追放そして・・・
どうぞよろしくお願いいたします。
第二話は19:00に投稿させていただきます。
「お~い、ジンよ・・・。悪いけど、いや正直悪いなんて思っていないけど、ここでお別れだな」
「はぃ?」
突然理解できないことを、パーティーリーダーのアレンが告げてきた。
「そうだぞ、そもそも同じ辺境伯の子息と言っても、しょせんお前は北で、俺らとは身分が違うんだ」
こいつは、辺境南伯次男のブゴウ。
辺境伯には東西南北あり、魔界森と呼ばれる魔獣が闊歩する広大な森の外側を、東西南北4分割して納めている。
なぜ4分割かと言うと、魔界森に接する東西南北の位置に巨大な地下迷宮の入り口が存在しており、その管理を、地下迷宮1つに対して1貴族とすることにより、特定の貴族が巨大な力を得ないようにするため、王国が辺境伯を4分割にしたのである。
分割されたのはかなり昔だそうだが、いつの間にか4辺境伯の間にもランク付けがされており、東西南北の順に爵位が高いと認識されている。
なぜか北だけは、いつの間にか男爵レベルで認知されていた。
当然追放の憂き目にあっている俺は、辺境北伯の身内であり、三男だ。
「残念だけど、私もそう思うわ。だってジンは魔獣使いのスキルしかないのよね?そんなんじゃ地下迷宮攻略以前の問題でしょ?」
この世界ではテイマーはゴミスキルと呼ばれているが、その部分を厳しく突っ込んできたのが辺境西伯次女のショリー。
辺境東伯三男、リーダーのアレンは、追い打ちをかけてくる。
「そうそう、テイマーなんて魔獣がいないと何もできないし、そもそも魔獣と契約できているテイマーはほとんどいないだろ?いてもスライムくらいで、せいぜい街中の清掃で活躍するしかないだろ。つまり、普通のスキルがない子供と一緒ってことだ」
そう、テイマーが魔獣と契約するには高いハードルがあるのだ。
どのようなスキルを得た場合でも、最大レベル(Lv10)までの権能や、スキルの使用方法などは自然と頭に入ってくるため、各スキルの権能は広く知れ渡っている。
もちろん俺以外のパーティーメンバーが持っているスキルについても、レベルに応じた権能は知られている。
俺が持っているテイマーの場合は、最大レベルの権能はとてつもないチートであり、その力は全ての契約魔獣の力を同時に100%使用することができ、召喚も自在と、とんでもないことになっている。
しかし現実は、ゴミスキルと言われている。
その理由は魔獣との契約の難しさにある。
テイマーの権能を完全に発揮させる魔獣の契約方法は、
魔獣の真の名前を知ること
魔獣からの信頼を得て、契約の了解を得ること
である。
そもそも名前なんぞ、どうやって知るんだ?ということと、適当に名前を選択して当たったとしても、信頼なんて得られない。
強い魔獣ほど信頼なんて得る前に、こちらが消し炭にされる。
世の中のテイマーは、魔獣を卵から育てたり、弱い魔獣を力で屈服させたりしているらしいが、卵の場合は強い魔獣であった場合には、即攻撃されるらしい。
弱い魔獣を力で屈服させた場合は、名前が当たるまで契約を実行し続ければ契約できるようだが、信頼度が低く、命令はできるが、魔獣の力を得ることはできていない。
名前を偶然先に当てても、魔獣からの信頼がなければテイムできずに襲われるだけである。
これが、悔しいがアレンが言っている実態だ。
だけど、納得なんてできるわけない!!
「いや、確かにスキル<テイマー>を使用したダンジョン攻略はできていないが、荷物の調整や、宿泊場所とか、雑務を完璧にこなしていただろ?」
アレンがボソッとつぶやく。
「しつけーな!」
でも、こっちも必死だ。
なぜなら、ここはアレンの家が管轄する辺境東に存在するダンジョン<神狼>の5階層。
目の前には明らかにヤバイ赤色の転移魔方陣。
「アレン!、俺たち子供のころから4人で研鑽してきた仲間じゃないか!!」
「いや~、ないわ。そう思っていたのはお前だけだろ?そもそも北の分際で・・うっとうしいんだよ。こっちはお前を追い込むために、わざわざ辺境東伯の騎士を使ってこのダンジョンの転移魔方陣の位置を探し出しておいたんだから、この苦労を認めて素直に転移されてくれよ?」
アレンのセリフに他の二人も大きく頷く。
くそったれ。こいつら平気で裏切る気かよ!
「あっ、お前の家には不慮の事故って伝えてやるから安心しな・・よっと」
・・ドカァ・・
<武術:Lv4>を持つブゴウの蹴りが直撃し、まともなスキルを持たない俺は魔方陣の方向に吹っ飛ばされる。
その瞬間、魔方陣は俺をとらえて喜んでいるかのように力強く光り輝き始めた。
「ジン、来世ではゴミスキルじゃなくて、いいスキルをもらえるといいね~。スキルレベルが1でジン自身のレベルも5なんて、私じゃ耐えられないけどね!」
ショリーも最後まであおってきやがる。
こいつら、見てろよ。テイマーの本当の力を見せてやるからな。
きっと、きっとだ!!
そう思っているうちに俺の意識はなくなった。
誤字報告をいただきまして修正しております。
ありがとうございました。