!お前の本気を見せてみろ。」


 「いやいや、侮ってもらっちゃ困るぜジン、これが俺の本気だ。」


 そんなくだらない話をしていると、あっという間に円卓のある部屋・・・に入るための父さんの執務室前についてしまった。


 キャムには後で、<神猫>でLvアップしておいてもらおうか・・


 そしてそのまま円卓まで行き、俺の隣にユージを座らせた。

 明らかに王様ですよ!!がいっぱいいて、更には<アルダ王国>の重鎮・・各隊長も勢ぞろいだ。せっかく取れた緊張が改めて表れたらしく、ユージはガチガチになっている。

 ユージの護衛の位置にはキャムにいて貰った。


 神獣4人と俺は、緊張するユージを見て少し笑ってしまった。ユージ、ごめんな。


 でもユージは緊張しているおかげか、神獣達が俺の膝の上と背中から抱き着いているいつものポジション取りを見ても、何の反応も示さなかった。と言うよりも、一杯一杯で周りが見えていないのだろう。


 父さんが、


 「ユージ殿、既に話は聞いているが、我が<アルダ王国>と敵対している<シータ王国>が行った召喚に巻き込まれてしまったようで申し訳ない。」


 父さんは、あえて俺とユージが前の世界で親友だったと言う所は言わない。

 <アルダ王国>の家族、そして各部隊の隊長しか俺の前世の話は知らないのだ。なので、同盟各国の王族がいるこの場で話すことはできない。

 このあたりは事前にユージにも説明しているので、これだけ緊張しているユージでも余計なことは言わないだろう。


 「い・い・い・い・いいいえ、全く問題ありませんでございます。はい。」


 おい、ユージ、お前緊張しすぎだろう。


 「ユージ殿、そう緊張なされるな・・と言う方が無理かもしれないが、我が<アルダ王国>にとって悪い方向に進んでいるようなので、このまま話を進めさせてもらう。」


 ユージはコクコク頷いている。


 「まず、いくつか現状確認を行いたい。<シータ王国>によってユージ殿を含む6人が召喚されたと聞いているが、このあたりの詳細を教えて頂けるか?」


 ユージは、何故か先生に指された生徒のように立ち上がり、説明を始めた。


 「俺・・私が只今ご紹介にあずかりましたユージと言います。皆様においてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。この度私が・「ユージ!!ユージ!!」」


 あまりにも緊張しすぎているので、とりあえず一旦割り込んで、止めさせてもらった。


 「父さん、ユージはこんな状況だから、もう少しだけ待っててもらえる?」


 皆が頷いてくれた。


 「ユージ、ちょっとこっち来いって。」


 そして立ったユージの手を引いて、隣の執務室に二人で移動した。


 「おいおい、お前ちょっと緊張しすぎだろう。なんだよあの無駄な結婚式の挨拶みたいな出だしは・・まあ、いきなりこんな世界に連れてこられて、王族の前で喋れってほうが無理があるかもしれないが、俺もいるしキャムもいるだろ?もう少し休んで落ち着いたら頼むぞ。」


 「ああ、悪い。ちょっと見苦しい所見せたな。でもなんでキャムちゃんなんだ?」


 「お前も実はキャムの事を気にしてることくらいわかるぞ。きっとこの世界に来て不安な所をキャムに良くしてもらったんだろ?相手もまんざらじゃなさそうだからさ。」


 「ま、そりゃああれだけ可愛い子に優しくされたらそうなるだろ。まあいいや。ちょっと落ち着いたよ。あんまり待たせるのも悪いから、気合入れていくか!」


 こんな短い時間で緊張が解けるわけないだろうに、流石は俺の親友だ。待っている人たちの事を気遣って強がっているんだ。その証拠に、少しだが指先が震えている。


 「ああ、サンキュ。俺がいるから何の問題もないぞ。モモ、シロ、ソラ、トーカもいるしな。」


 「そうだな。良し、じゃあ行くか!」


 改めて円卓の部屋に入り、ユージは席の前に立ち堂々と話しを始めた。

 

 「改めまして、今回<シータ王国>の召喚術によってこの世界に来たユージと言います。まずは<シータ王国>の召喚ですが、相当な秘術の様で、異世界の一人を召喚するのに1,000人の犠牲を伴うと、名前は忘れましたが小太りの王が言っていました。つまり、残念なことに6,000人の犠牲があったという事です。そして、その召喚された者にその王は、言葉巧みに王にとって不利益になることができない呪いの指輪を嵌めさせています。私は召喚された直後に運よく能力により姿を消していたので問題ありませんが、その指輪をはめた5人は、完全に王の術中にはまりました。指輪を着けた指を切り落としても呪いの効果は残るようなことを言っており、俺につけるはずだった指輪も1個残っているようです。召喚の関連の知識や指輪等のアイテムは王族に継承されてきたとの事で、指輪も6個しかないようなことを言っていました。なので、未使用の指輪は1個だけのはずです。その指輪を王が外せるのか、再使用できるのかなどは分かりません。」


 「なるほど、そのような多大な犠牲を払っていたのか。各辺境伯だった領民が王都近辺に移住したと情報を得ているが、かなりの人数の足取りがつかめていないんだ。きっと召喚の犠牲になったのだろう。ドルロイめ、最早手加減はできんな。」


 「それで続きですが、異世界を渡ってきた者はとてつもない能力を得るとの事で、私も能力を持っています。また、召喚の理由としてはここ<アルダ王国>を滅ぼすと言っていました。私はあの王を信頼することができずに、あの王が敵対すると宣言していた<アルダ王国>に来る決意をしたのです。そして同時に召喚された5人の情報を能力を含めて聞いています。」


 「ユージ殿、改めて確認したい。貴殿の得た能力等に関しては安全の観点からここで話す必要はないが、<シータ王国>の王、名をドルロイというが、その小太りの男は<アルダ王国>に敵対すると言っていたのかね?」


 「はい、明確にそう言っていました。そのために犠牲を払い私達を召喚した・・と。」


 父さんは少し考え込んでしまった。

 やはりあの時、少し温情をかけてしまった事を悔いているのであろうか?


 「いや、わかった。ありがとう。では続きを頼む。」


 「はい、私と同時に召喚されたのは男4名、女1名です。申し訳ありませんが、名前は二人しか覚えていません。ですが、能力は全員分覚えています。名前はあまり関係がないと思いますので、能力について説明させて頂きます。」


 ユージは敢えて名前を言うのをやめたようだ。そもそも名前を聞いても判別できないのだから意味はない。


 「各能力は、男の方がそれぞれ<心身操作><魔力強奪><反射攻撃>但し神Lvに限る・・そして<強制隷属>但し1回のみの発動だそうです。そして女が<重力魔法>と言っていました。」


 これは、なかなか高い能力を得ているようだ。

 まずはウェインが向かっているが、こいつらの能力に<心身操作>もある為危険だ。

 

 即安全を確保させよう。

お読みいただきありがとうございました。

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